日本のデータ活用の進展状況は、2025年現在、どうなっているのでしょうか?
世界最大級のITリサーチ・アドバイザリー企業ガートナーの日本法人、ガートナージャパン株式会社が2025年1月23日に発表した調査結果によると、データの利活用において「全社的に十分な成果を得ている」と回答した企業の割合は2024年11月時点で 8% に留まっています。
それでは、日本企業はほとんどデータ活用で成果は得られていないのでしょうか? あるいはそれとは異なるデータや事実も存在するのでしょうか?
さまざまなデータを参照し、2025年におけるデータ活用の現状と展望を押さえておきましょう。

日本企業のデータ活用は少しずつ進展しています。
前述のガートナージャパンの調査は複数年行われており、「全社的に十分な成果を得ている」という回答の割合は2023年11月の 3% から5ポイント増加しています。また、「全社的」または「一部の部門で何らかの成果を得ている」企業は 89% に達しており、データ活用への取り組み自体は確実に進んでいるといえます。
一方、過去のデータに目を向けると2020年3月時点で大企業の9割、中小企業の半数以上が顧客データ、POSデータ、アクセスログなどのデータを「経営企画・組織改革」、「製品・サービスの企画、開発」、「マーケティング」などの領域ですでに活用していると回答していました(『令和2年版情報通信白書┃総務省』)。
そして、ウイングアーク1st株式会社が2022年10月に行った調査では、自社のデータ活用レベルについて、11.2%が「まったく行っていない」、13.2%が「わからない/答えられない」と回答しています。
ここで重要なのが「データ活用」という言葉の定義ですが、ガートナージャパン株式会社の調査における「成果を得ている」は、単なる「活用」から一歩進んだ「成果の評価」に言及している点に注目したいところです。
2024年11月時点で、89%の企業がデータ活用により何らかの成果を得ており、「成果の評価は時期尚早」とする企業は1%に過ぎません。自社が「成果の評価」フェーズに達しているかどうかは、自社のデータ活用の進展状況を測る基準ラインの一つとなったのではないでしょうか。
ガートナージャパンの調査では、データ活用の取り組みにおいて課題となっている要素についても調査が行われています。
その結果、課題のトップ3を占めたのは以下の3つの要因でした。
1.「スキルの不足」(28.3%)
2.「現場の理解や協力の獲得」(20.8%)
3.「業務への適用」(20.3%)
日本企業のIT人材不足が深刻であることは長年叫ばれており、その一つの象徴が「2025年の崖(日本企業が古い情報システムを更新しきれないことで、2025年以降に生じる問題の総称)」の存在でした。
そこでは2025年までにIT人材の不足は約49万人にまで広がり、2030年には最大で約79万人規模にまで達すると予測されていました。実際、IT人材の不足感は急速に高まっており、『DX動向2024┃IPA』では、DX人材が「大幅に不足している」と回答した企業の割合が、62.1%と2023年度に初めて過半数を超えたことが報告されています。
現場の理解や協力を得るためには、基礎的なITリテラシーの普及やITへの苦手意識払しょくが不可欠であり、そのために、リスキリングの推奨やデジタルスキル標準の策定、データの民主化(社内のデータにだれでもアクセスし活用できる環境と整えること)などの取り組みが行われています。
また、大きく進展する生成AIサービスが活用できる環境を設けることもそのための大きな助けとなると考えられます。2023年9月時点のBlackBerry Japan 株式会社の調査では、日本の組織の72%が職場でのChatGPTやその他の生成AIアプリケーションの禁止を実施、あるいは検討しているというデータが紹介されました。しかし、ハルシネーションや情報漏えいにはしっかりと対策しつつ、それらを活用できる環境を整えることはスキル不足の解消、現場の理解獲得、業務への適用のいずれにおいても大きくプラスに働くはずです。
ガートナージャパン株式会社が2025年2月21日に発表したニュースリリースによると、90%以上のデータ/アナリティクス (D&A) リーダーはデータによって生み出す価値に最大の関心を向けているにもかかわらず、その成果指標を定義、追跡、共有している企業は全体の22%に過ぎません。
‟自社が「成果の評価」フェーズに達しているかどうか”が企業のデータ活用において達成すべき基準ラインとなったことについてはすでに先述しましたが、その指標の定義や評価に関してはまだまだ苦労している企業が多いのが実情のようです。
データ活用のKGI/KPIは企業の事業内容や実際の施策、設定される目的などに応じて異なりますが、代表例としては下記のようなものが挙げられます。
・ROI(投資対効果):データ活用プロジェクトの費用対効果
・ダッシュボード・レポート閲覧回数:BIツールやダッシュボードの利用頻度
・コンバージョン率(CVR):データ分析による施策改善後のCVR変化
・作業時間削減率:データ活用による業務自動化・効率化の効果
・データリテラシー研修受講率:従業員のデータ活用スキル向上状況
SMARTの法則なども生かしながら、まずは具体的な目標設定に取り組みましょう!
効果的なKGI/KPIを設定するために活用される目標設定のフレームワーク。以下の5つの要素の頭文字で構成されています。
| 項目 | 説明 | 例(データ活用におけるKPI) |
| S(Specific) | 具体的で明確な目標を設定する | 「データ分析を活用して在庫コストを削減する」ではなく、「需給予測モデルの精度を85%以上に向上させ、在庫コストを15%削減する」 |
| M(Measurable) | 測定可能な指標を含める | 「データ活用を強化する」ではなく、「BIツールの利用率を80%以上にする」 |
| A(Achievable) | 達成可能な目標である | 「全社データ活用率を100%にする」ではなく、「全社のデータ活用率を1年間で50%→80%に向上」 |
| R(Relevant) | 目的やビジネスゴールに関連している | 「AIを導入する」ではなく、「AIを活用し、営業の成約率を20%向上させる」 |
| T(Time-bound) | 期限を設定し、達成時期を明確にする | 「不良率を3%削減する」ではなく、「半年以内に不良率を3%削減する」 |
2025年のデータ活用の現状を示すデータと、そこで「成果」を得るために抑えるべき知識について簡単にまとめてご紹介しました。「全社的に十分な成果を得ている」と自信をもって断言できる企業はまだまだ少ないものの、すでに多くの企業でデータ活用は進められています。そこから一歩先に進むため、‟的確な成果を定義し、評価に進む”ことに取り組んでいきましょう。
(宮田文机)
・Gartner、日本企業のデータ活用に関する最新の調査結果を発表:全社的に十分な成果を得ている組織の割合は8%┃Gartner
・令和2年版情報通信白書┃総務省
・DX動向2024┃IPA
・BlackBerry独自調査、日本の組織の72%が、業務用デバイス上でのChatGPTおよび生成AIアプリケーションの使用を禁止する方針であることが明らかに┃PRTIMES
・Gartner、世界のデータ/アナリティクスのリーダーを対象にした最新の調査結果を発表:CDAOの3分の1がデータ、アナリティクス、AIの影響を測定することを最大の課題に┃Gartner
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