おとぎ話の定型表現として「二人は結婚して末永く幸せに暮らしました」というのがあるように、結婚というと一般的には「幸せ」な印象があります。
それでは「結婚」は人々の人生を末永くしているのでしょうか?
今回は、寿命と結婚の関係をデータで観察していきます!
今回は厚生労働省が行った2018年の人口動態調査をもとに15歳以上の日本人の性別、婚姻関係別の死亡年齢についてデータを集めました。
まず、男女を区別せず婚姻関係別に5歳階級ごとに死亡者数をグラフにしたものが以下になります。
15歳以上の日本人の平均死亡年齢を求めると以下のようになりました。
有配偶 |
未婚 |
死別 |
離別 |
不詳 |
全体 |
|
平均死亡年齢 |
78.3 |
67.7 |
88.7 |
73.8 |
75.0 |
81.3 |
こうして見ると配偶者のいる人と比較し、未婚の人では平均死亡年齢が10歳以上低いことがわかります。また死別の場合の平均死亡年齢が非常に高いです。
また、配偶関係別に死亡者数の中央値(全体の人数のちょうど半分)となる年齢階級を見ると以下のようになります。
有配偶 |
未婚 |
死別 |
離別 |
不詳 |
総数 |
|
中央値となる年齢階級 |
80~84歳 |
65~69歳 |
90~94歳 |
75~79歳 |
75~79歳 |
80~84歳 |
ここで男女別に配偶関係別に平均死亡年齢を見ていきます。
男性の場合、全体のグラフと比較した場合に配偶者の死別後、亡くなる人の数が少ないのがわかります。一方で未婚、離別での死亡数のシェアが大きくなっています。
有配偶 |
未婚 |
死別 |
離別 |
不詳 |
総数 |
|
中央値となる年齢階級 |
80~84歳 |
65~69歳 |
85~89歳 |
70~74歳 |
70~74歳 |
80~84歳 |
死亡者数の中央値となる年齢階級も、配偶者がいる場合だと、「0~84歳」なのに対し、死別の場合だと「65~69歳」となっています。
有配偶 |
未婚 |
死別 |
離別 |
不詳 |
全体 |
|
平均死亡年齢 |
75.8 |
75.4 |
89.4 |
78.0 |
81.7 |
84.6 |
一方、女性では、90代前後に配偶者の死別後、亡くなる人の数の大きなピークがある事がわかります。未婚、離別での死亡数のシェアは全体と比較して小さくなっています。
有配偶 |
未婚 |
死別 |
離別 |
不詳 |
総数 |
|
中央値となる年齢階級 |
75~79歳 |
80~84歳 |
90~94歳 |
80~84歳 |
90~94歳 |
85~89歳 |
また中央値を見ると配偶者のいる女性の年齢階級が最も低い、ということがわかります。
ここまでの傾向を見ると、「配偶者のいる女性と未婚の男性は早く亡くなりやすい」のではないか、と考えられます。ではなぜこのような傾向になっているのでしょうか?
まず、「配偶者のいる女性は早く亡くなりやすい」ということについて考えてみましょう。
男性 |
女性 |
|
平均死亡年齢 |
78.2 |
84.6 |
男性 |
女性 |
|
中央値となる年齢階級 |
80~84歳 |
85~89歳 |
女性と比較し男性の方が5歳以上平均死亡年齢や中央値となる年齢階級が低いことを鑑みると男性の配偶者より先に亡くなる女性の平均年齢がグッと低くなるというのは妥当な結果と言えます。
つまり、基本的には女性のほとんどが同世代の男性より長生きし、平均寿命も女性の方が長いため、配偶者より早く亡くなる女性は女性全体と比較して死亡年齢が低い結果になりやすいのです。
配偶関係別に女性の死亡者数を100%積み上げグラフで表したグラフを作成したところ、女性の場合、60代以降でグンと死別のシェアが増え、その分だけ有配偶のシェアは減っています。
「未婚の男性は早く亡くなりやすい」について検証していきましょう。未婚の男性の平均死亡年齢は全体の平均よりじつに15歳以上年下なのです。
男性(未婚) |
男性(全体) |
|
平均死亡年齢 |
63.0 |
78.2 |
そして、未婚の女性も同様に平均死亡年齢が全体の平均より約10歳程度下回っているのです。
女性(未婚) |
男性(全体) |
|
平均死亡年齢 |
75.4 |
84.6 |
この背景には、若い世代において未婚率が高い、ということがあります。
晩婚化、結婚離れが進む中、婚姻率は約50年間で半分にまで下がり、平均結婚年齢も5歳程度高くなっています。つまり、死亡数に限らず、若い世代ほど未婚の人が多いため、全体的に平均が底下げされているのです。
一方、中央値となる年齢階級を見ると男女で大きな変化があることがわかります。
女性の場合は、未婚の場合も全体の平均から年齢階級が1段下がる程度の差しかありません。一方で男性で未婚の場合、中央値は3段階低い「65~69歳」の階級になっています。
したがって、未婚男性の死亡者の半分以上は70代未満である、と言えます。また、男性全体の平均死亡年齢より高い年齢の人は全体の10%程度に留まっています。
男性(未婚) |
男性 |
女性(未婚) |
女性 |
|
中央値となる年齢階級 |
65~69歳 |
80~84歳 |
80~84歳 |
85~89歳 |
女性の場合は中央値に大きな差がないのに、男性では中央値に大きな差がある、という傾向は離別でも確認できます。
男性(離別) |
男性 |
女性(離別) |
女性 |
|
中央値となる年齢階級 |
70~74歳 |
80~84歳 |
80~84歳 |
85~89歳 |
つまり、女性の場合は結婚や離婚を経ることは寿命に大きな影響を与えませんが、男性の場合、結婚や離婚歴の有無が寿命に影響を与えやすい傾向にあるのです。
類似の結果は、アメリカにおいて長寿の人の気質を調べるために行われた追跡調査でも出ています。この調査では、女性は結婚、離婚を経ても寿命に大きな変化はなかったそうですが、男性は結婚している場合は長寿に、離婚し、再婚をしなかった場合は短命になる傾向にあったそう。一方で生涯独身の男性の寿命は結婚している男性に次いで長いという結果が出たそうです。
配偶関係と死亡数をデータで見てみた結果、結婚は必ずしも幸せとは限りませんが人生を「末永く」しうるものである、ということがわかりました。
とはいえ、データはあくまで集団の平均値などを求めることができますが、個々人の人生が必ずしもそこに当てはまるわけではありません。データはあくまで参考程度に自分に合った幸せの形を模索していきたいですね!
【参考引用サイト】 ・ 婚姻率や離婚率の移り変わりの実情をさぐる(2020年公開版) ・ 2 婚姻・出産の状況 婚姻件数、婚姻率の推移 ・ 人口動態調査|厚生労働省 ・ 1500人を80年間追跡調査 米国研究資料「長寿と性格」(週刊現代) @gendai_biz
(大藤ヨシヲ)
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