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8月末も猛威を振るう新型コロナウイルス。あらゆるフェスやスポーツイベント、花火大会などが相次いで中止となった上に記録的な猛暑となり、熱中症と感染症、そして夏の風物詩の不在、と振り返ってみてもなんとなく味気ない、かつ気を休めることができない夏でした。
さて、このタイミングで改めて振り返っておきたいのが「今年の上半期に何が起こったか」です。
データから未来を予測することで、これから起こる事態に適切に備えることができるはず。今回は経済・環境・人の移動の3つの観点からコロナ禍第1波の影響をご紹介します。
まずは経済への影響です。コロナ禍で経済活動が停滞し、多くの国がダメージを受けたのはみなさんもよく知るところでしょう。
IMF(国際通貨基金)が2020年6月24日(水)に改定した世界経済見通しでは2020年の成長率はマイナス4.9%と1930-32年の大恐慌以来最悪の景気後退が予測されています。
日本の経済も大きなダメージを受けており、2019年10-12月の実質GDP成長率は-7.1%、2020年1-3月は-2.2%でした。そして、日本経済センターが実施した民間エコノミスト約40名への調査において、第1波と重なる4-6月の実質GDP成長率は-23.53%とリーマンショック時(-17.8%)を下回る戦後最悪の数値が予測されていましたが、8月17日に内閣府によって公表された実際の数値はそれをさらに下回る-27.8%となっていました。
※「統計表(四半期別GDP速報)┃内閣府(年率・2次速報値)」と「2020年07月調査┃ESPフォーキャスト」を参照し筆者作成。
次に、各業界への影響をみていきます。
プラス | |
~20% | 輸送用機器 |
~10% | 陸運、商社、電気機器、ガス、通信、機械、サービス、小売業、精密機器 |
マイナス | |
~-10% | 医薬品、食品、水産、化学、倉庫、証券 |
~-20% | 非鉄金属製品、建設、パルプ・紙、自動車、銀行、鉄鋼、その他製造、ゴム、電力、窯業 |
~-30% | 繊維、不動産、保険、その他金融、石油、鉄道・バス |
~-40% | 海運、造船、鉱業 |
~-50% | 空運 |
日本の業種別株価騰落率(2019年末比)┃日本経済新聞、2020年7月26日確認のデータ参照
10%以上上昇しているのは自動車などの輸送用機器のみ。反対に空運、海運、造船といった業界は大きく株価を落としています。
とはいえ、輸送用機器業界にダメージがなかったわけではもちろんなく、コロナ禍で全世界の新車需要は約2割減少したといわれており、日経乗用車メーカー8社のうち7社(トヨタ以外)は「新型コロナの影響を合理的に算定することは困難」として業績予測の開示を見送りました。
現状は2021年以降の回復を見越しての結果だと考えられます。
新型コロナウイルスの流行がプラスの影響を与えたものがあるとすればそれは環境問題です。
空気質指数(AQI)のワースト常連国として知られる中国やインドの大気汚染がコロナ禍による経済活動のストップや人の移動の減少により改善されたことがレポートされました。
米スタンフォード大学のマーシャル・バーク准教授は、成都(Chengdu)、上海(Shanghai)、広州(Guangzhou)、北京(Beijing)のデータ(下図)を分析し、2016-2019年の平均から2020年1-2月は15~18μgのPM2.5濃度減少が見られたことを発表しています。
COVID-19 reduces economic activity, which reduces pollution, which saves lives.┃G-FEEDより引用
同時に、5歳未満の子ども1,400名~4,000名・70歳以上の高齢者7万3,000名の生命が救われたとのシミュレーション結果も発表されています。
ただしNASAやフィンランドの研究機関CREA(Centre for Research on Energy and Clean Air)の報告によると、5月下旬の時点ですでに中国の大気汚染のレベルは例年通りに戻っているとのこと。
