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ICT・IoT・AIの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるデジタルトランスフォーメーション(DX)が急加速し、データ主導社会へと突入し始めています。
企業の多くはデジタルトランスフォーメーションの取り組みを経営戦略の掲げ、ビジネスの変革の機会と捉え、さらなる利益と企業価値の向上を目指しています。
デジタイゼーションから始まり、データ活用、データドリブンなどデジタルトランスフォーメーションには様々な取り組みがあります。
ところでデジタルトランスフォーメーションには、“攻めのDX”と“守りのDX”があることをご存じでしょうか?
“守りのDX”とはデータ活用、データドリブンといった取り組みを推進することで、企業はコストカット、効率化を図るデジタルトランスフォーメーションです。
守りのDXは現状のビジネスの収益面での維持、減益の防止といった効果は期待できますが、ビジネス拡大による利益の向上には結びつきません。
こういった状況を打破すべく、経済産業省では日本の企業が付加価値の向上や新たなビジネスを創作して戦略の柱にできるよう“攻めのDX”の促進に積極的に取り組んでいます。
DX推進指標で定義している”成熟度レベル”と自己診断結果(305社)の現状の分布
成熟度レベル | 取り組み状況 | 割合 |
---|---|---|
0 | 経営者は無関心か、関心があっても具体的な取り組みには至っていない | 30.5% |
1 | 全社戦略が明確でない中、部門単位での試行・実施に留まっている | 38.0% |
2 | 全社戦略に基づく一部の部門での推進 | 23.0% |
3 | 全社戦略に基づく部門横断的推進 | 7.9% |
4 | 定量的な指標などによる持続的な実施 | 0.7% |
5 | デジタル企業として、グローバル戦争を勝ち抜くことができるレベル |
出典:DX推進指標 自己診断結果 分析レポート2020年版:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構を加工して作成
日本のIT国家戦略を技術面・人材面から支えるために設立されたIPA(独立行政法人情報処理推進機構)は経済産業省が作成した「DX推進指標」を用いて各企業が自己診断した結果を収集し、2020年までのデータを分析した結果を公開しています。
この結果をみる限り、現状DX化実現と見なされる成熟度レベル3の“全社戦略に基づく部門横断的推進”に到達している企業は全体のわずか10%未満にとどまっており、日本のDXの出遅れに、経済産業省は危機感を募らせています。
出典:デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会の中間報告書『DXレポート2(中間取りまとめ)』を取りまとめました (METI/経済産業省) より抜粋
DXレポートとは、経済産業省が2018年より公開している日本のデジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究報告です。
2020年12月に公開された「DXレポート2」では、コロナ禍により企業がさらされた環境変化を明らかにし、これを契機として我が国企業のDXを加速していくための課題、及び対策のあり方を講評しています。
DXを実践している企業は現状、10%以下で、そのうちの5割はDXをよく知らない、または全く知らないというアンケート結果を得ています。
今後、DXを普及させるには、共通理解の形成が必要と捉えており、また中小企業においては自力の推進は困難という見解を得ています。
経済産業省は事例集を作成、先行してDXに取り組んでいる企業の経験やノウハウを共有する場の形成といった形での支援に取り組もうとしています。
その他に、
といったフレームワークや情報を逐次提供することでDXへの意識を高めようとしています。
DXを支援する市販製品・サービスの導入の成功は、「経営のリーダーにより企業文化を変革する小さな成功体験」、即ちDXを取り組むきっかけになるとの見解を経済産業省は示しています。
特に中小企業の場合、DXの土台となるデジタイゼーションの段階にも進んでいないケースが現状かなり多く、ものづくり補助金、IT導入補助金、中小企業デジタル化応援隊、地方版IoT推進ラボ、ITコーディネータの普及といったデジタル化推進策の継続が必要と判断しています。
企業が少ない投資でDXを推進するには、各社が個々にITシステムを開発しなくて済むよう、業界内でコンセンサスを得た共通プラットフォームの構築が必要不可欠との見解を示しています。
競争領域に経営資源を投入できるよう非競争領域のプラットフォーム化を推し進めており、それを阻む要因の排除や加速のための施策に経済産業省は取り組もうとしています。
この取り組みには共通プラットフォーム開発そのものの支援、政府機関によるサービスの運用、セキュリティやデータ利活用の策定なども含めています。
