新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴い、労働や教育など様々な現場で環境が大きく変動する中、メンタルケアをどのように行うかがこれまで以上に重視されるようになりました。
また対面でのカウンセリングなどが難しくなる中、遠隔で行うメンタルヘルスケアサービスの需要が急速に拡大しています。
そこで今回は、注目度が高まりつつあるメンタルヘルステックについて、最近の動向や実際の分野別のサービスなどをご紹介いたします。
メンタルヘルス、と一口に言ってもその症状はさまざま。インターネットのインフラ化やSNSの台頭で、精神疾病の認知が広がっていく中で、メンタルヘルスに問題を抱える人は年々増加する傾向にあります。
ここで、厚生労働省が発表している精神疾患による患者数の推移を見ていきましょう。
2002年には258万人だった患者数は2017年には1.6倍超の419万人まで増加。
疾病別で見てみると躁うつ病を含む気分(感情)障害やストレス関連障害の患者数が特に急増しています。
また2020年7月にLyra HealthとNational Alliance of Healthcare Purchaser Coalitionsが発表したメンタルヘルスに関する調査によると、アメリカの従業員の83%がメンタルヘルスの問題を抱えていることが明らかになったそうです。
世界各国でメンタルヘルスの問題が顕在化する中でテクノロジーを活用してメンタルヘルスの改善を支えよう、とするのがメンタルヘルステックです。
具体的にはオンラインカウンセリングやアプリなどを活用した体調管理サービスなどが挙げられます。
労働政策研究・研修機構が2012年に行った「職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査」によると事業所の約6割でメンタルヘルスの問題を抱える正社員がいる、と回答があったそうです。
また、メンタルヘルスの問題が、今後どのような状況になると考えているかという設問に対し、46.0%の事業所が深刻化する(「深刻になる」「やや深刻になる」を含む)と回答、その他の回答でも「ほぼ現状のまま」が 42.1%で、改善に向かう(「改善する」「やや改善する」の合計)と考えている事業所は 9.2%に止まっています。
企業においてもメンタルヘルスの問題が顕在化する中で、広がりつつあるのが「健康経営」という考え方です。
これは「企業が従業員の健康に配慮するが経営面での成果につながると期待できる」という立場から、経営的視点から個々人の健康管理を考え、 戦略的に実践することを意味する言葉です。
つまり、従業員の健康管理への課題は生産性の向上や企業におけるリスクマネジメントにもつながりうる、まさに経営戦略上の課題と直結したものとして捉えられるようになってきているのです。
個々人の健康の問題が組織の問題として再認識がされる中で、その人の特性に合わせながら、精神状態の変化を素早く察知するためにテクノロジーを活用した健康管理ツールへの関心は高まっています。
メンタルヘルスに問題を抱える人が増加し、企業においても「健康経営」への関心が高まる中でさまざまなメンタルヘルステックサービスが興隆しています。
そこで、ウェルビーイングの実現を目指し「emol」や「emol work」などのサービスを提供するemol(エモル)株式会社は、メンタルヘルステックサービスの今を捉える「国内メンタルヘルステックカオスマップ 2020年版」を公開しています。
このカオスマップでは国内で提供されている76のメンタルヘルスサービスが7つのジャンルに分割されています。
ここでは、それぞれのジャンルの特徴と代表的なサービスをご紹介します。
主に企業における人材の健康管理を行うサービスをまとめた分野。
従業員一人ひとりにAIがヒアリングを行いメンタルヘルスケア支援の仕組みづくりをサポートする「emol work」や株式会社アトラエが運営する従業員のエンゲージメントの測定・可視化やビッグデータ分析による解析などを行う「Webox」などが含まれています。
ロボット工学を基盤にケアロボットなどの開発に取り組む「ハードウェア・ロボティクス」。
愛を育むロボット「LOVOT」や睡眠時の脳波の動きをもとに睡眠の質改善に取り組む「SLEEP SCOPE」などが名を連ねました。
コンピューターを使った簡単な心理テストの回答から個人の気分や考え方を測定。どういう出来事に直面すると認知のゆがみ(ネガティブな考え方)が生まれるのか、を分析し、より合理的に物事を捉えられるようアドバイスなどを行います。
簡単なアンケートから気分の変化を測定しサポートAIの『ロク』がアドバイスを行うというアプリ「emol」やマインドフルネス瞑想を支援するアプリ「cocorus」などが紹介されています。
女性の体調管理をサポートし、生理/排卵日の予測を行うアプリ「ルナルナ」やスマホカメラに指先を当てるだけで自律神経の状態を測定できるアプリ「CARTE」などが並んでいます。
日本最大級のオンラインカウンセリングサービス「cotree」やAIによる対話アプリの「SELF」の名前が上がっています。
自然療法として注目を集めるハーブ。このジャンルにはAIを活用してその人の症状に合わせたハーブの調合を行う「herbox」などが含まれています。
精神の不調は誰にでも起こり得るものです。特に世界中に新型コロナウイルスの感染拡大の影響が波及し、企業も個人も今後どのような働き方をするのか、どのような生活を行うのか、を暗中模索する中、精神の状態も変わりやすくなっています。
そこで、アプリやWebサービスを活用して手軽に自分の精神状態を測定したり、カウンセリングなどを受けたりすることが早期の改善に繋がります。便利なツールを使いながらどのように自分の体調と向き合うのか、改めて考えてみてはどうでしょうか?
【参考引用サイト】 ・ 精神疾患のデータ|専門的な情報|メンタルヘルス|厚生労働省 ・ 米従業員の8割が精神課題抱えるーーコロナ禍で拡大、遠隔メンタルヘルスケア「Lyra Health」 ・ 職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査 - 独立行政法人労働政策研究・研修機構 ・ 健康経営とは - 健康経営研究会 ・ 「国内メンタルヘルステックカオスマップ 2020年版」を公開 ・ 家でできる!?メンタルケア!CCBT
(大藤ヨシヲ)
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