2011年に出版された『The Lean Startup』はアメリカでベストセラーとなりました。日本でも2012年に翻訳版が発売されているので、読んだことのある人も多いのではないかと思います。
今回の記事では、「リーン」という単語の意味から「アジャイル」との違いまで基本的なところを解説します。
リーン(lean)とは、「痩せた」「脂肪のない」といった意味があります。1980年代にアメリカ・マサチューセッツ工科大学で研究されたトヨタ生産方式をもとに、「リーン生産方式」もしくは「リーン開発」として提唱されました。
このリーン生産方式から派生したのが、「リーン・スタートアップ」です。これは、アメリカの起業家であるエリック・リース(Eric Ries)氏が生み出した起業の手法論になります。ある時、彼が起業に至るまでの過程をまとめている際に、それがトヨタ生産方式と似ている部分があったことに気づきました。そこで、リーン・スタートアップという名称を付けたと言われています。
リーン・スタートアップは、新たな事業を小さく始めて成功するか否かを早期に見極めます。そして、結果が出そうにない場合は、製品を改良したり事業内容を変えたりして軌道修正を行っていきます。
次にリーン・スタートアップとアジャイル開発の関連性について説明していきます。
リーン・スタートアップは、まず仮説を立て、製品を作り、ユーザに使ってもらいながら検証を繰り返します。対する、アジャイル開発にはわかりやすいのか、そうでないのか判断が難しいマニフェストも存在するのですが、読んでもいまいちピンとこないかもしれませんので、詳しく説明します。アジャイル開発は、最初から製品を実装し、リリースしてから検証を行う方法です。平たく言うと、常に改善を続けていく、ということです。
以下のサイトがわかりやすかったので引用します。
リーン・スタートアップのコンセプトは「顧客開発」と言われており、顧客や市場の開発を通じて、構築・計測・学習を繰り返し、”どのくらい売れたか”を重視します。一方、アジャイルは「製品開発」を軸にしており、開発・設計・要求を繰り返しながら、”どれだけ進んだか”を念頭に置いています。
リーン・スタートアップとアジャイルの関連性とは? _ Battery(バッテリー)新規事業・イノベーション共創メディア
どちらも「不確実性」のあるところから製品を開発するという点が共通していますが、両者を比較すると重視するポイント(「どのくらい売れたか」と「どれだけ進んだか」)が異なっています。
また、前者が市場からのフィードバックをもとに何度もスクラップ&ビルドを行う一方、後者は「イテレーション」と呼ばれる小さなサイクルを回して短期間で小さな機能を追加的に開発し、製品の完成を目指すという流れです。アジャイル開発について詳しく読みたい方はこちらの記事の鉄の三角形の話がとてもわかりやすいです。
リーン・スタートアップは、基本的には資金もなく成功・不成功が経営に直接的な影響を与えるベンチャー企業の手法です(正確には、スタートアップとベンチャー企業は異なります。スタートアップ企業は、ベンチャー企業の中でも特に「新しいビジネスを短期間で成長させる」という意味合いが強いです)。
資金が潤沢にあり、失敗してもリカバリできる大企業では、この手法はあまり意味を成しません。むしろ大企業の場合、中途半端な製品をリリースしてしまうとイメージダウンにつながりますし、ユーザが離れてしまう可能性もあるのです。
一方、大企業でもリーン・スタートアップの手法を取っているところもあります。例えば、ゲームのβ版などです。これは、実際にユーザに利用してもらい、そのフィードバックを開発に活かすという形になります。特にゲームなどは、システムや操作性によって面白さが変化するため、いきなり完成品をリリースするのはリスクが高く、β版のように一度ユーザに試してもらってフィードバックをもらったほうが、むしろ成功につながるのです。
リーン・スタートアップは、「とにかくやってみよう」というものではないことに注意が必要。あくまでもプロセスのマネジメント手法であり、「仮説構築→実験→学び→意思決定」のプロセスに沿って進めていくことが肝要です。
情熱ももちろん大切ですが、それだけでは失敗に終わる可能性も高いということを忘れてはいけません!
(安齋慎平)
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