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建設UPDATA-データで紐解く、2024年問題解決への戦略【後編】|建設業界における課題はデータ活用で打破する!「Denodo」と「MotionBoard」のユースケースから見える未来

「建設UPDATA〜データで紐解く、2024年問題解決への戦略〜」では、建設業界が抱える労働力不足や高齢化問題、生産性の低さなどの問題に対処するため、建設DXのスペシャリスト4人に登壇いただいた。

 

前編では、建設業界の働き方改革と生産性向上について、国土交通省の酒井大斗氏は法改正の観点から、弊社ウイングアークの小林大悟はデータ活用によるDX化促進の観点から深堀りした。

 

後編では、Denodo Technologies株式会社の篠田氏と株式会社竹中工務店の郷門氏が、「Denodo」(データ管理ツール)と「MotionBoard」(BIツール)のユースケースを紹介。まだまだデータ活用が進んでいない建設業界で、データ活用を行う恩恵について具体的に解説いただいた。

         

データ活用のプロDenodo Technologiesから見た建設業界のDXとデータマネジメントツール「Denodo」

建設UPDATA~データで紐解く、2024年問題解決への戦略~【00:56頃】

3人目の登壇者は、幅広い業界のデータの論理的な統合・管理・配信に長年注力しているDenodo Technologies株式会社の篠田氏。さまざまな業界の企業のデータ活用・効率化に貢献しているなかで見えてきた、建設業界が抱える課題についてお話いただいた。

建設業界でデータ利活用が進まない理由

篠田氏は、建設業界の企業の大多数が社内データを十分に活用できていないと指摘する。

その理由として、多くの建設業界の企業は、データやシステムが「サイロ化」しており、データを連携できていないのだという。

建設業のサイロ化の進行 ※出所:篠田氏投影資料より

「建築・土木のような縦割りの組織の場合、組織同士でのデータ連携が分断されやすい。また、組織内でも営業や設計、施工など部門間のデータ連携が十分にできていないケースをよく聞く」と篠田氏は語る。

データのサイロ化が発生する理由としては、個別に最適化を繰り返してきたことで、システム間の連携が取れていないことが挙げられる。部門ごとに、役立つシステム・ツールを導入した結果、全社的なデータ統合ができなくなるケースだ。

また、部門ごとに属人的な対処を繰り返してきたことで、全社的な統一ができていないケースも考えられる。

他にも建設業の顧客から「よく聞く課題」として、以下が挙げられるそう。

● データドリブン経営と上から言われても、そもそもデータ活用する土壌がない
● デジタル戦略の方針が不明瞭で、何を始めるかも決まっていない
● 100以上のシステム・データがバラバラで、どのようなデータがあるのかも不明
● 現状のデータを整備しようにもIT部門の負荷が高い
● 現場から「リアルタイムのデータを見たい」と言われるが開発にコストも時間もかかる
● 非構造化データ(現場写真など)を活用したい
● 外部データの取り込みに手間がかかる

「多くの課題を1つのツールで解決できるのが『Denodo』。複数ツールを連携させる必要がないため、ユーザー部門・システム部門ともに負担が少ない」と篠田氏は言う。

建設業界におけるDenodoを活用するメリット

Denodo Technologies株式会社の製品「Denodo」は、大手ゼネコン企業をはじめ国内50社超で導入されており、建設業に限らず広範囲の分野で活用される汎用的なシステムだ。

建設UPDATA~データで紐解く、2024年問題解決への戦略~【01:07頃】

Denodoのメリットとして、データを一か所に集約させられる点が挙げられる。例えば、コリンズやオープンデータ、オンプレミスの基幹系データベース、ファイル共有領域のXML・CSVなど、複数個所にあるデータでも、リアルタイムにアクセスして仮想的に集約できる。

データが見やすくなり効率が高まるのはもちろん、セキュリティ制限を一元化できるのもメリットだ。

Denodoは非構造化データと構造化データも統合できる ※出所:篠田氏投影資料より

また、非構造化データと構造化データの統合も可能。一般的に、現場からの非構造化データと社内の構造化データの紐づけは難しく、実現できないケースも多い。しかし、Denodoはbox APIと連携させることで非構造化・構造化データを仮想的に統合して、さまざまなインターフェースで配信できる。画像や音声などのバイナリーファイルも、ブラウザ上で再生できるため、データを直感的に扱いやすくなる。

建設業界におけるDenodoのユースケース

建設業界の企業で、Denodoがどのように使用されているか、実際のユースケースを紹介いただいた。

ユースケース①勤務実績レポート

勤務実績レポートにおけるDenodoのユースケース ※出所:篠田氏投影資料より

従来は、データベースにある勤怠情報とExcelにある組織表などを照合して計算し、支店ごとにデータを切り分けて提供していた。データ収集や配布の作業に時間がかかることや、本社・各支店でのレポート作成の重複など、非効率なのが課題だった。

DenodoとBIツールを組み合わせて、下記のような改善に成功したという。

● 全社分のデータを参照できるようにして、集計作業が不要に
● データを自動で最新化させ、毎月のデータ配布が不要に
● 散在するデータを収集・統合し、データ取得元を一元化
● フィルタをかけるだけで支店単位のデータが見られ、レポート作成が不要に

「毎月の作業時間の削減」「本社・支店の作業を標準化」の2つが達成された。篠田氏は、「レポートの分類・並び替えなどのメンテナンスをユーザー部門で行えるため、IT部門の負担が減ったと聞く」と語る。

