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パートナーネットワーク「WARP」×ユーザーコミュニティ「nest」—両利きのコミュニティ運営が描くウイングアークの共創モデル

2026年1月15日、ウイングアーク1stが主催する「WARP Sales Summit 2026」が開催された。本イベントの最大の特徴は、販売パートナーで構成されるネットワーク「WARP」と、エンドユーザーで構成されるコミュニティ「nest」を融合させた点にある。

多くのソフトウエアメーカーは、ユーザーコミュニティと販売パートナーのネットワークを別々に運営している。しかし、この2つを戦略的に連携させ、一つのエコシステムとして機能させる試みは極めて珍しい。なぜ今、この融合が必要なのか。そして、それがもたらす価値とは何か。本イベントは、その問いに対する一つの答えを提示する場となった。

パートナープラットフォーム「WARP」公式noteのレポートはこちら

         

「WARP」と「nest」—2つのコミュニティが抱えていた課題

ウイングアーク1stは、BIダッシュボード「MotionBoard」やデータ分析基盤「Dr.Sum」、電子帳票プラットフォーム「invoiceAgent」などを提供するソフトウエアメーカーである。同社は2つの重要なコミュニティを運営してきた。

1つが、ウイングアーク製品を販売する代理店やSIerのパートナーネットワーク「WARP」。製品知識の習得、販売支援、事例共有などを通じて、パートナー企業のビジネスを支援する仕組みだ。もう1つは、製品を利用するエンドユーザー企業が参加し、活用ノウハウを共有し合うユーザーコミュニティ「nest」。同じ課題を抱える担当者同士が学び合い、励まし合うコミュニティである。

これまで別々に活動してきた両者が一つの大きなエコシステムとして融合することは、私たちが以前から描き続けてきた構想でした。ユーザーコミュニティだけでは、システム導入や技術的な課題に対して十分な支援を提供できない場合がある。一方、パートナー企業同士のネットワークだけでは、顧客の導入後の活用促進や定着支援において、個別対応の限界に直面する。

ユーザー企業のデジタル化やDX 推進が長期的な取り組みとなる中、メーカー、SIer、エンドユーザーの三者が有機的に連携し、継続的に価値を創出していく仕組みが求められている。今回のイベントは、その仕組みを具現化する試みだった。

両利きのコミュニティ運営がもたらす3つの価値

パートナーネットワークとユーザーコミュニティを融合させることによって、どのような価値が期待できるのだろうか? WARPとnest、両方のコミュニティ運営を経験してきたキーパーソンが、その本質を語った。

登壇者:
・ウイングアーク1st 営業本部 アライアンス統括部 Partner Development部 部長 中原新平氏|写真左
・ウイングアーク1st 執行役員CSO 営業本部長 兼 BDE-SBU Managing Director 兼 グローバル事業部 事業部長 森脇匡紀氏|写真中
・ウイングアーク1st マーケティング本部Customer Marketing室 室長 河村雅代氏|写真右

イベント冒頭、ウイングアーク1stのパートナーデベロップメントを統括するWARPの中原新平氏があいさつに立ち、「WARP Sales Summitは、パートナー様の営業活動に役立つ内容をお届けするものです。5回目となる今回、ゲストとして、ユーザーコミュニティのnestに参加いただいている3人のエンドユーザー様をお招きしました。日頃、SIerについてどのように感じられているか、今後どういう関係性を築いていきたいか、本音でお話いただきます」と述べた。

続いて、執行役員CSOである森脇匡紀氏が開会あいさつを行い、「このイベントは初のリアル開催であり、対面での交流がもたらす熱量を直接感じていただける貴重な機会です」と語った。また、森脇氏は「ユーザー企業のコミュニティである『nest』と、パートナーネットワーク『WARP』を融合させることは、これからのビジネスにとって重要な挑戦です」と述べ、ユーザーとパートナーが協力して価値を創出する意義を強調した。

現在nestの運営を担当し、以前はWARPの運営に携わっていたウイングアーク1stの河村雅代氏は、両コミュニティを連携させる価値について語った。「パートナー様がお客様をnestにつないでくださることで、お客様は他社事例や実践者の声に触れながら活用を深められます。お客様自身がニーズを整理した上でパートナー様に相談されるので、提案もスムーズに進みます。結果として、お客様・パートナー様・メーカーの三者全てにメリットが生まれる。これこそがエコシステムの本質です」。この価値を実証するために、今回のイベントでは、ユーザーとSIerが直接対話する場が設けられた。

ユーザーパネルディスカッション:「本当に頼れるSIer」の条件とは

登壇者:
・株式会社成田デンタル デジタル推進室 室長 情報システム室 室長 吉原大騎氏(ファシリテーター)
・ヤンマーグリーンシステム株式会社 企画部 早坂翼氏
・アマノ株式会社 営業企画部  営業戦略企画課 部長 小俣智夫氏

