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卸売業のKPIとは?KPI例とKPI(ロジック)ツリーを解説

         

卸売業で導入が進んでいるKPI(ロジック)ツリーとは?

卸売業では、従来から“コスト・生産性”、“品質・サービスレベル”、“物流・配送条件”の向上が経営指標の達成に結びつくという考え方が広く認識されています。

卸売業の場合、ある要素の向上が別の要素の低下を招く、相反する関係にある課題・問題は対コスト(設備投資・人件費)が大半を占めます。

そのため、小売業では費用対効果の高いKPIの抽出と実践が経営指標の達成の焦点になります。

ただ卸売業では人の観察や想像の範囲で対策可能な取組みに行き詰っており、競争に勝つための施策が見出せないことに多くの経営者は苛(さいな)まされています。

この流れは卸売業に限ったことではなく、様々な業界の共通の課題でもあります。

その打開策として注目が高まっているのが、データを活用したKPI(ロジック)ツリーとKPIマネジメントで、卸売の業務全体を「見える化」することで潜在する課題・問題、解決策・対策を明らかにしてくれます。

卸売業とは

卸売業は、商品流通の過程で、製造(製品)・収穫(生鮮食品)と小売との間に位置し、メーカー(製品)・市場(食材)から商品を大量に安く買い付け、少量購入を希望する小売店に利鞘(りざや)を乗せて販売する事で利益を得ています。

そのため、利益は小売業への販売量×利鞘−物流コストという構造で成り立っており、経営指標を向上させるには、

  • ●小売業への販売量の増加
  • ●販売先である小売業者の拡大
  • ●小売業者への適切な販売価格での提供
  • ●メーカー、生産者との価格交渉
  • ●物流・配送コストの抑制

を多くの卸売業ではKPIの要素にし、その向上に取り組んでいます。

また卸売業は消費者にとって購入価格を押し上げる存在であり、ITによる販売手段の多角化と消費者の販売情報の入手容易化の影響により、卸売業者を介さない経路で入手する流れが強まっているため、あらゆるプロセスの最適化が必要に迫られています。

近年では帳票・受発注、在庫管理といったシステムやセンシング技術・IoT・ICT、AIといったデジタル技術の発達と導入により、物流の様々な作業でデータが取得・蓄積できるようになりました。

最新のデジタル技術で取得したデータの活用によって、卸売業は

  • ●小売業へのより質の高いサービスの提供
  • ●さらなるリードタイム、および物流コストの削減
  • ●より効率的な買い付け、適切な在庫管理

といった効果をKPIロジックツリーとマネジメントを導入する事で得ています。

KPI(ロジック)ツリーとは

ロジックツリーとは、問題をツリー状に分解し、その原因や解決策を論理的に探すためのフレームワークのことです。

問題を頂点とし、原因や解決策で分解し、それらを線で結んだ図が“木”に見えるため、”論理の木“とも呼ばれています。

KPIツリーは、もともと問題解決プロセスであるロジックツリーから派生したものです。

問題をKGI(Key Goal Indicator/経営目標達成指標)に、原因や解決策をKPI(Key Performance Indicat/重要業績評価指標)やそのKPIを達成するためのより細かいKPIに置き換えます。

KPIはKGIの中間目標に位置付けられ、それに紐づいた日々のアクションの実践の進捗を示します。

そのため、KPIツリーでは、他のロジックツリーと異なり、各要素の数値化を前提としています。

この各KPIの数値を進捗として、タイムリーに確認することで、KGIの達成に向けた企業の動きが管理しやすくなります。

卸売業でKPI(ロジック)ツリーが注目されている理由

卸売業では、利益、流通効率向上の基本を

  • ●コスト・生産性
  • ●品質・サービスレベル
  • ●物流・配送条件

としています。

コスト・生産性は、メーカー・収穫者から小売業へ渡るまでの単位販売あたりの費用、単位時間あたりの販売数を指標とします。

品質、サービスレベルは、誤配送、輸送中の荷物事故、納入遅れなど小売業側に損失を被ったことを発生率で示します。

小売業側で在庫を抱えなくなった昨今においては、納期の短さも重要で、これらの実現には精度の高い在庫管理が求められます。

物流・配送条件は、商品を移動させる際の条件の事で物流倉庫の容量・立地、小売業者への配送地域・ルートなどによる負担やリードタイムの増加要素などを指します。

卸売業の場合、相反する関係で成立するKPIが製造業ほど多くはありません。

そのかわり、業務範囲が広いため、ひとつのKPI向上で相乗的な効果を得る事が期待できません。

卸売業の場合、広範囲な業務に対し、網羅的にKPIを設定し、「塵も積もれば山となる」といったスタンスで取組む必要があります。

そこで卸売業で導入が進んでいるのが、KPIツリーとKPIマネジメントによる課題・問題の探索・解決プロセスです。

昨今では、センシング技術、IoT、AI、そしてこれらを連携するシステムにより、卸売業の様々なプロセスのデータが収集できるようになりました。

最先端の卸売業の現場では、収集したデータを適切に分析し、BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールで「見える化」することで、より深部に潜伏する問題・課題を捉えてくれます。

 

卸売業で活用されている主なKPI

卸売業では物流向けに国土交通省で定義されたものから、自社の風土・文化に合わせて独自に考案したものまで、様々なKPIが活用されています。

国土交通省は、「物流業者におけるKPI導入の手引き」といった資料を公開しています。

KPIの必要性から導入のステップまでを解説しており、以下をKPIにすることを推奨しています。

評価の視点 概要 利用される指標例
財務 物流事業者の財務的側面を評価 拠点別、車輌別、あるいは日次等の売上高、利益率等
コスト・生産性 オペレーションで発生するコストと、コストの重要な決定要素となる生産性を評価 庫内業務における人時生産性、輸送業務における積載効率等(物流コストの総額、ケース当たり、重量当たり等)
品質・サービスレベル オペレーションの精度等の品質・サービスレベルを評価 誤出荷率、汚損・破損率、遅配・時間指定違反率等
物流条件・配送条件 物流効率を左右する、物流条件・配送条件を評価 配送頻度、ロットサイズ、時間指定率、待機時間等
環境 物流に起因する環境負荷を評価 温室効果ガス排出量・エネルギー消費量等の環境指標(重量当たり、トンキロ当たりの削減率等)等
安全・リスク対策等 物流における安全・リスク対策の側面を評価 輸送業務における交通事故等の発生率(走行距離当たり等)、庫内業務における度数率・強度率等
物流サービスの安定供給 トラックドライバー不足等を踏まえ、サービス供給の安定性を評価 離職率・求人倍率等
人材・学習 物流業に従事する人材の視点から業務内容や職場環境等を評価 従業員満足度や教育受講者数等の教育関連指標等
技術・革新性 改善能力といった技術力・革新性を評価 改善提案件数等

※引用元「物流事業者におけるKPI導入の手引き(案)」:001085357.pdf (mlit.go.jp)

なお卸売業では、物流だけでなく、営業・バックオフィス部門と一体で経営している企業も多く、引合い件数、帳票業務、労務状況などのKPIで経営指標の増強も定量的に計っています。

また卸売業では、小売業者のサービス満足度を最優先としており、取引先との関係で培った独自のノウハウをKPIに設定することで競合他社との差別化にもつなげています。

その他に、卸売業の中では、従業員の安全、働きやすさの向上を目指している企業も多く、そのような企業では、事故発生件数や健康経営の指標などもKPIに設定しています。

 

卸売業のKPI(ロジック)ツリーの作り方

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