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2022年4月から段階的に施行される予定の育児・介護休業法の改正により、男性の育児休業を促進する枠組みが制定され、育児休業の分割取得が可能になります。
新型コロナウイルス感染症の影響拡大で、ワークライフバランスについて改めて考え直している人が増える中、この改正により男性の育児休業の取得が大きく促進されることが期待されています。
そこで今回は、2021年最新版の男性育休のデータとともに育児・介護休業法の改正の具体的な内容をご紹介します。
過去の記事「世界一番男性が長く育休を取れる国なのに取得率はわずか5%!データで見えてきた日本の育休制度の課題」でも取り上げたことがありますが、日本における男性の育休取得率は、2010年代には10%未満と他の先進国と比較すると圧倒的に低い水準でした。
出典:「国際比較から見る日本の育児休業制度の特徴と課題」、「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」、「父親の育児休業取得率、34.2%:労働政策研究・研修機構」、「Why Swedish men take so much paternity leave:The Economist」
そうした中で、2020年代に入った最新の男性の育休取得率はどうなっているのかデータで見ていきましょう。
2019年までに10%未満で微増が続いていた男性の育休取得率ですが、2020年に入り前年比5%以上増加した12.65%とわずか1年で一気に急増しました。
こうした背景には、2020年に新型コロナウイルス感染症の流行が拡大したことの影響が少なくありません。実際、内閣府の調査によると家族の重要性に対する意識が高まったという人は約半数の49.9%に上りました。
出典:新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査(概要)
こうした家族観の変化がある一方で、実際に育児休業を取るためにはさまざまな課題があります。
では、男性たちが育児休業を取れない背景には、何があるのでしょうか?
企業や政府が行ったアンケートをみてみましょう。
出典:「平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」
2017年に厚生労働省が三菱UFJリサーチ&コンサルティングに委託して作成した「平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」によると、「育児休業を取得しなかった理由」の男性の一位は「業務が繁忙で職場の人手が不足していた」でした。
また、「会社で育児休業制度が整備されていなかった」が男女ともに二番目に多い理由でした。しかし、育児休業は労働基準法で定められた労働者の権利であり、育児給付金は雇用保険に加入していれば給付されるものなので、育児休業制度が整備されていない会社というのはおそらく、過去に育休の実績がない会社、ということになります。
また2021年に内閣府が行った「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」によると、男性が一か月以上の育児休業を取得しなかった理由の第1位が「職場に迷惑をかけたくないため」でした。その他にも「職場が、男性の育休取得を認めない雰囲気であるため」など、があげられています。
出典: 「第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」
こうした回答を見ると、職場において、育休が取れる、という雰囲気が醸成されていないことや職場における人手不足が育児休業の大きな妨げになっているのだとわかります。
そうした男性たちの課題に対応するべく、検討されたのが、育児・介護休業法の改正です。
それでは、今回の改正では育児休業がどのように変化するのか、厚生労働省が公開している改正についての資料によると今回改正されるのは以下の5つです。
今回の改正で最も大きな変化は、育児休業に加え、新たに創設された産後パパ育休という制度と、それに伴い育児休業を分割して取得することが可能になるという点です。
実際に改正前後の育休制度の比較と産後パパ育休の制度を表にしたのが以下になります。
育休とは別に取得可能な 産後パパ育休(R4.10.1~) |
育休制度 (R4.10.1~) |
育休制度 (現行) |
|
対象期間 取得可能日数 |
子の出生後8週間以内に 4週間まで取得可能 |
原則子が1歳 (最長2歳)まで |
原則子が1歳 (最長2歳)まで |
申出期限 |
原則休業の2週間前まで |
原則1か月前まで |
原則1か月前まで |
分割取得 |
分割して2回取得可能 |
分割して2回取得可能 |
原則分割不可 |
1歳以降の 延 長 |
育休開始日を 柔軟化 |
育休開始日は1歳、 1歳半の時点に |
|
1歳以降の 再取得 |
特別な事情があ る場合に限り 再取得可能 |
再取得不可 |
引用元: 育児・介護休業法改正ポイントのご案内
1つ目の男性の育児休業取得促進のための柔軟な育児休業の枠組み、とは具体的に以下の4つを表します。
① 育児休業・産後パパ育休に関する研修の実施
② 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備等(相談窓口設置)
③ 自社の労働者の育児休業・産後パパ育休取得事例の収集・提供
④ 自社の労働者へ育児休業・産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知
研修の実施の拡充や、相談窓口の設置により、より広く男性育休を活用されることが期待されます。
また、育児休業の制度や給付、また社会保険料の取り扱いなどを含む以下の4つの制度、処置の周知を面談や、書面交付、メールなどで行うことを義務付ける改正も。
① 育児休業・産後パパ育休に関する制度
② 育児休業・産後パパ育休の申し出先
③ 育児休業給付に関すること
④ 労働者が育児休業・産後パパ育休期間について負担すべき社会保険料の取り扱い
さらに、有期雇用の労働者が育児休業を取得する場合、現在は、
(1) 引き続き雇用された期間が1年以上
(2) 1歳6か月までの間に契約が満了することが明らかでない
という二つの条件を満たす必要がありますが、改正により、(1)が撤廃され、無期雇用労働者と同様の取り扱いになる予定です。
育休制度の周知を義務付け、育休の分割や産後パパ育休により、仕事の状況に合わせより柔軟に気軽に育休を取得できるこの制度は、男性育休取得率の更なる飛躍を助けるのか、これからが楽しみですね。
【参考引用サイト】 ・育児・介護休業法について|厚生労働省 ・男性の育児休業の取得状況と 取得促進のための取組について ・育児・介護休業法改正ポイントのご案内 ・新型コロナウイルス感染症の影響下における 生活意識・行動の変化に関する調査(概要) ・第3回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査 ・平成29年度 仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書
(大藤ヨシヲ)
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