メインセッションは、「本当に頼れるSIerとは? エンドユーザーの視点から見た選び方と付き合い方」と題したパネルディスカッションだった。登壇したのは、nestのメンバーである3社のDX ・データ活用担当者だ。

3名とも、社内でデータ活用を推進する立場にあり、複数のSIerやメーカーと協働してきた経験を持つ。その経験から語られた「本音」は、会場のSIerにとって示唆に富む内容だった。

まず語られたのは、「救われた経験。SIerに求められる姿勢」である。早坂氏は、「理想と現実のギャップを埋めながら進めてくれるSIerに救われた」と語る。DX 推進では、経営層の期待と現場の実態にズレが生じることが多い。そんなとき、小刻みに対応し、軌道修正を重ねながら伴走してくれるSIerの存在が心強かったという。

ヤンマーグリーンシステム株式会社 企画部 早坂翼氏|写真中央

小俣氏は「メーカーとの間に入って、自分の知らないことを教えてくれるSIerに救われた」と述べた。DX 担当者は社内で孤立しがちであり、相談相手がいない中、メーカーの製品範囲を超えてトータルな視点で提案してくれるSIerの存在が大きかったという。

アマノ株式会社 営業企画部 営業戦略企画課  部長 小俣智夫氏

吉原氏は、「『これは入れない方がいいよ』ときっぱり言ってくれるSIerが頼りになる」と強調。売り上げを優先せず、顧客の利益を第一に考えて正直に意見を言ってくれる姿勢が信頼につながると語った。

株式会社成田デンタル デジタル推進室 室長 吉原大騎氏(ファシリテーター)

一方、「困った経験」も率直に語られた。早坂氏が挙げたのは、「SIerと目線合わせをせずに進めてしまい困難に直面した」ケースだ。技術的な知識に差がある中、専門用語を使って話を進められると、理解できないまま進んでしまう。「大丈夫ですか?理解できました?」と確認してくれる配慮が欲しかったという。

小俣氏が最も困ったのは、「何でもかんでも『メーカーに確認します』と言うSIer」だった。一つ一つの質問に対して、自分で調べず、すぐにメーカーに確認する姿勢では、「あなたがいる意味があるのか」と感じてしまう。また、担当者が変わるたびに対応が変わり、情報が引き継がれていないことも大きなストレスだったという。

吉原氏は、「担当者の製品理解度が低いと、結局メーカーに直接聞いた方が早いと感じてしまう」と指摘。SIerの価値は、製品を深く理解し、顧客の状況に合わせて最適な提案ができることにあるはずという見解を示した。

理想のSIer像:伴走と目線合わせ

では、理想のSIerとはどのような存在なのか。小俣氏は、「伴走してくれること」を第一に挙げる。メーカーよりも一歩踏み込んで、顧客のやりたいことに対して同じ目線で汗をかいてくれる。そして、「三方よし」のマインドセット(SIerの売り上げも上がり、顧客のやりたいことも実現でき、メーカーの商品も売れる)を持っていることが重要だという。さらに「できないことを隠さないでほしい」と強調する。「全部完璧にできる」と言われるより、「これはできない」「ここは難しい」と正直に伝えてくれる方が、信頼感が上がる。

早坂氏は、「こちらの立場になり、考えてくれる」ことを求める。例えば、契約期間内に全てを完成させることが難しい場合、無理にやり切るのではなく、「ここだけは仕上げましょう」と優先順位をつけて、実際に使えるものに仕上げてくれる方が助かるという。

最後に、吉原氏からの「今後どういうSIerとつながっていきたいか」という問いに対し、小俣氏は明確な答えを示した。「導入しようと思っている製品を実際に使っているかどうか。これが、頼れるSIerを判別する一つの視点です」(小俣氏)。

全社的に使っている必要はなく、一部署だけでもいい。自社で使っているからこそ、製品の良さも課題も理解しており、顧客に対して説得力のある提案ができる。さらに、「裏技を持っているSIerは信頼できる」とも語る。メーカーが推奨していない使い方でも、「うちで試した結果としては少しできますよ」と提示してくれるSIerには、心を開いて情報を伝えたくなるという。

早坂氏は、「情報量の豊富さ」を挙げる。SIerは多くの顧客と接しているからこそ、幅広い情報を持っている。その情報を、顧客の目線で整理して伝えてくれることが重要と語った。

ユーザーコミュニティの価値。孤独な担当者をつなぐ場

パネルディスカッションの中で、小俣氏が語った言葉が印象的だった。「DX の担当者って、“ぼっち”が多い。上長からあれこれ言われるが、相談相手がいないんですよね」。

