みなさん、“スーパー公務員”岡祐輔さんをご存じですか?
豊かな自然や海の幸などの地域資源を持つ福岡県糸島市(ちなみに糸島は福岡市と陸続きになっていて「島」ではありません)の市役所職員で、データ分析力を用いて実行力のある政策を企画。「地方創生☆政策アイデアコンテスト2016」最優秀賞や、全国での講演活動など、従来の公務員のイメージの枠を超えた活躍を見せる人物です。
そんな岡さんが2022年2月に、そのデータ活用術をまとめた著書『ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析』をリリースしました!
本記事では、公務員以外にも役立つ同書の魅力や見るべきポイントについてご紹介します。
まずは、以下の動画をご覧ください。
これは、岡さんが最優秀賞を受賞し486組の頂点に輝いた『地方創生☆政策アイデアコンテスト2016』のプレゼン、「糸島版マーケティングモデルで地域産業のやる気も出る~福岡県糸島市に新ブランドを創出し、地域経済を豊かにする~」の記録映像です。
詳しい内容はコチラのスライド資料でも確認できるのですが、『糸島市統計白書』『商業統計調査』『RESAS(地域経済分析システム)』などオフィシャルな統計からデータを比較。そこから仮説を導き出して見事に卸売・小売業の年間商品販売額の少なさという糸島市の課題を解決する「マーケティングモデル」が構築されています。
結果として糸島市の第一弾商材として選出された“ふともずく”の売上は販売から1年半で売上6倍アップを達成したとのこと。糸島漁業協同組合やビジネス科を持つ福岡市の高校など多様なセクターを巻き込み、データを結果につなげた岡さんの取り組みは大きな注目を集め、「公務員がすごいと思う地方公務員アワード賞」「第5回地方公共団体における統計データ利活用表彰 特別賞」などの受賞にもつながりました。
現在、“真の効果”に基づいた政策立案を意味するEBPMが国を挙げて推進されています。岡さんの取り組みは地方からでも、データ活用の知識とやる気さえあればEBPMを成果につなげられる何よりの実例でしょう。
そんな岡さんのノウハウがイチからまとめられたのが、今回ご紹介する『ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析』なのです。
『ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析』は以下の序章+第1~5章で構成されています。
序章:身近でさがせる! 政策分析のタネ
第1章:実例でわかる! データ分析の基本思考
第2章:体感しよう! データ分析の着眼点
第3章:アナログでできる! Excelでキレのあるグラフを作る方法
第4章:みんなが知りたい! 聞き取り・アンケート分析の方法
第5章:明日からすぐにマネできる分析の実践例
さて、同書のタイトルに冠せられた「ゼロ」は序章と第1章にあたります。ここでは、データがなぜ政策分析・立案に役立つのか、データをどう見ればいいかなど、データ分析の前提となる基本が紹介されます。平易な言葉と例で説明されているため、データや数字に苦手意識を持つ超初心者の方も、とっつきやすいでしょう。
第2章以降の内容はいよいよ具体的なデータ分析の手法に入ります。ここでポイントと感じられたのがあくまで「公務員がデータ分析を業務で役立てるために何が必要か」という観点で記述されているということ。データ分析の入門書では、平均、分散、標準偏差、回帰分析など統計の基礎知識から説明されることが多いですが、この本ではグラフやフリーソフト、実際のサイトを使うことに主眼が置かれ、その手段として統計知識が触れられます。最短距離でヒストグラムをつくったり、共起ネットワーク分析を行ったりして、データ分析を体感し、そこからより深い学びに進めるというのは、非常に実用的ではないでしょうか。
ここまでの紹介内容でなんとなく伝わったかもしれませんが、この本が役立つのは「公務員だけ」ではありません。平易な内容で基礎を理解したのち、公的データをつかって効果を実感するというのは、民間のビジネスパーソンにとっても理想的なデータ分析への入門方法だと思います。
121ページと分量も多くないため、気軽に読んでみることをおすすめします。
2016年のプレゼンでも、『ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析』でも利用されているツールが『RESAS(地域経済分析システム)』です。
まずはこの無料ツールを使って、自分の住む地域をデータで見てみるだけでも、色々な発見があるでしょう。
例えば、本記事の筆者の出身地である「奈良県橿原市」の2016年の製造業における企業数の構成を示すのが以下のグラフです。
引用元:┃RESAS
ご覧の通り、繊維工業がほかの地域に比べて盛んであることがわかりますね。だからこそ、ふるさと納税の返礼品人気ランキングの上位に「クリーニング20点コース」や「五本指ソックス」が並ぶのでしょう。
出典:『奈良県橿原市┃ふるさとチョイス』2022年3月28日12:17のスクリーンショット
しかし、2015年のデータを見ると、橿原市の繊維製品の「移輸出入収支額(※)」はマイナス18億円であることがわかります。
引用元:┃RESAS
※…地域外からの収入額から地域外への支出額を差し引いた額。プラスは域外からのお金の獲得、マイナスは域外へのお金の流出を表す。
同じ奈良県でも、日本一のくつした生産量で知られる「広陵町」における繊維製品の「移輸出入収支額」はプラス45億円。
引用元:┃RESAS
イベント「靴下の市」を開くなど、「くつしたの町」としてのブランディングに取り組む同市に、橿原市は学ぶところがあるのかもしれません。
また、非公務員であっても書籍を参考に自分の地域のデータを色々と見ることで、自然とデータ分析力が身につくはずです!どんどんRESASや政府統計を使って、データ活用に慣れ親しんでいきましょう。
【参考資料】 ・岡 祐輔『ゼロからわかる! 公務員のためのデータ分析』学陽書房、2022 ・「公務員のためのデータ分析」の著者 スーパー公務員 岡さん┃わおんDX 気ままにインタビュー ・地方創生☆政策アイデアコンテスト 2016 ・糸島市観光協会公式ホームページ いこいこ糸島 ・地域も自分もガチで変える! 逆転人生の糸島ブランド戦略 (電子書籍)┃実務教育出版 ・コンプレックスの塊だった。頭脳派公務員が地方創生アイデアコンテストで日本一に。成功の裏に隠された地域への想いとは┃LOCAL LETTER ・経営手法を活かした政策で日本一に! 糸島に人生を救われた市役所職員が歩んだ、スーパー公務員誕生の道のり┃Nativ.media ・糸島市マーケティングモデル推進事業┃Data Start
(宮田文机)
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