About us データのじかんとは?
IT業界にいる人もいない人も、次のような会話を耳にしたことはありませんか?
“この間のエバンジェリストのレクチャー、すごかったよ…”
“うちのエバンジェリスト、◯◯社にヘッドハンティングされたんだって!”
昨今では、「エバンジェリストになりたい」と発言する若い人に遭遇することもしばしばありますが、この文脈の「エバンジェリスト」が何を指すのか、ご存知でしょうか?
エ…ヱヴァンゲリヲン?? ふた昔前のカルトアニメを思い浮かべたあなた、筆者と同世代です。(同時期のSFアニメなら当方『カウボーイビバップ』派です)
何やら壮大なイメージのこの名称。まったく何のことか分からない人、聞いたことはあっても詳細は知らない人、皆さんに向けて解説していきます。
エバンジェリストは、キリスト教世界では「福音主義者」という意味です。16世紀初頭、ドイツの神学者ルターは自らを「エバンゲリスト(ドイツ語読み)」と呼び、腐敗と因習にまみれたカトリック教会に対抗して、「聖書を中心にキリストの教えに回帰しよう」と唱えました。これがいわゆる宗教改革です。
こうした経緯から、特にプロテスタント教会では「エバンジェリスト=キリストの教えの伝道者」とされます。これが転じて、IT業界において製品や技術について一般向けに説明する啓蒙担当者を「エバンジェリスト」と呼ぶことになったそうです。
1984年にMacintoshを発表したAppleは、個人用パソコンの意義やその技術を宣伝するため、テクニカル・エバンジェリストというポストを新設。マイクロソフトがすぐにそれに続き、IT業界の2頭のこの動きは一躍「エバンジェリスト」という肩書の認知度を高めました。
ちなみにAppleの最初のエバンジェリストはガイ・カワサキ(Guy Kawasaki)氏という日系アメリカ人で、初代Macintoshの啓蒙活動をするという大役を成し遂げた後、3年という短期間でAppleを去っています。
このように、IT業界におけるエバンジェリストという肩書は、それほど長くないIT業界の歴史の中では意外にも古いのです。しかし一般に募集されるポストとして広まり出したのは、ITスタートアップが雨後のタケノコのように増えだした2000年以降と言えるでしょう。
展示会やユーザー・ベンダー向けの商品紹介イベントなど、不特定多数をターゲットにしたプレゼンテーションは、エバンジェリストの業務の肝。高度に技術的な話題を分かりやすく説明することで、対象製品のユーザー、ベンダーへの浸透を図ります。
同じ企業の社員でも、部門が違うと製品の詳細までは知らなかったりするもの。自社の新製品や新サービスの情報、ブランドイメージなどを社員に説明するのも、エバンジェリストの大事な業務のひとつ。いわゆるインナーマーケティングに当たります。
自社の新製品やサービスを導入した企業や、導入を検討中の企業に、使用方法や意義などを説明する業務です。説明対象に合わせて内容をカスタマイズする必要があります。
こうして見るとエバンジェリストは、営業と広報の中間的存在と言えるかもしれません。特定の顧客候補に製品を売り込む営業とは違い、エバンジェリストは不特定多数を相手に製品を紹介します。一方、マスメディアを介して更なる不特定多数に情報を発信する広報と比べると、顔の見えるやりとりをしているためです。
それはもっともな感覚です。というのも本来のエバンジェリストは、原義である宗教の伝道者たちがそうであるように、人々を否応なく惹きつけるカリスマ性を備えているべきだからです。
例えばApple社にはエバンジェリストのポスト導入以前から、スティーブ・ジョブスという偉大なブランド・エバンジェリストがいました。ジョブスのビジネスやデザイン、人生哲学は世界を席巻、今でも人々は彼に心酔し、打ちひしがれ、それゆえに高額でも、互換性のないソフトウェアがチラホラあってもApple製品を買い求めます。
エバンジェリストという単語が浸透した今、エバンジェリストになるならジョブスクラスのカリスマ性がないと肩書負け…というのは、少々厳しすぎる基準でしょうか。
参考記事: エバンジェリストとは? 意味、役割、活動、必要性、能力について【エバンジェリストの育て方】 日本の人事部 エバンジェリスト
(佐藤ちひろ)
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