ユースケース②建設ライフサイクルデータの探索的なデータ分析

建設ライフサイクルデータの分析におけるDenodoのユースケース ※出所:篠田氏投影資料より

企画・提案から設計、施工など建設ライフサイクルにおける各データに、キーマスターを設けることで、瞬時に必要な情報を取り出せるようになった。
※キーマスター:データを横断検索できるように割り振られた、物件管理番号などの管理テーブル

案件管理・建物カルテなど物件に関連する各書類や、竣工物などをすぐに検索できる。

「将来的にはESGの観点から、営業段階や設計段階など各段階でのCO2排出量を瞬時に抽出することを目的としたケースだ」と篠田氏は語った。

竹中工務店のデータ活用戦略とMotionBoard活用事例

建設UPDATA~データで紐解く、2024年問題解決への戦略~【01:16頃】

最後の登壇者は株式会社竹中工務店の郷門氏。竹中工務店におけるデジタル基盤整備の現状と、MotionBoardを使ったデータ利活用の取り組みを紹介いただいた。

全社的なデータ利活用のため「建設デジタルプラットフォーム」を構築

竹中工務店の「建設デジタルプラットフォーム」のイメージ ※出所:郷門氏投影資料より

竹中工務店では、営業から設計、施工など各段階でのデータを管理する「建設デジタルプラットフォーム」と呼ばれるデータレイクを自社で構築している。データのサイロ化が発生しないように、営業~保全維持までのデータを一貫して活用するのが目的だ。

竹中工務店における「MotionBoard」の活用事例

竹中工務店のMotionBoard活用実績 ※出所:郷門氏投影資料より

竹中工務店では、MotionBoard 内で9,954ものボードが作成されており、全社的に活用が進んでいる。活用用途としては約70%が個人利用で、約15%が部門利用と業務システム利用だ。

今回は工事マネジメント・経営マネジメントについての事例を紹介いただいた。

①工事マネジメントでの事例

工事マネジメントにおいて、MotionBoardをさまざまな部門で活用しており、代表的なものとして以下が挙げられる。

● 営業支援:顧客からの情報・ニーズを基に、過去の類似工事を一覧表示。地域性や市況を加味したコスト情報を自動で補正でき、工事の規模感・コスト感を把握できる
● 原価管理:工事原価管理システムとMotionBoardを組み合わせて、作業所ごとの予算・支払実績・原価などの推移グラフを自動で作成してくれる
● 生産性の見える化:稼働工事の生産性や、技能労働者の充足状況を常に把握可能。各種生産性向上策の効果を把握でき、改善しやすくなる
● 労務管理:技能労働者の職種ごとの工数データを全店で集約して見える化。労務逼迫状況やボトルネック職種を把握しやすくなる
● 勤怠管理:社員・外部人材の勤怠情報を一元管理。関係者全体で勤怠情報を共有して、人員配置に関する対策を検討・立案できる
● 残業時間の見える化:個人の残業時間をグラフで把握できる。労働時間上限規制に抵触しないようマネジメントしやすくなる

社内・社外のデータ統合だけでなく、誰もが視覚的に理解しやすいデータとして表示できる。「データを基に、どのように人員配置や労務管理などをすべきか適切に判断・対応しやすくなることから、各部門の生産性・作業効率アップや迅速化につながっている」と郷門氏は語る。

②経営マネジメントでの事例

経営マネジメントにおいても、下記のようにMotionBoardが活用されている。

● 受注見込みのシミュレーション:予想工事情報を基に、人員山積み・受注高・完工高・完工利益をシミュレーションして瞬時に把握可能。予想工事入れ替えによる変更もリアルタイムに反映できる
● 実績のモニタリング:人事・営業・設計・調達など、部門ごとの管理指標(受注高推移や調達額・差益率推移など)をひとまとめに確認。資料作成の自動化も進めやすく、生産性向上につながる
● デジタル会議:上記の結果を共有することで、会議での報告時間が最小限になり討議に集中できる

人員体制に応じた無理のない受注量把握と受注戦略を立てやすくなったり、資料作成の手間削減・ヒューマンエラーの排除による正確性の向上につながったりと、効率的な経営が可能になる。

「課題の分析・戦略立案など、コア業務に専念しやすくなり生産性が高まる」と郷門氏は語る。

社内でのデータ教育を充実させ、全社的なデータ活用を推進

竹中工務店では、全社的にデータを活用できるよう社員教育を重視しており、下記の取り組みを行っている。

● データ活用ホームページ:社内で活用できるデータ群や活用事例を提示。データ活用に必要な手続き・注意点を周知している
● BIツールホームページ:MotionBoardをはじめ、社内標準のBIツールを活用するのに必要な情報(マニュアルなど)をまとめて発信している

竹中工務店のMotionBoard活用推進策 ※出所:郷門氏投影資料より

特に事務系の新入社員には、1年間の新入社員研修のうち4ヶ月をデジタル室でのOJTに割く。BIツールの勉強会・演習課題を通じてスキルアップを図り、データ活用できる人材を育てている。

郷門氏は、「新入社員は『こんなに簡単に使えるんだ』という意識を持って巣立っていく。スキルアップとともに心理的ハードルを下げることで、各配属先で積極的にデータを活用できるよう努力している」と締めくくった。

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