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新しいキャリアのために、いったん休む。休職をポジティブに捉える「キャリアブレイク」とは?

         

離職や休職、休職というと、一般的には育児・介護などライフプランの変化に関わるものや病気などでやむ終えず、というネガティブな理由によるものであるイメージが根強いのではないでしょうか?
しかし、最近では自分自身のキャリアを見つめ直す時間としてキャリアを手放す「キャリアブレイク」という言葉が広がりつつあります

「キャリアブレイク」を理解するために、最適な書籍の一つが『キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない』です。

「キャリアブレイク」の定義とは?

日本において離職や休職がネガティブに捉えられがちで、実際に「ブランク期間」「キャリアの空白」としてキャリアに悪影響を与えると考えられてきました。しかし、キャリアの中には、仕事に関するワークキャリアだけでなく、ライフイベントをはじめ、自分自身の人生をどう生きるか、というライフキャリアも含まれます。キャリアというものを、職務履歴だけでなく自分自身の生き方自体を抱括するものとして捉えたとき、離職や休職、休学といった時間を、単なる「空白(ブランク)」ではなく、改めて自分の人生を見つめ直す有益な「ブレイク」の時間として捉え直すことができます。

ここで改めて本書から「キャリアブレイク」の定義を紹介します。2016年に筆者はキャリアブランクについて下記のように定義をしていました。

​​「育児、介護、体調不良、転職準備などあらゆる理由で、職業もしくは所属する会社から離職している期間であり、休職は含まれない。ただし、離職期間の経験が自己効力感を高めるものであり、その後のキャリアに役に立ったと本人が主観的に認知している場合に限る」

しかし、この定義ではワークキャリアのみにしか言及していません。そこで本書では、「キャリアブレイク」という言葉をライフキャリアも含め、キャリアを見直す期間として、より抽象化して下記のように再定義しています。

「今まで中心的に活動してきたキャリアの役割を手放すことによって、新しいキャリアの役割に向けて自分と社会を見つめなおしている期間

日本人はなぜ休まないのか?日本における労働環境とキャリアブレイク

日本人は休まない、とよく言われます。本書ではこうした背景に無限定総合職という雇用形態標準労働者という評価モデル、そして、マッチョイズムという考え方があると指摘しています。

日本では、無限定総合職という雇用形態が主流です。無限定総合職は職務や勤務地が限定されず、転勤や長時間労働などが当然視されます。この形態の背景には男性が働き、女性が専業主婦として支える、という性別役割分業観があります。

また厚生労働省の賃金構造基本統計調査で使われている標準労働者という評価モデルは、賃金の評価などでも使われてことが多く、休業期間がある場合、こうした評価モデルから外れてしまうことになります。雇用形態と評価システムが休職期間を挟まない終身雇用を想定しているため、休むとレールから外れてしまう感覚になるのです。

加えて、日本の職場文化にはマッチョイズムが強く根付いており、精神的にも体力的にも強靭であることが評価される傾向があります。このマッチョイズムは、労働者が休職や離職を選択する際に「弱さの表れ」とみなされ、キャリアに悪影響を与えるという社会的な圧力を生み出します。

こうした休みづらさは、必要な休みにも影響を及ぼします。特に育児をめぐっては、労働者が休みを取ることが難しい環境が、いわゆる「親ペナルティ」と呼ばれる現象を引き起こしています。親ペナルティとは、育児に従事する親がキャリアにおいて不利な扱いを受けることや、育児による精神的・肉体的な負担から幸福度が低下する現象を指します。これは、休みを取りにくい職場文化によって引き起こされており、母親だけでなく父親にも影響を及ぼします。結果として、育児に関わる人々の全体的な幸福度が下がり、仕事と家庭の両立が難しくなるという現実があります。

このような現状を打破するために、キャリアブレイクという選択肢は非常に有効と言えます。

休んだ期間を自分のキャリアにとって有益な時間に。8人のキャリアブレイク実践者の事例

本書では、キャリアブレイクに取り組んだ8名の事例が詳細に紹介されています。これらの実践者たちは、キャリアを一時的に手放し、その期間を自己成長やリフレクションのために使いました。事例の中には、育児や介護のために仕事を離れたケースもあれば、自己探求やスキルアップのためにキャリアブレイクを選んだケースもあります。

たとえば、ある事例では、仕事にやりがいを感じていたものの、コロナ禍の環境変化と異動によりモチベーションを見失ったが、休職期間中に新しいスキルを習得し、結果的に会社に戻ったときに、自分がやりたい仕事が認められた、という成功例が紹介されています

こうした事例から学べることは、キャリアブレイクが単に「休む」ことではなく、次のキャリアステップに向けての重要な準備期間であるということです。キャリアブレイクを通じて、個々の価値観や人生の優先順位を見直し、新しい視点で次のキャリアに挑む姿勢が強調されています。

おわりに

『キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない』は、従来の休職、退職へのネガティブな視点を転換し、キャリアの一時的な停止が個人にとっていかに有益であるかを解き明かした書籍です。離職や休職を単なる「空白」として捉えるのではなく、キャリアの見直しや成長のための時間と位置づけることで、働く人々が長期的により充実したキャリアを築くための視点を提供しています。

人生100年時代と呼ばれ、働き手も働き方も多様化する昨今、キャリアにおける柔軟性を求める動きはさらに活発になっていくと考えられます。前向きに休むという選択肢が広がることが、一人一人が自分の人生をより良く生きるためのきっかけの一つになるのではないでしょうか?

(大藤ヨシヲ)

 

参照元

・キャリアブレイク — 手放すことは空白(ブランク)ではない (千倉書房) | 石山 恒貴 (著), 片岡 亜紀子 (著), 北野 貴大 (著) 
・キャリアブレイクとは? 中断との違いと離職期間の前向きな考え方を解説 | スマカン

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