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エクセル(Excel)による帳票作成と帳票ツールの違いについて

         

中小企業・個人事業主の帳票作成の実情

昨今はIT、ICT、IoTの進化により、企業の業務効率の改善、従業員の負担の軽減だけでなく、ビジネスの在り方も大きく変わりつつあります。

資金力が豊富で業務量の多い大企業では、少しでも費用対効果のある設備投資を積極的に推し進める一方、従業員が300人未満の中小企業や個人事業主では、既存の業務プロセスを変更する余力もないため、ExcelやWordで「帳票」の業務を実践しています。

確かに中小企業、個人事業主の帳票業務は、取り扱う量、種類が大手企業ほど多くはありません。

しかしながら「e-文書法」(2005年施行)や「マイナンバー制度」(2016年1月利用開始)等の影響で帳票業務の複雑化が進み、多くの企業が「Excel」に頼った帳票開発に限界を感じ始めています。

Excelは簡単、便利で様々なビジネスシーンで活用できるソフトですが、帳票の開発・作成には多大な時間を要し、また他のシステムと非連携なため、保守・管理・共有等がしづらい、できないといった弱点を抱えています。

従来のExcelによる帳票業務に限界を感じていることや2020年3月以降のコロナ禍によって広まったテレワーク化の後押しもあり、クラウドや業務システムの連携に対応した専用の「帳票ツール」を導入する企業が2020年4月以降、急速に増え続いています。

Excelで帳票を作成するときの流れ

帳票業務を円滑に行うための専用ツールはあるものの、取引先が限られている零細企業や個人事業主では、Excelでも帳票の作成は十分可能です。

帳票業務の効率を向上させるためのテンプレートやアドオン(マクロ)なども利用することが出来るので、経理担当者一人、個人事業主で帳票作成も兼務といった事業規模であればExcelでも十分に活用することができます。

データベースの作成

まずは帳票の各項目(フィールド)に記入する元データが集約されたデータベースのシートを作成します。同じExcelのファイル内でも構いませんし、データベースのみ別ファイルにしても構いません。帳票を作成し続けているうちにどこにどのデータがあるか分からなくなってしまわないようにファイル、シートの命名規則やフォルダ構成、フォーマットは予め決めておくようにしましょう。

・項目を決める
データベースシートにデータとして保存する項目、即ち帳票に記載するフィールドを決めます。具体的には、会社名(取引先)、発行日、郵便番号、住所、部門、担当者、金額などです。項目は列に、取引を行にするのが一般的です。

・データを入力する
データベースシートの各項目にデータを入力します。1行1帳票というルールでデータベースを作成することにより、帳票様式への転記(リンク)がしやすくなります。

出力様式を決める(プリンタ、PDF)

作成した帳票の出力様式を決めます。紙出力であれば、A4などの紙のサイズ、余白などです。帳票フォーマットを作成してから出力様式を決める方がいらっしゃいますが、その場合、印刷範囲の制限でレイアウトの見直しが発生する場合があります。そのため出力様式は最初に決めておくことをおすすめします。
電子ファイルの場合、ExcelのままかPDFかのどちらかになると思いますが、PDFの場合、Excelの印刷イメージがそのままファイルに出力されるので特に検討する必要はありません。

帳票のフォーマット(帳票様式)をデザインする

項目(フィールド)をレイアウトした帳票のフォーマットをデザインします。Excel用の帳票のテンプレートはMicrosoftをはじめ、様々なサイトから無料でダウンロードできます。

Microsoft のテンプレートでより本格的な文書を作成する https://templates.office.com/

これらのテンプレートをアレンジすることでフォーマットの作成の負担を大幅に削減することができます。集計等の計算が必要であれば、計算式や関数を入力したり、条件付き書式を設定したりします。

帳票フォーマットにデータベースを転記する

帳票フォーマットの各フィールド(セル)にデータベースシートの参照先を入力します。例えば、“ =[A社帳票データベース]領収書!$B$2 ”という式をセルに入力すると、「A社帳票データベース」というファイルの「領収書」というシートのB列2行目のデータが転記されます。

