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企業がいかに効率的に経営資源を活用できているか、それを表すのが生産性指標です。
生産性指標では、労働力や資本を付加価値額(≒粗利益)で割ることで、かけた労力がきちんと活用されているかを見ることができます。
この記事では、生産性の基礎知識の他、企業分析に活用できる主要な労働生産性指標をご紹介します。
最後まで是非チェックしてください。
まずは、生産性の定義と、生産性指標の基本的な考え方について説明しましょう。
企業活動において、生産性とは投入した労働力や資本力が効率的に活用されているかを示します。
労働力とは、生産に関わる従業員のことで、人件費(円)で表すことができます。
資本とは、生産に関わる機械設備や建物のことで、その投資額(円)で表すことができます。
・生産性の基本的な計算式
生産性の基本的な計算式は、以下の通りです。
生産量(アウトプット)÷投入量(インプット)
生産量は、さらに「物的労働生産性」と「付加価値労働生産性」に分かれます。
物的労働生産性は物理的な量を生産量ととらえるもので、工場で言えば実際に製造した物の量が例として挙げられます。
付加価値労働生産性は、記号が生みだした付加価値を生産量ととらえるもので、一般的には売上から原価を引いた額(粗利益)のことを指します。なお、財務省「法人企業統計調査年報」では、付加価値額を以下の通り定義しています。
付加価値額=営業純益(営業利益-支払利息等)+役員給与(賞与含む)+従業員給与(賞与含む)+福利厚生費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課 |
この記事では、企業が生みだす付加価値額(粗利益)を重視し、付加価値労働生産性について説明します。
・生産性指標の種類
まずは、この記事で説明する生産性指標について表で簡易的に紹介します。
名称 |
計算式 |
概要 |
労働生産性 |
労働生産性(円)=付加価値額(円)÷従業員数(人) |
生産に関わる人員一人あたりがどれだけ付加価値を生み出したか |
資本生産性 |
資本生産性(円)=付加価値額(円)÷有形固定資産(円) |
所有する資本(機械・設備・不動産等)がどれだけ付加価値を生み出したか |
労働分配率 |
労働分配率(%) = 人件費(円)÷ 付加価値額(円) × 100 |
労働力を効率的に活用して粗利益を出せているか |
労働装備率 |
労働装備率(円)=有形固定資産(円)÷従業員数(人) |
従業員一人ひとりに設備投資がなされているか |
生産性指標に注目が集まる背景は、人件費や設備投資額の高騰です。
日本ではもともと少子高齢化による働き手不足が問題でした。それに加えて、新型コロナウイルスの流行やロシア・ウクライナ戦争による物価高が深刻な問題となっています。
このような背景から、企業は生産性を高めることが必須となりました。
労働生産性は、生産に関わる人員一人あたりが生みだす付加価値額を求めることで計算することができます。
労働生産性は、高い方が人材を効率的に活用できているということを示します。
・労働生産性の計算式
労働生産性(円)=付加価値額(円)÷従業員数(人)
例えば、1か月あたり粗利益1,000万円を生みだす工場において、スタッフの総数が100人だった場合、1人10万円の付加価値を算出できているということになります。
・人時生産性の概要と計算式
人時生産性は、労働生産性をさらに分解したもので、人員ひとりが1時間でどれだけの利益を生みだしているかを表す指標です。
人時生産性=付加価値額÷従業員数の総労働時間(h)
例えば、1か月あたり粗利益1,000万円を生みだす工場において、スタッフ全員の1月の総労働時間が500時間だったとします。この場合、1時間当たり2万円の付加価値を算出できているということになります。
生産性を所有する資本(機械・設備・不動産等)に着目したのが、資本生産性です。資本がどれだけ効率的に付加価値を生み出したかを算出します。
資本生産性も、高い方が資本を効率的に活用できているということを示します。
付加価値資本生産性(%)=付加価値額(円)÷有形固定資産(円) |
例えば、1年間あたり付加価値額1,000万円を生みだす工場において、工場の建物や設備の投資金額が3億円だったとします。この場合、この工場の資本生産性は約3.33%ということになります。
生産性指標は、企業の財務分析をする上でも役立ちます。ここでは、財務分析で役立つ生産性に関わる指標を見ていきましょう。
企業の財務分析を行う上で、労働力や資本を効率的に活用できていることを示す生産性は重要な要素です。
生産性を更に細かく分解した指標である、労働分配率、労働装備率を見てみましょう。
労働分配率は、企業の生み出す粗利益と人件費の比率を出すことで、経営効率を見る指標です。一般的に、労働分配率が低いと経営効率が良いとされています。
労働分配率(%) = 人件費(円)÷ 付加価値額(円) × 100 |
例えば、人件費450万円の会社で、粗利益1,000万円を出している場合、労働分配率は45%となります。
当然ですが、人件費が高くなるほど、労働分配率は上がるため、同じ利益を出すのに多くの人員が必要となっていることがわかります。
労働分配率の目安は50%が適正と言われています。60%以上だと、人件費の占める割合が多く、利益が出づらい体質になっていることが考えられます。
労働装備率(資本装備率)は、生産にかかる人員1人あたりの設備投資額のことを指します。容量、従業員一人当たりにきちんと設備投資がなされていることを示します。
労働装備率(円)=有形固定資産(円)÷従業員数(人) |
例えば有形固定資産の合計が20億円、従業員が200名のとき、労働装備率は1000万円となります。中小企業庁のサイト「企業規模別資本装備率」によると、2016年度の労働装備率の平均は大企業で1089万円、中小企業で731万円です。
固定資産とは、企業が長期間に渡って所有し、事業目的のために継続的に使用する資産のことを指します。そのうち有形固定資産とは、その名の通り形のある固定資産を指し、具体的には建物や土地などの不動産、機械設備、自動車などが挙げられます。反対に、ソフトウェアなど目に見えない固定資産は、「無形固定資産」と呼びます。
・有形固定資産の計算式
有形固定資産を出すためには、会社で所有している資産を合計する必要があります。ただし、建物や機械設備、工具や車両、パソコンなどは、経年に応じて価値が減っていくとみなされるため、経過した月数だけ減価償却を行う必要があります。
有形固定資産(円)=有形固定資産の取得価額合計(円)‐累計減価償却費(円) |
今回説明した通り、生産性指標は経営の効率性を分析する上で有用であり、定期的な観測を続けることで職場の課題を発見しやすくなります。しかし、どの生産性指標を職場のKPIとするかは、業種によって異なります。例えば、製造業であれば設備投資の効率性を見る資本生産性がKPIとして向いているでしょう。
業種ごとのおすすめの生産性指標は、別のコラムで詳しく紹介していますのでご参照ください。
今回は一般的な労働生産性の考え方と、労働分配率、労働装備率について紹介しました。
労働生産性は、企業の経営効率を見る指標として、職場の課題改善だけではなく、企業の財務分析にもよく用いられます。同じ生産性指標で複数の企業を比較することで、自社の持つ強みや弱みがよりはっきりわかるようになります。自社の決算書から、分析を行ってみるとよいでしょう。
著者:野田頼政
早稲田大学文学部を卒業後、不動産会社で商業施設の開発、売買、賃貸を行う。中小企業診断士・FP1級・宅地建物取引士などを取得して店舗開発などを支援するほか、不動産投資家として関西に6軒、関東に3軒の不動産を保有している。会社勤務や不動産投資の経験を活かし、ライター業にも勤しむ。
(TEXT:野田頼政 編集:藤冨啓之)
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