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AgriTech最前線:衛星データを使ったコメ作りから生まれた青森のブランド米「青天の霹靂」!

         

最近データのじかんではコペルニクスJAXAによる雨の観測など衛星データ活用の話やドローンを使ったコメ作りの話などを取り上げていますが、実は、衛星データを活用した米作りもすでに始まっています。

宇宙好きにとっても米好きにとっても熱いテーマですが、衛星データはどんな風に米作りに活かされているのでしょうか?

今回は、衛星を使ったコメ作りを中心に、IT技術を取り入れた農業AgriTechの最先端に迫ります。

青森県のコメ『青天の霹靂』

青森県のコメの新品種である『青天の霹靂』。2015年の発売以来、3年連続で食味ランキング最高評価である「特A」を取得しています(参考PDF)。

コメは収穫時期が遅くなると、コメ自体が硬くなって食味が落ちてしまいます。反対に、早すぎると収量が少なくなり、農家の収入が減ってしまいます。この絶妙な収穫時期のタイミングを判断するには、人の目で稲穂をチェックするという従来の方法には限界があり、新しい技術が必要だとされていました。

そこで、人工衛星によるリモートセンシング技術を活用してみることになったのです。リモートセンシングとは「物に触らずに調べる」技術のことですが(参考記事)、人工衛星に専用の測定器を載せて観測することを特に「衛星リモートセンシング」と言います。

もともと青森では、航空機を使ったリモートセンシングを導入していました。実は、稲の色からたんぱく質含量を推定することができるため、航空機で撮影した画像からコメのたんぱく質含量を収穫前に判定し、特に美味しく仕上がった水田のコメを区分出荷していたのです(参考記事)。その後、収穫時期を人工衛星で把握できないかという話になり、2012年に衛星を使ったコメ作りを開始。2015年に『青天の霹靂』が生まれました。

衛星画像から「収穫適期マップ」「たんぱくマップ」を作成

青森県では、衛星画像からさまざまな情報を取得しています。

収穫時期に近い稲ほど稲の色が黄金色に近づくため、人工衛星から地上を見ると、稲の収穫時期がわかります。これにアメダスで観測したデータなどを組み合わせて水田地図に重ねると、水田ごとに「収穫時期は〇月〇日がベスト」といった「収穫適期マップ」ができあがります。また、栄養条件が過剰な稲は葉の色が濃くなるため、衛星データから葉の色を抽出して水田の地図に色付けし、栄養条件が過剰かどうか見分けることができる「たんぱくマップ」を作成しました。

これらのデータによって、コメの生産者は収穫時期や肥料の量を調整できるようになったのです。

GISデータを使ってより使いやすく

GIS(Geographic Information System)とは、人工衛星や現地調査のデータを管理編集するための地理情報システムのこと。GIS上の「たんぱくマップ」を利用すれば、たんぱく質の高い水田を検索し、それを該当農家に伝えて肥料の量を減らすようにアドバイスできます(たんぱく質含有量が少ないほうが美味しい)。その結果、次回の栽培では美味しいコメが生産できるのです。

ここまでは、衛星データを使用したコメ作りを紹介してきました。ここからは、IT技術を使った稲作の事例を紹介していきます。衛星データを使ったコメ作りについてもっと詳しく知りたい方はこちらの資料をどうぞ。

事例1:AIによる画像解析で稲作を効率化

人工知能(AI)による画像解析技術が、さまざまな分野で求められるようになりました。NTTデータCCSは、AIを使った画像解析の中でも特に地形を読み取る技術に関して優位性を持っており、月面・海底の探査や、ドローンを使用した地図作成などに技術提供を行ってきました。最近では茨城県の要請を受け、稲作での活用を模索しています。

具体的には、ドローンで上空から田んぼを撮影し、AIを使って「茎数」「稲の高さ」「稲の色味」を解析して、稲と田んぼの状態を探るというものです。この技術によって、追肥(田植えのあとに稲に追加で肥料を与えること)を効率的に行えるようになり、より美味しいコメを作れるようになりました。

同社によれば、今後は農業クラウド(農作物の生産から流通、販売管理など、農場経営にかかわる業務を支援するクラウドサービス。参考記事)と連携し、物流まで含めたトータルサポートを目指すそうです。これが実現すれば、農業人口の減少という社会課題の解決につながるのではないかと思われます。

事例2:Apple Watchで水田管理

阿蘇で約5000アール(約0.5平方キロメートル)もの大規模水田を管理している内田農場では、Apple Watchを使ったコメ栽培を行っています。

導入したのは、PaddyWatchという水稲向け水管理支援システム。水田に設置するポール状のセンサーと、農家向けの専用アプリ(iOS版とAndroid版があります)が提供されており、センサーによって「水位」「水温」「気温」「湿度」の情報をリアルタイムに計測し、クラウドへアップロードする仕組みとなっています。これにより、リアルタイムに水位変化をチェック可能です。

今後の「AgriTech」に注目

以上、衛星その他IT技術を活用したコメ作りについて見てきました。

「AgriTech」という言葉がバズワードになりつつあります。これは農業(Agriculture)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた造語で、農業の分野をITで解決するというものです。今後、ITの発展に伴い、農業においても新たなイノベーションが起こることでしょう。日本の農業における生産性を高めるためにも、今後のAgriTechに注目が集まります。

 【参考記事】
 農業分野における衛星データの活用事例~「青天の霹靂」での高品質米の生産支援~ | 地方独立行政法人 青森県産業技術センター
 地球観測データの農業活用産官学でブランド米を(前編) - インタビュー・対談 _ そらこと
 4.衛星データの利用事例 | 第1回GISセミナー in 青森
 画像データを基に、AIにさまざまな判断をさせるには? _ NTTデータCCSの技術紹介|NTTデータCCS
 水田管理はAppleWatchにお任せ 熊本発、最高に旨い米作り(3ページ目) _ 日経 xTECH(クロステック)

(安齋慎平)

 

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