この作業は帳票毎に行うと大変なので、一括置換やマクロを使用することで作業の効率を向上させることができます。

帳票を出力する

帳票フォーマットにデータを転記することで帳票が完成します。あとは出力したい様式で出力するだけです。なおExcelではVBAを作成・実行することで、帳票の手作業を大幅に減らすことができます。これらについては、インターネット上でノウハウが紹介されていますので、用途に合わせて盛り込んで頂くか、マクロをダウンロードして利用して頂ければと思います。

帳票制作にExcelが選ばれる理由、Excel帳票のメリット

Excelは、表を作成して合計などの計算や、これを基にしたグラフの作成などに用いる「表計算ソフト」に位置付けられています。

複雑な計算も関数やマクロで行え、作図もでき、ドキュメンテーションの作成機能も備わっています。

オフィススイート「Microsoft Office」のWordやPower Pointを使用せずとも、簡単な操作で目的を果たせてしまうことが多く、「Excel」は万能なビジネスソフトとして親しまれています。

そのため、多くの企業は、帳票制作手段として「Excel」を選択しています。

○導入、教育のコストがほとんどかからない

ExcelはMicrosoftが提供する「Microsoft Office」の一つで、他のビジネスと共に企業の業務運営に欠かすことができないビジネスソフトの一つです。

そのため、Excelで帳票を制作する場合、新たなソフトウェアを購入する必要がありません。

またExcelは、学生や職歴のない人でも操作方法を着けていることが多いため、企業側の教育の負担を大幅に削減することができます。

○操作が簡単で誰にでも使える

Excelは基本、セルに数式や関数、文字や値を入力する・・だけ、即ちプログラミングなしで使用することができます。

高度な計算が必要な帳票においても、ツールが備えているテンプレートやマクロに精通した人が作成したフォーマットを使用する、などで非属人的に帳票を作成することができるようになります。

○共有化が容易

「Microsoft Office」を導入している場合、ドキュメント管理ソフトの「SharePoint」やオンラインストレージの「OneDrive」にExcelファイルを保存すれば、使用者同士で共有できるようになります。

アクセス権限を設定し、閲覧者を限定すれば、共有システム等を設置することなく、比較的に簡単に、使用者同士で安全にファイルが共有できるようになります。

帳票作成にExcelが不向きな理由、Excel帳票のデメリット

Excelは関数やマクロの使用を除けば、簡単で使いやすく、また多くの人が扱いに慣れているというメリットがあります。

このため、従業員の教育コストを必要としない、ツールコストも安価といった理由により、Excelを主体とした帳票業務を多くの企業が実践しています。

しかしながら会社の成長に伴う規模の拡大、帳票を取り扱う従業員、帳票数、帳票種の増加などにより、いくら社内の運用ルールを見直してもスタンドアローン色の強いExcelでの帳票業務に多くの担当者は限界を感じています。

○大容量のデータベースには不向き

Excelには取り扱えるデータ数に上限があります。「Excel 2007」以降は、この制限が大幅に緩和され、1つのシートで表示できる行は6万5535行から104万8576行に拡張されましたが、行数の増加に伴い検索、抽出、集計といった関数の処理に多大な時間を要します。

104万8576行フルにデータが記載され、さらに様々な関数や条件付き書式を多用したExcelファイルはファイルオープンや更新に時間がかかり過ぎてしまいます。

○手作業が多いため、ヒューマンミスが防げない

Excelは非常に自由度が高いため、保護や入力チェック等を設けていないと手作業の際、誤ったデータの入力、変えてはいけないセルの消去といった誤操作を招いてしまいます。

いつの間にか知らないうちに帳票フォーマットの条件付き書式や関数を無効にしてしまうといったトラブルも少なくなく、それらが発覚する度に多大なメンテナンス工数が強いられることになります。

○共同作業に不向き

ファイルサーバーやOneDrive上で作成、編集、更新等を行うといった運用ルールを導入し、また「共有」機能を用いることでExcelでも複数人がリアルタイムで同じファイルにアクセスできるようになります。しかしながらExcelは自由度が高いため、複雑な帳票業務での同時アクセスはファイル編集者間で混乱を招くことになります。

○システム化に不向き

Excelはスタンドアローンな利用が前提なので、帳票を作成する際には各自のPC内にファイルを置き、ローカルで作業することになります。

帳票のフォーマットやデータベースシート、作成した帳票の電子ファイル等はファイルサーバーやOneDrive(Microsoft)上でコピー、上書き更新等で運用することになり、別ツールやシステムとの連携には対応していません。

