「引越しって、もっと安くできると思ってた」――そんな声が、最近は珍しくなくなってきました。
実際、引越し費用はここ10年で大きく上昇しており、「過去最高」を更新中です。
特にここ2年での上昇が顕著で、家族引越しは2019年比で2倍超え。単身でも倍近い水準に達しています。
繁忙期(3月)はとくに価格が高騰しやすく、引越し比較サイトの分析では、通常期の約1.8〜2.2倍になることもあるとのこと。SNSを見ていても、繁忙期の3月には「家族4人で引越しの見積りが100万円を超えた」なんて声も上がっています。
つまり今、私たちは“史上もっとも引越しが高い時代”に生きていると言っても過言ではありません。
引越し費用が高騰している理由は、単なる「値上げ」ではありません。業界全体が抱える課題が、価格に反映されているのです。
とくに深刻なのがドライバー不足。若手の担い手が減少し、引越しスタッフの確保も年々難しくなっています。人が足りないので、少ない人数で回すには単価を上げるしかない。これはどの業者にも共通の課題です。
燃料費の高騰、段ボールや梱包資材の値上がり…。2023年以降、仕入れコストが2〜3割上昇したという事例もあり、これは引越し費用にそのまま跳ね返ってきます。
2024年4月から、働き方改革関連法によるトラックドライバーの労働時間規制の強化により、トラックドライバーの残業時間に上限が設けられ、1日で運べる件数が減少。対応できる数が限られる中、1件あたりの料金が上がるのは避けられない状況です。
こうした「人・モノ・時間」の3重苦が、現在の引越し費用高騰を生み出しています。
引越し費用だけでなく、人々が一生で何回引越しするかも注目すべきポイントです。日本人は生涯で平均約3回の引越しを経験するとされています。
これは、アメリカ人の約11.7回と比較すると非常に少なく、ヨーロッパ各国(イギリス、ドイツ、フランス)も概ね4~5回と、日本は安定した居住環境を保つ傾向が強いことが分かります。
国 | 生涯平均引越し回数 | 主な背景 |
日本 | 約3回 | 終身雇用、長い勤続年数、実家文化 |
アメリカ | 約11.7回 | 転職・転居の頻繁さ、広大な住宅市場 |
イギリス | 約3〜4回 | 持ち家志向、住宅市場の安定 |
ドイツ | 約4.5回 | 賃貸住宅で長期間住む文化、地域密着型生活 |
フランス | 約4.6回 | 労働市場の安定、都市と地方のバランス |
この差は、各国の住宅事情や雇用制度、文化的背景に起因します。日本は家族や地域コミュニティに根ざした生活スタイルが長く続く一方、アメリカは柔軟な移動を前提としたキャリアアップが当たり前の社会構造になっています。安定して住み続ける日本人にとって、引越しは人生の一大イベントともいえます。そうした中で、費用の負担が大きくなりがちなのかもしれません。
とはいえ、進学、就職、転勤…生活の変化とともに、時として引越しは避けられないイベントです。
しかし、ちょっとした工夫で費用を抑えることはできます。
まずは2〜3社から見積もりを取って比較しましょう。同じ内容でも業者によって5万〜10万円差が出ることもあります。特に3月など繁忙期は、1ヶ月前にはもう予約が埋まり始めます。
3月下旬~4月上旬は、もっとも高い時期。可能であれば2月中旬や5月以降にずらすだけで、費用は大きく変わります。
荷物の量が少なければ、トラックも小さく、スタッフも少人数で済みます。実際、段ボール数個を減らすだけで1万円以上差がつくことも。
引越し費用の高騰は、今後も続くと予想されます。2024年問題の影響や、国全体での労働力不足、さらには燃料費や資材費のさらなる高騰が懸念され、業界各社も対応に苦慮しています。
多くの引越し業者は、繁忙期の需給調整を試みるため、予約システムの改善や、繁忙期限定のキャンペーンを実施中です。また、オンライン見積もりの導入や、料金の透明化を図る動きも活発化しており、利用者が納得しやすい仕組み作りが進んでいます。
国土交通省や関連機関も、繁忙期の需要分散を促すための施策を検討中です。たとえば、転勤や新生活の開始時期を若干ずらすことにより、需要のピークを分散させる試みとして、引越しの予約状況を業者からヒアリングした引越しカレンダーを公開。引越し時期の分散の呼びかけが進められています。
10年前より高くなった引越し費用。そこには、人手不足や働き方改革といった社会の変化が反映されています。しかし、私たちにできることも確実にあります。早めの準備とちょっとした工夫で、“賢い引越し”を選びましょう。
(大藤ヨシヲ)
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