
まずは、まずは、万博協会が公開した10月7日開催の「臨時理事会会議」の資料を見ていこう。この資料では、4月13日~9月30日までの万博の満足度に関するアンケート調査の結果が確認できる。それによると、「万博を家族や友人にすすめたい(そう思う・ややそう思う)」と答えた来場者の割合は約70%であった。続けて、「万博にまた来場したい」は約75%、「万博に総合的に満足した」は約74%であった。
それでは、来場者が満足した要因は何だろうか。資料では、データではなく、来場者からの文書回答を載せている。まず、満足したポイントは「大屋根リング、パビリオン、スタッフ、イベント・ショー、会場全体」であった。
このうち、パビリオンでは、「各国の文化や先端技術に触れ、多様な体験ができて感動した」という声が寄せられている。また、「会場全体のワクワク感」「未来に希望が持てる展示の多さ」「多くの愉しみや刺激をもらえる」といったメッセージが並ぶ。
次に10月17日に大阪商工会議所が発表した「大阪・関西万博に関する会員企業アンケート」の結果(速報値)を見ていく。こちらの調査期間は、10月1日~13日である。
まず、「現時点で、万博は地域にとって成功だったと思いますか」という問いに対し、約92%の企業が「成功だった」と回答した。
次に、成功だった理由の要因を尋ねたところ、「大阪・関西の認知度が高まった」が74.0%、続いて「世界の国々への関心が高まり、国際交流が拡大した」が56.7%だった。他の要因は、30%台以下だけに、上記の2点が際立っている。
他に興味深い項目として、「万博レガシーと今後への期待」を挙げておこう。これは、文書回答となり、「魅力価値ある人的交流に期待」、「中小企業や個人事業者にとっても継続的な参加機会が得られる仕組みがあれば、地域の発展にさらに貢献できる」といったメッセージが見られる。
ここまで、アンケート結果をまとめると、万博の来場者、企業の大半は万博に満足、好意的な姿勢を示した。また、万博の良かった点に関して、「未来」「会場でのワクワク」「刺激」「国際交流」「人的交流」といったキーワードに集約できるだろう。いずれにせよ、リアルな体験が万博満足度を上げた主要因と結論づけていい。
私は万博終了日の翌日、10月14日に別件で夢洲を訪れた。大阪メトロ中央線夢洲駅では、片づけに携わる万博スタッフの他に、万博を懐かしむ「万博ロス」な人々を見かけた。駅構内のスクリーンに万博の公式キャラクター「ミャクミャク」が映し出されると、多くの人がスマホで撮影していた。もちろん、東ゲートやゲートの先にある大屋根リングの撮影に励む人も多くいた。
※写真:筆者撮影(夢洲駅構内にあるミャクミャクの映像を撮影する姿を見かけた)
10月18日は、大阪市内にある靭公園で開催された国際系イベント「世界横丁」に参加した。主催者はdemo! expo、後援は大阪市西区役所であった。
demo! expoは、万博を盛り上げる仕組みを作るチームとして、2021年に結成された。以降、断続的に万博を盛り上げるためのイベントを主催してきた。今回開催された「世界横丁」はアフター万博第一イベントとのこと。これからも、万博後のイベントを開催するのだろう。
※写真:筆者撮影(本町駅出入口から靭公園まで長い列が見られた)
さて、会場となった靭公園の最寄駅は大阪メトロ本町駅だ。本町駅28番出口から靭公園までは徒歩5分程度だ。駅出入口から靭公園まで、「世界横丁」へ向かう長い列ができていた。列は公園に向かって動いていたが、あまりの人の多さに驚く参加者の姿も。また、参加者の間では、万博の思い出話に花を咲かせていた。
※写真:筆者撮影(各ブースでは民芸品が販売されていた)
「世界横丁」はバザールが中心となり、後はフードとステージがあった。バザールとフードは各国別のブースで構成され、アフリカ諸国が多かった。また、ブースにいる外国人スタッフは、万博スタッフでもあり、万博の雰囲気を味わえる点が特徴だといえる。
私は万博のコモンズのように、海外から来たスタッフとの交流を期待した。しかし、あまりにも参加者が多く、交流は不可能だった。スタッフも、商品の販売に徹していたような気がする。
※写真:筆者撮影(ヨルダンの列は折り返し点から向こう側にも続いていた)
また、ブースの前には万博末期を思い起こすような、長蛇の列がつくられていた。公園ということもあり、キャパオーバーの感は否めなかった。また、列の並び方をめぐり、参加者同士の喧嘩が見られた。
※写真:筆者撮影(大盛況のうちに終わった世界横丁)
しかし、多少の混乱はあったが、参加者の大半は「世界横丁」をそれなりに楽しんでいたように感じる。なぜなら、万博のアンケート調査から察するに、参加者の目的は、万博のワクワク感、非日常的な雰囲気を味わうことにあるからだ。もちろん、「万博ロス」の埋め合わせも、イベント参加の理由のひとつといえる。「世界横丁」は限界はあれど、人々の需要には一応、応えた。いずれにせよ、万博で体験したワクワク感、非日常的な雰囲気を求める高い需要に驚いた。
大阪府内で、万博の海外パビリオンに類似した施設として、国立民俗学博物館(民博)が挙げられる。民博は人類学と民俗学をテーマにした世界最大級の民俗学博物館であり、エリア別に、民族衣装や楽器、言語など、世界のあらゆる文化が展示されている。
それでは、今後、民博に多くの人々は訪れるのだろうか。「多少は増えるが、大幅増とはならない」というのが、私の予想である。
万博のワクワク感・非日常性は、あくまでも海外の人々との交流、そして未来志向である。一方、アンケート調査を見る限り、民芸品の展示への関心は比較的低いように感じた。
民博は民博で、めずらしい産物が展示されていることから、学術的にはワクワクする。しかし、それは万博のワクワク感とは異なる。また、当然のことながら、少なくとも民博の常設展には、海外の人々はいない。つまり、「人」との交流はない。また、常設展では飲食はできない。
むろん、民博がすばらしい施設であることは否定しない。少しでも、万博を通じて、海外の文化に興味を持った方は、ぜひ民博に足を運んで欲しいくらいだ。
ところで、2005年の愛知万博閉幕後に、愛知県犬山市にある野外民族博物館「リトルワールド」の入館者数が大幅に増えた。リトルワールドも博物館という性格上、外国文化や住居を展示している。一方、世界各国の料理が楽しめ、様々な民族衣装が着られるなど、エンタメ的要素もある。そのため、民博とリトルワールドは異なる性格を持つ。
今までイベントや博物館を紹介したが、万博ロスを意識した国際系イベントでは以下の点が重要だと思われる。万博のようなワクワク感があること、海外の人との交流が楽しめること、未来志向であること、だ。いずれにせよ、機会があれば、今後も大阪で開催される国際系イベントに足を運び、考察を重ねていきたい。
(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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