○メンテナンス工数が多大

またExcelの関数や条件付き書式は、各セルに対し個々に入力しておく必要があるため、フォルダ構成や新たなデータベースファイルを追加した場合、多大なメンテナンス工数が発生する恐れがあります。

○セキュリティ機能が万全とは言えない

Excelはファイルそのものの読み込みと書き込みしか権限を付与することができません。帳票の場合、一部のフィールドのみに機密情報を記載しているケースも多く、Excelではこのような帳票の情報漏洩を完全に防ぐことができません。

帳票業務には専用の帳票ツールがおすすめな理由

Excelは誰でも簡単に扱えるので帳票業務に有用と思われがちですが、大量、大規模、多人数といった環境下では業務効率、品質、セキュリティの低下を招きます。

昨今では膨大な帳票を取り扱わなければならい大企業を中心に帳票に特化した専用ツールやITサービスを導入することで業務効率や品質の向上を図っています。

○帳票のデザイン、機能を利用することで作業の負担が大幅に削減できる

帳票ツールにはノンプラミングで簡単に手早く帳票を作成する機能が備わっています。定型帳票、準定型帳票に対応したテンプレート等も豊富に用意されているため、これらを流用することで帳票開発に必要とする工数の大幅な削減を実現してくれます。

○異なるシステムやツールのデータを1つの帳票に統合できる

帳票ツールは社内の業務システムや別のツールのデータのインポートや連携する機能を備えています。少ない負担と高い生産性で社内に散乱している帳票データの統合を実現してくれます。

○データベースの更新をリアルタイムに反映するので、帳票作成にかかる手間が省ける

帳票ツールには帳票を自動で作成する機能も備えています。従って帳票の元データとなるデータベースに追加するだけで、帳票フォーマットに転記するための関数やデータ入力を行うことなく、すぐに帳票を出力できる状態に仕上げてくれます。

○大量のデータ処理に強いので、データ消失のリスクがなくなる

Excelはファイルアクセス(トランザクション)の問題上、大容量のファイルを複数人でアクセスした場合、フリーズしたり、強制終了したりといったトラブルに見舞われることがしばしばあります。フリーズ、強制終了はExcelファイルの破損、データ消失といった最悪の事態を招いてしまいます。帳票ツールは大量のデータ処理に強いのはもちろん、データの更新処理も精巧に作られているため、このようなトラブルに見舞われることなく大切なデータをしっかり守ってくれます。

○一元的に帳票の操作権限を設定できるので利便性とセキュリティ性が高まる

帳票の元データを一元管理することで使用したい帳票を即時に検索することができるようになります。管理権限の範囲内であれば、いつでもどこでも閲覧、編集、出力といったことが出来るようになります。

帳票の各フィールドに対し、管理権限を付与することができるので情報漏洩を気にすることのない安全な業務環境を実現してくれます。

○電子帳簿保存法、インボイス制度への対応にも

電子帳簿保存法は、2022年1月に開始された、帳簿や領収書・請求書などの保存処理に係る負担を軽減するために、電子データによる保存を認める法律です。タイムスタンプの付与やタイムスタンプが付与されたデータの受け取り、訂正削除の記録が残るシステムや訂正削除ができないシステムの利用、訂正削除防止のための事務処理規程の備え付け、といった改ざん防止措置が必要になります。

インボイス制度とは、2023年から開始する軽減税率制度への対応と益税の排除を目的とした消費税の仕入税額控除に関する制度のことです。インボイス制度では、従来の請求書関連の作業に加えて、登録番号の照合や控除適用可否の仕分けといった作業が発生します。

どちらも様々な種類、複数の帳票を使用した作業が発生します。該当する帳票を探したり、集計したり、といった作業がExcelの場合、手作業になってしまい、業務負担や人的ミスの増加を招いてしまいます。

電子帳簿保存法、インボイス制度に対応した帳票ツールは、こういった問題を解決し、帳票作成の生産性を高めてくれます。

帳票ツールでできること、invoiceAgent(ウイングアーク1st)の主な機能

Excelによる帳票作成と帳票ツールの違いについて、より明確な理解を目的に、ウイングアーク1st製の電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」を例に、帳票ツールでできることを紹介します。

