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約15人に1人が体外受精児。多様化する妊娠・出産・育児の今をデータで観察!

         

晩婚化が進み、不妊治療に取り組む人が増えた結果、体外受精や養子縁組など妊娠・出産や育児に様々な選択肢が生まれています。

また、同性婚などについて議論が進む中、こうした選択肢の需要はますます高まり、家族の形が多様化していくことが予想されています。

そこで今回は、意外と知らない妊娠・出産・育児の今をデータで見ていきます。

少子化の要因の一つである晩婚化

1990年代以降、少子化が進む日本では、2016年には出生数が100万人を切りました。さらに2019年には90万人を下回り、その衝撃は「86万ショック」と表され、深刻な社会問題となっています。

この原因の一つに晩婚化が挙げられます。平均初婚年齢の1900年代初頭からの推移を表したグラフが以下になります。

出典:平均初婚年齢の推移: 子ども・子育て本部 – 内閣府、婚姻率 – 内閣府

第二次ベビーブームの1970年代には男女ともに平均初婚年齢は20代半ば頃となっていますが、2010年代に入ると男性は31歳前後女性は29歳前後が平均初婚年齢となります。

これだけ見るとおおよそ5歳程度の差しかない、と感じますが、健康な女性が一度で妊娠できる確率は30歳から35歳から半減すると言われており、この5年の差が大きな壁になりうるのです。

不妊治療が一般的になり、体外受精児は急増、治療方法別の出生数は?

技術が発達し、晩婚化が進む中、加齢をはじめ様々な要因で不妊治療に取り組む夫婦が増え、体外受精児の出生件数は年々増加する傾向にあります。

1985年以降の体外受精による出生数をグラフにしたのが以下になります。

出典:ARTデータ集 – Umin

1978年7月にイギリスで世界初の体外受精児が出産されたことを皮切りに1983年には日本でも体外受精の認可がおり、1985年には27人の体外受精児が誕生しました。

その後、2018年には体外受精児の出生数は56,979人にまで増加し、実に15人に1人が体外受精児となっているのです。

手法

説明とメリット・デメリット

IVF(in vitro fertilization)

体外受精が認可された1985年当時から使われている体外受精方法。シャーレに入れた培養液中で運動精子と卵子を受精させます。受精が確認できたら、培養液中で受精卵を育成し、分割が進んだら受精卵を子宮に戻します。

一度の排卵で体外受精を完了できるため、待つ時間が短く、また一度の治療の場合、費用も比較的安く済む、というメリットがありますが、凍結胚移植と比較して卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症や子宮外妊娠など異所性妊娠の発症のリスクが高くなる傾向があるそうです。

ICSI(顕微授精)

顕微鏡を用い卵子に細い針で直接精子を注入する方法です。精子の数が少ない場合(高度乏精子症)や運動能力が低い場合(精子無力症)、また卵子を包む透明帯が硬い場合など、様々な理由で受精障害が生じている際に使われます。

一般的にはIVFより一歩踏み込んだ治療とされ、値段も高くなる場合が多くなっています。

凍結胚移植

シャーレに入れた培養液中で運動精子と卵子を受精させ、その受精卵を凍結保存する方法です。複数の受精卵を一度に凍結できるため、複数回体外受精を試みる場合は費用が安く抑えられます。

保存後は、患者のタイミングに合わせ、冷凍した受精卵を解凍し、子宮に戻します。

IVFと比較して、子宮に戻すタイミングが少し遅くなること(2周期以上)、また、凍結により受精卵が変性する場合がごく稀にあることなどデメリットがあります。しかし、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)発症や子宮外妊娠など異所性妊娠の発症のリスクが少なく、生児獲得率も高くなっているため、現在では多くの患者がこの手法をとるようになり、体外受精児のうち85%以上が凍結胚移植により誕生しています。

出典:浅田レディース勝川クリニック公式HP、日本受精着床学会、はなおかIVFクリニック品川公式HP、幸町IVFクリニック公式HP

このように体外受精をはじめとした不妊治療が一般的になる一方で医療保険が効かないため、高額な治療費に悩む人も少なくありません。

晩婚化、少子化が進む中、子どもを欲しいと感じている人々をどのようにサポートするかは今後とも大きな課題になると考えられます。

増える特別養子縁組の数

不妊に悩む人が増える中で、特別養子縁組、という選択をする人も増えています。特別養子縁組は養子となる子どもの実親(生みの親)との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度です。

2000年代には300件前後だった特別養子縁組ですが、2010年代には、500件前後まで増加しています。

出典:特別養子縁組の成立件数

さらに2020年4月には原則6歳未満とされていた年齢制限が原則15歳未満に拡大されるなど特別養子縁組の対象が拡大されました。

産みの親のもとで育つことができない子どもたちが約45,000人いると言われている中で、今後、特別養子縁組はますます広がっていくのではないでしょうか。

同性婚の議論が進む中、体外受精や特別養子縁組への考え方も再考する必要がある

近年では、同性婚についての議論が進みつつあります。そうした中で、体外受精や特別養子縁組などの選択肢はより多様な家庭を創出できる方法の一つになります。

一方で不妊治療や特別養子縁組を活用できるのは、夫婦に限定されており、今後、どのように法整備をしていくか、は非常に重要な論点になっていくと考えられます。

子どもを育てたいと考える人たちをサポートしていく、ということは少子化を改善する一つの道となりえます。だからこそ、社会全体で妊娠・出産・育児の多様性を考えていく必要があるのではないでしょうか?

【参考URL】
・凍結胚移植vs.新鮮胚移植 | 幸町IVFクリニック 
・ARTデータ集 - Umin 
・日本における体外受精の導入過程の歴史分析 
・【独自】15人に1人「体外受精児」…18年、5万6979人で過去最多 
・不妊治療の用語集 は行/媒精(ばいせい) 
・Q8. 顕微授精法(ICSI)について教えてください。 
・標準体外受精(IVF)|はなおかIVFクリニック品川 
・婚姻率 - 内閣府 
・5 平均初婚年齢の推移: 子ども・子育て本部 - 内閣府 
・30歳が1カ月で妊娠できる確率は20%、40歳で5% 
・特別養子縁組の成立件数 
・養子縁組と里親制度の違い | 日本財団 

(大藤ヨシヲ)

 

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