前回は、ペーパーレスのメリット・デメリットについて迫りました。今回は製紙産業のデータなどから、企業のペーパーレス化の現状を探ってみようと思います。
日本製紙連合会によれば、紙・板紙の国内需要は、2008年まで3000万トン台で推移していましたが、リーマン・ショック後の2009年に大きく数量を落とし、逓減しています。生産量の推移に関しても同様の傾向です。
特に紙については、ICT化の進展や消費者の消費構造の変化などによって、新聞用紙や印刷・情報用紙(コピー用紙やインクジェット用紙など)が減少傾向で推移しています。
日本製紙連合会Webサイトより
一方、同連合会の「2016 (平成28)年紙・板紙内需試算報告」によれば、情報用紙の国内需要は、2013年に183.9万トン、14年には183.1万トン、そして15年に181.2万トンとなっています。わずかに減少で推移していますが、これは紙の使用を増やさずに事業を継続している各企業の努力の成果とも言えます。
日本製紙連合会「2016 (平成28)年紙・板紙内需試算報告」より
2003年にMIT Pressから発表された“The Myth of the Paperless Office(ペーパーレス・オフィスの神話)”という心理学の研究論文があります。この論文には、当時普及段階にあったEmailに関するエピソードが載っていました。
これによると、Emailを導入すると組織ごとに平均して40%も紙の消費量が増えたそうです。紙の持っている特性(薄い、軽い、曲げやすいなど)によって、私たちは紙を掴んだり携帯したり筆記用具で書き込んだりできます。このような紙の「アフォーダンス(環境が動物に対して与える「意味」のこと。Wikipedia参照)」に取って代わるIT機器は、いまだに登場していません。その結果、ペーパーレスを導入しても紙の利便性に勝つことができず、仮にペーパーレス化が実現しても、逆に効率を下げてしまうのです。IT機器が上記のような紙のアフォーダンスを持たない限り、紙がオフィスから消えることはないというのが、このペーパーレス・オフィスの神話なのです。
とはいえ、現在はタブレットなどの端末が普及し、タッチパネルを用いた簡易的な操作が可能です。紙ほどの利便性とは言えないまでも、2003年当時と比べればペーパーレスの敷居は下がっていると言えます。
会社でペーパーレス化を実現するには、目的を明確にすることです。ペーパーレス化はあくまでも「手段」であり、目的のないペーパーレス化プロジェクトは、「紙」というアフォーダンスを持つ強力なツールを手放すだけであり、業務効率化には繋がらないでしょう。
そこで、ペーパーレス化を取り入れる前に、ペーパーレスを導入することで「どんな課題が解決されるのか」「メリットは何か」などを組織内のメンバーに説明し理解を求める必要があります。紙を志向する従業員をいかにIT機器に移行させるか。これには明確な理由が必要となります。ここは総務・IT担当者の腕の見せ所となるでしょう。
ところで、ペーパーレス化を実現するためには、ペーパーレスに特化した会議システムを導入するという方法があります。主なサービスとしては、「SmartSession」や「WebコアConference」「moreNOTE」などがあります。データを保管するための「Dropbox Business」や「OneDrive for Business」などのオンラインストレージが必要になるでしょう。初めから社内のメンバー全員がツールを使いこなすことは難しいかもしれませんが、メンバー同士、協力しながらペーパーレス化を推進していきましょう。
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(安齋慎平)
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