この孤独な状況を救ったのが、ユーザーコミュニティ「nest」だった。小俣氏は、SIerに相談してもうまくいかなかった課題を、nestで他のユーザーに相談したことで解決できたという。「オープンになっていない情報も含めて、情報をうまく共有していただきました」。

nestのようなユーザーコミュニティは、単なる情報交換の場ではない。同じ課題を抱える仲間と出会い、互いに学び合い、励まし合う場である。そして、その価値はSIerにとっても大きい。

ここで重要なのは、SIerが顧客をユーザーコミュニティにつなぐという発想だ。従来、SIerは顧客との関係を自社内で完結させようとする傾向があった。しかし、それでは個別対応の限界に直面する。前述したように、顧客をユーザーコミュニティにつなぐことで、SIerは顧客の活用促進を支援し、長期的な関係を築くことができる。

ユーザーコミュニティとパートナーネットワークの融合は、SIerが顧客を「囲い込む」のではなく、顧客をより大きなエコシステムに「つなぐ」ことで、三者全てにメリットをもたらす仕組みとも見て取れる。

後半には4社のSIer企業の実践事例も紹介

登壇者:
・株式会社日立ソリューションズ ITプラットフォーム事業部 データイノベーション本部 デジタルインサイト・サービス部 山田 裕子氏(写真上左)
・DAIKO XTECH株式会社 ビジネスクエスト本部 マーケティング推進部 営業企画課 課長 橋本 雅弘氏(写真上右)
・株式会社フォーカスシステムズ デジタルビジネス事業本部 営業企画統括部 営業企画部 営業担当 中嶋夏希氏(写真下左)
・富士通株式会社 クラウド&ビジネスアプリケーション事業本部 SAP事業部 青木崇晃氏(写真下右)

イベントの後半では、4社のSIer企業が自社の取り組みを共有した。株式会社日立ソリューションズは、MotionBoardとDr.Sumを自社の営業管理に活用する「自社利用による製品理解度向上」の事例を発表。DAIKO XTECH株式会社は、3年間にわたるMDF(マーケティング支援資金)の戦略的活用事例を紹介。株式会社フォーカスシステムズは、認定資格取得を起点とした社内育成サイクルの構築について語った。富士通株式会社は、全国規模の営業組織に対して5年連続で実施している「セールスコンテスト」の取り組みを共有した。

詳細は「WARPの歩き方」へ

これらの事例はいずれも、ユーザーパネルディスカッションで語られた「製品を深く理解すること」「顧客に寄り添うこと」「継続的に取り組むこと」の重要性を裏付けるものだった。

パートナー、ユーザー、ベンダーの三者共創エコシステムの可能性

ウイングアーク1st 営業本部_パートナー営業統括部 統括部長 左山 裕二氏

クロージングでは、左山氏が「製品を深く理解し、顧客と伴走する姿勢」が信頼につながるとセッションを総括。来期はWARPとnestの連携を強化し、パートナー企業が導入ユーザーをコミュニティへつなぐ取り組みを本格化させ、三者共創のエコシステムを加速させると意気込みを語った。

イベント終了後のアンケートには、多くの感想が寄せられた。特に印象的だったのは、ユーザーの生の声を聞けたことへの評価と、それが自社の活動を見直すきっかけになったという声である。

「ユーザーの生の声が聴ける機会は非常に貴重です。お客様へ寄り添う、伴走する姿勢が改めて大切なのだと理解しました」

「本当に頼れるSIerについて、新たに気づかされた観点がいくつもあり、非常に勉強になりました」

「自分自身の普段の活動を考えさせられ、困った話の内容にはドキッとしました。社内の若手メンバーなどにも共有します」

普段、エンドユーザーと接する機会があっても、ここまで率直な意見を聞ける場は少ない。特に「困った経験」として語られた内容は、多くのSIerにとって、自社の活動を振り返る鏡となった。また、ユーザーコミュニティの存在とその活用方法についての感想も多く寄せられた。

SIerにとって、ユーザーコミュニティの存在を知ることは、顧客支援の新たな選択肢を得ることを意味する。顧客をコミュニティにつなぐことで、個別対応の負担を軽減しながら、顧客満足度を高め、長期的な関係を築くことができる。

一方、ユーザー企業にとって、SIer企業がユーザーコミュニティの価値を理解していることは、より良い支援を受けられる可能性をもたらす。SIerとの関係が、単なる取引関係ではなく、共に成長するパートナーシップへと進化することを意味する。

WARP Sales Summit 2026は、別々に運営されていたコミュニティを統合し、新たなエコシステムを構築する可能性を示すイベントであった。この取り組みを成功させるには、各プレーヤーが自らの役割を深く理解し、協力し合う姿勢が欠かせない。また、今回のようなイベントを継続的に実施することが、この新たなエコシステムを発展させる鍵となるだろう。

登壇者・参加者同士のネットワーキングも行われ、ユーザー、SIer、メーカーの三者が交じり、生の声を交換した。

(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣  PHOTO:野口岳彦 編集:野島光太郎)

 

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