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今後普及するといわれている「デジタルID」とは?マイナンバーとの違う? メリット・懸念点は?

         

総務省により、2023年10月22日時点で日本の住基人口に対するマイナンバー申請受付数(累計)は約78.5%、保有枚数は約72.5%発表されています。マイナンバーのようなデジタルIDの利活用の範囲は今後大きく広がり、社会インフラとして有効活用の道が模索されていくことが想定されています。

そこで今のうちに改めて理解しておきたいのがそもそもデジタルIDとは、マイナンバーとの違い、リスクや懸念点などです。

本記事では、デジタルIDについて知っておくべき基礎知識について、解説いたします。

「デジタルID」とは? マイナンバーとは何が違うのか

「デジタルID」とは、‟あなたがあなたであることを証明するためのデジタルデータ”です。デジタルIDは以下の3つの要素を備えており、冒頭で言及したマイナンバーもその一種にあたります。

・IDを一意に識別するための「識別子(identifiers)」
・IDの正当性を示す「認証情報・クレデンシャル(Credentials)」
・IDに紐づいた「属性情報(Attributes)」

従来、私たちの身分証明に用いられていたのは運転免許証やパスポート、戸籍謄本、住民票、保険証などの物理的IDでした。しかし、いずれも万能ではなく取得に手続きや手数料が必要、紛失の恐れがある、必要な情報だけを公開するといった自由な運用が難しい、などの不便さを皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか。

その不便さを解消すべく、生体認証やICチップ、暗号化等の技術を用いた、より便利でより自由度・セキュリティ性の高い個人認証や身分証明を可能にするために各国や企業が「デジタルID」の普及促進・活用が始まろうとしています。

デジタルIDの普及はどう社会を変えるのか

デジタルIDの導入によって社会に対し、具体的にどんなメリットがもたらされるのかをみていきましょう。

行政手続きや民間サービスの利用に必要な手続きを簡素化する

これまで人によってバラバラでフォーマットも統一されていなかった身分証明を、デジタルIDにまとめることで、証明書の取得や給付金の申請といった手続きが簡素化され、またオンラインで行うことも容易になります。実際、マイナンバーカードを用いてコンビニで住民票の写しを発行したり、健康保険証として利用することで高額療養費制度の適用を自動化したりといった運用はすでに行われています。

デジタル先進国として知られるエストニアでは、デジタルIDを基盤に税務申告やオンラインバンキング、保護者と学校の情報共有などを行う体制が確立されており、デジタルIDアプリ「Smart-ID」は毎日使われるほど国民の生活に根差しているといいます。

なりすましによる不正や脱税、マネーロンダリングなどの防止につながる

デジタルIDと口座や金融サービスのアカウントを結びつけることで、個人の所得や給付金の受け取り状況を把握しやすくなります。その結果、なりすましによる年金や補助金の不正受給や所得隠し、不正な手段で手に入れた金銭の預金・引き出しなどの対策につながるというわけです。

よりきめ細かく素早い福祉プログラムの実行が可能になる

個人の所得を正確に把握できるということは不正の防止だけでなく、補助金や社会福祉の対象となる人物への手厚くスピード感のあるサポートにもつながります。インドではデジタルID「アドハー(Aadhaar)」の導入により低所得者への支援が大きく進展し、任意にもかかわらず2020年1月時点ですでに全国民の90%が同IDを取得していたといいます。

デジタルIDの懸念点は? 監視社会にならない?

デジタルIDにはもちろんメリットだけでなく、対策しなければならないリスクもあります。そのなかでも代表的なのが以下の2点でしょう。

・セキュリティ・誤登録のリスク
・プライバシー権の侵害・監視社会化のリスク

実際、マイナンバーと保険証の一体化において他人の情報が誤登録されるミスや、不正アクセスや人的ミスによるマイナンバー情報の流出はすでに数多く生じています。「分散管理」等の仕組みによりマイナンバーの流出によりまとめて情報が漏れたりしないよう対策は施されていますが、利便性とセキュリティ性のバランスを探る手をゆるめてはなりません。ただし、生体認証やブロックチェーン、多要素認証などデジタルIDのセキュリティ性を高める技術が発展していることも押さえておきたいところです。

また、国民総背番号制度、住基ネット、マイナンバーカードと個人をIDで識別しようという政府の動きはこれまで何度もあり、そのたびに「プライバシー権の侵害ではないか」「国が国民を監視する社会につながらないか」という疑義が呈されてきました。

いかに個人が自身にまつわる情報を守る権利を保証しながら、デジタルIDによって利便性を確立するのかは今も日本を含め各国で議論されている途上にあります。

終わりに

2016年1月からスタートしたマイナンバー制度はなかなか普及・浸透しないことが指摘されてきましたが、2度のマイナポイント付与などの施策が実行され、保有している人の方が多くなりました。ここから我々の生活により広く深く、デジタルIDは浸透してくるでしょう。いよいよ本腰をいれて、デジタルIDを基盤とした社会で自分はどんなスタンスを取るのかを考えていきましょう。

(テキスト:宮田文机)

 

参照元

【参考資料】
・デジタル時代の社会基盤「デジタルID」┃日本総研 ・第5回インフラ海外展開懇談会 日本で唯一の次世代デジタルIDアプリ「xID」┃経済産業省 ・マイナンバーカード交付状況について┃総務省 ・長倉 克枝『「入り口」はマイナンバーカードとJPKI、先進的な前橋市デジタルIDは普及するか』┃日経XTECH ・デジタルで利便性を広げる取組┃デジタル庁 ・マイナンバーカードの健康保険証利用について┃厚生労働省

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