企業がDXを推進するには、自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術の活用でビジネスの変革が構想できるDX人材が必要不可欠です。
こうした人材は流動性が低いため、日本の場合、国内IT人材125万3000人中、95万9000人がIT企業に偏在してしまっています。
IPA(情報処理推進機構)の「IT人材白書」によれば、48.3%の企業でIT人材の質が「大幅に不足している」とのアンケート結果が公表されています。
IT人材の不足に応えられる人材の育成・確保には、個人が自ら学べるようリカレント教育(学び直し)の社会基盤の整備が必要との見解を経済産業省は示しています。
引用元:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)を加工して作成
「2025年の崖」とは2018年のDXレポートで指摘された最悪の将来のシナリオのことです。
企業がDXの課題と問題を解決しないまま放置し続けると、自社の経営が危ぶまれるだけでなく、その波及により、2025年以降、日本は、最大で年間12兆円の経済損失を生じさせる可能性があるという内容です。
DXレポートでは、ITツールやデジタル技術の利用者(ユーザー)と提供者(ベンダー)双方にマイナスの効果を及ぼすという以下の見解を示しています。
出典:「情報処理の促進に関する法律」に基づくDX認定制度のWeb申請受付を開始します (METI/経済産業省) DX銘柄/攻めのIT経営銘柄(METI/経済産業省)を引用して作成
※データのじかんを運営するウイングアーク1st社はDX認定を取得しています。
経済産業省ではDXへの取り組みを活性化すべく、企業価値向上といった効果が得られるインセンティブを導入しています。
具体的には、IPAが審査する「DX認定制度」、東京証券取引所と共同で選定する「DX銘柄」、「攻めのIT経営銘柄」などです。
これらは経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄について2020年11月に公開された「デジタルガバナンス・コード」に連動しています。
この上図に示した流れに沿うことで企業は独自に「攻めのDX」が実践できようになることを目標としています。
DX認定制度とは、「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応した企業を独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が認定する制度です。
DXの取り組みが一定の水準を満たす優良企業であることが認められ、また「DX銘柄」の応募条件にもなるため、上場企業を中心に、今後申請が増え続ける事が見込まれています。
経済産業省が2015年から5年間、東京証券取引所と共同で取り組んでいた顕彰制度です。
中長期的な企業価値の向上や競争力の強化のために、経営革新、収益水準・生産性の向上をもたらす積極的なIT利活用に取り組んでいる企業が顕彰されます。
2020年からは後述の「DX銘柄」に改めています。
2020年からデジタル技術を前提として、ビジネスモデル等を抜本的に変革し、新たな成長・競争力強化につなげていく「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に取り組む企業を顕彰する制度です。
データとデジタル技術を駆使し、製品やサービス、ビジネスモデルの変革を強力に推し進め、成果を得ている企業が選ばれます。
「DX銘柄」に選定されていない企業の中から、特に企業価値貢献部分において、注目されるべき取組を実施している企業を顕彰する制度です。
DX認定を目指すことは「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項の実践を目指すことになります。
DXについて、深い理解を得ていなくとも、認定を目指すことで状況や論点が整理されるので自社の方向性が明確になります。
またDX認定された企業は、DXに関する優良な取り組みをしている企業とみなされ、ロゴを公開することでブランド力や企業価値を高めることが出来ます。
DX銘柄に選ばれた企業は「攻めのDX」のトップランナーとみなされ、投資家、求職者、業種から注目されるようになります。
認定や顕彰などの政策はインセンティブで経営指標の向上、資金・人材・ビジネスの流入の増加といった形で企業にリターンされることを想定しています。
今回は経済産業省のDX促進の取り組みについて紹介させて頂きましたが、企業にとってデジタルトランスフォーメーションへの取り組みが急務であることをご理解頂けたでしょうか?
それでは最後に今回紹介させて頂いた要約をまとめとして、以下に記載させて頂きます。
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