確かに以下のグラフを見ると、3-4月に急落したNO2(二酸化窒素)、PM2.5、SO2(二酸化硫黄)の濃度はリバウンドしています。PM2.5の減少により排出が促進されるO3(オゾン)の濃度は3-4月の間例年以上だったようですが。
COVID-19 Air Pollution Rebound Tracker┃Centre for Research on Energy and Clean Airより引用
最後に、経済・環境の変化にも大きくからんでいた人の移動のデータをみてみましょう。
米グーグルが公表しているコミュニティモビリティレポートをもとに「公園」「食料品店・薬局」「小売り・娯楽」「乗換駅」「職場」「住宅」の6地点の2020年2月15日~2020年7月21日までの移動データをグラフ化しました。
このデータは基準値(2020 年1月3日〜2月6日の5週間の曜日別中央値)からどれだけ人々がその場所にいる割合が増えたかあるいは減ったかを表しています。
上下が激しいのが食料品店・薬局と公園です。いずれも生活における必要性が大きく、また長距離の移動が必要ないためコロナ禍の渦中にあっても定期的に利用されていたということでしょう。
COVID-19:コミュニティ モビリティ リポート┃Googleのデータ参照
一方、小売・娯楽と乗換駅は緊急事態宣言中(4月7日~5月31日)にはっきりとマイナスに転じていたことがグラフに現れています。比較的緊急性の低いスポットだけに納得ですね。
COVID-19:コミュニティ モビリティ リポート┃Googleのデータ参照
職場のパーセンテージも同様に緊急事態宣言のタイミングからマイナス20%程度にまで落ち込みます。ということは、この機にリモートワークに移行した労働者の割合は約20%程度と類推できますね。急落しているのは4月29日・5月4~6日であり、ゴールデンウィークの祝日が影響しています。
COVID-19:コミュニティ モビリティ リポート┃Googleのデータ参照
最後に住宅に人々がいる割合を見てみましょう。
ご覧の通り、ちょうど職場のグラフを逆さにしたような形になっています。ただし、職場の下げ幅に対して住宅の上がった割合はだいたい半分程度です。自宅以外で勤務したりプライベートを過ごす人もそれなりにいたことがわかります。
COVID-19:コミュニティ モビリティ リポート┃Googleのデータ参照
このように、コロナ禍での人々の動きから、その場所にどのような役割があったのかが浮かび上がってきます。ウィズコロナ、アフターコロナの時代では、その場所の役割にあわせてプランを用意しておくことがが必要とされるでしょう。
新型コロナウイルスの流行が2020年上半期の経済・環境・人の移動に与えた影響をかいつまんでご紹介しました。
過去のデータをざっくりと概観しただけでも、いくつかの法則が見えてきます。コロナの収束はいつやってくるのかとじれったい気持ちになりますが、そのエネルギーを過去のデータに向けてこれからの戦いに生かしましょう。
参考資料 ・新型コロナウイルス国内感染の状況┃東洋経済オンライン ・世界経済、2年で損失1300兆円 20年はマイナス4.9%┃日本経済新聞 ・World Economic Outlook Update, June 2020┃INTERNATIONAL MONETARY FUND ・統計表(四半期別GDP速報)┃内閣府(年率・2次速報値) ・2020年07月調査┃ESPフォーキャスト ・2000万台超の需要が消える自動車、「新常態」で生き残るのはトヨタと…┃ニュースイッチ ・COVID-19 reduces economic activity, which reduces pollution, which saves lives.┃G-FEED ・新型コロナウイルスによる経済活動制限が、大気汚染を改善し多くの生命を救った、との推定┃Newsweek ・COVID-19 Air Pollution Rebound Tracker┃Centre for Research on Energy and Clean Air ・PM2.5は減少もオゾン汚染が増加、その原因が明らかに┃Science Portal China ・経済チャートで見る新型コロナショック┃日本経済新聞
(宮田文机)
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