製品紹介サイト:電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent(インボイスエージェント)」|ウイングアーク1st (wingarc.com)

○文書管理

文書管理は、あらゆる帳票の仕分けから保管、検索、他システムとの連携も可能な文書管理機能です。電子文書、スキャンした紙文書を自動で仕分け・保管し、帳票ツールでの検索・閲覧はもちろんのこと、連携アダプターやWeb APIの活用により、様々なシステムと連携した文書管理を実現します。電子帳簿保存法に対応した電子文書管理、コスト削減、ガバナンス強化、ペーパーレス化といった取組みも推進します。

○電子取引

電子データでやり取りされる電子取引をクラウド上で配信、受信、文書管理が完結でき、履歴を管理することができます。電子帳簿保存法やインボイス制度への対応を実現し、帳票を通じた企業間の取引を加速させます。

○電子契約

クラウドの商取引における契約の確認・署名・管理をする機能で、invoiceAgentでは、企業間の契約をウイングアーク1stが立会人として承認し、関連文書の一元管理によってペーパーレス、ハンコレスを安全に推進します。締結した契約書とそれに基づき流通する関連文書の一元管理は、業務効率化に加え内部統制を強化します。

○AI OCR

活字・手書き文字を高精度に読み取り、データ化する機能で、システム入力の正確性向上と目視確認の作業コスト削減を両立し業務担当者の生産性を向上させます。

電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」の導入事例

電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」を導入した企業の事例を紹介します。

○株式会社西武ホールディングス

グループ会社全体で「デジタル経営」を推進する西武グループは、その一環として2019年から会計システムの刷新に取り組んできました。先行導入されたERPパッケージと連携させる形で活用を進めているのが、ウイングアーク1stの請求書などの帳票類の送受信から管理までを一括で行うソリューション「invoiceAgent TransPrint」です。取引先に負担をかけずに大量に受領する請求書の電子化をスムーズに行い自社の大幅な作業の効率化を実現するとともに、取引先の郵送の手間を軽減するなどのESG経営を戦略的に進める観点からグループ各社への展開を進めています。

○三井住友ファイナンス&リース株式会社

国内トップクラスの総合リース会社である三井住友ファイナンス&リース株式会社(以下、SMFL)は、ウイングアークの「invoiceAgent TransPrint」を利用し、支払内容の通知書や請求書等の紙帳票を電子配信に切り替えることで、リモートワークの推進とコスト削減を実現しています。スモールスタートのデジタル化により段階的に適用範囲を広げ、自社だけでなく取引先のペーパーレス化や業務の効率化にも貢献しています。

○伊藤忠商事株式会社

大手商社の伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠商事)では、ウイングアークの「invoiceAgent 文書管理」「invoiceAgent TransPrint」を活用し、請求書等の社外向け帳票をWebで配信できるシステムを構築しました。従来方式である紙ベースでの請求書発行も並行して利用するため、誤って二重発行することのないような仕組みをアドオン開発するなど、セキュリティやガバナンスに配慮した設計を実現しています。今後はユーザーの利用拡大を図るとともに、海外向けのDebit Noteに対してもWeb配信ができるよう計画しています。

まとめ

Excelを活用した帳票作成の流れ、Excelが帳票作成に不向きな理由について紹介させて頂きましたが、帳票業務に特化した専用ツールやITサービスが劇的な生産性と効率向上をもたらしてくれることをご理解して頂けたでしょうか?

最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。

  • 会社規模の拡大、帳票の複雑化により、企業内の帳票の業務量は増加傾向にあり、中小企業の多くは、Excelによる帳票業務に限界を感じている。

  • 帳票の量、種類、扱う人が増えれば増えるほど、Excelによる帳票業務では効率の低下とリスクの増加が伴う。

  • Excelは、帳票業務の効率向上に必要な大量処理、ヒューマンエラー予防、共同作業、システム化、セキュリティといった性能や機能に限界がある。

  • 帳票業務に特化した専用ツールでは、帳票作成の工数を大幅に削減するのはもちろん、検索処理、権限付与といった様々な機能を備えているので、帳票業務の効率と生産性の劇的な向上を実現してくれる。
 

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