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ワークショップとは? 3つのメリット・デメリットや効果的な進め方を解説

この記事では、ワークショップについて解説しています。ワークショップの概要を解説し、混同しやすいセミナーとグループワークとの違いも解説します。ワークショップのメリット・デメリットや効果的に進める方法も記載しているので、ぜひ参考にしてください。

         

・「ワークショップは本当に役に立つの?」

・「ワークショップを取り入れるメリット・デメリットは?」

ワークショップについてこのような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?

ワークショップとは、意見交換やワークを通して実体験を元にした学びの方法のことです。ワークショップはセミナーと異なり、講師と参加者がコミュニケーションを取りながら課題の解決を進めるため参加者が理解を深めやすい点が特徴です。

本記事ではワークショップの概要や取り入れるメリット・デメリットを紹介します。また、ワークショップを効果的に進めるための手順も解説するため、ワークショップに関する疑問をお持ちの方はぜひ参考にしてください。

ワークショップとは?「学び・創造・問題解決・トレーニング」の手法

ワークショップとは?「学び・創造・問題解決・トレーニング」の手法

ワークショップを疑問視する声が上がるのは、ワークショップの効用がおよぶ範囲と、目的があいまいなまま進められることに起因しているためと思われます。

そこで、先ずは、ワークショップで何ができて、何ができないのか、その効用について整理するところからはじめましょう。

対話と議論

ワークショップの定義はWikipediaで次のようにまとめられています。

ワークショップ( workshop)は、学びや創造、問題解決やトレーニングの手法である。参加者が自発的に作業や発言をおこなえる環境が整った場において、ファシリテーターと呼ばれる司会進行役を中心に、参加者全員が体験するものとして運営される(Wikipedia)。

ワークショップのキーワードのひとつが「ダイアローグ(dialogue)」です。一般的には「対話」と訳され、これに対比されるのが「ディスカッション(discussion)」つまり「議論」です。日本語では、必ずしも明瞭に区別されませんが、語源に遡ると全く異なった背景を持つ言葉であることがわかります。

Dialogue = dia+logos

Dia = ~を通して、~のあいだにおける

Logos = 言葉

(参照:『仕事に効くオープンダイアローグ』)

Discussion = dis+cus

Dis = 徹底的に

Cuss = 打つ・叩く

(参照:『学習する組織』)

上記の定義にならってdiscussionを直訳すると「徹底的に打つ・徹底的に叩く」という意味になります。「叩打=パーカッション」や「衝撃=コンカッション」と同じ語源を持っており、互いの考えをぶつけ合うことを意味します。交渉(negotiation)も典型的な議論のひとつです。そこには、往々にして勝者と敗者が生まれてきます。

『学習する組織』のなかで、ピーター・M・センゲはこのふたつを次のように定義しています。

ダイアローグ:

複雑で微妙な問題を自由かつ創造的に探究し、互いの話にじっくり「耳を傾け」、自分の考えを保留する。それは、チームのメンバーが、前提を保留して本当の意味で「共に考える」能力である。

ディスカッション:

さまざまな考えを発言したり、弁護したりして、そのときに下さなければならない決定の裏づけとなる最善の考えを追求する。

拡散と収斂

この「拡散と収斂」のモデルも多くのビジネスパーソンに馴染み深いものでしょう。基本的に、ダイアローグは拡散に適した手法であり、ディスカッションは収斂のための手法です。同じくピーター・M・センゲは次のように述べています。

『ダイアローグとディスカッションは、潜在的には補完し合う関係にあるが、ほとんどのチームには、両者の違いを見分け、意識して使い分ける能力が欠けている。』

わたしたちの多くは、こうしたことを知識として知りながら、実践の現場ではその役割の違いをはっきり意識しないまま、つまり拡散か収斂かという目的を確定しないまま、何となくビジネスミーティングを始めてしまうことがほとんどではないでしょうか。

ワークショップという手法は、その目的が「拡散」であるという前提が参加者に共有されてこそ効力を持つ手法です。ワークショップの効用がおよぶ範囲はここまでです。「収斂」のためには、別のステージが準備される必要があるのです。

ちなみに、自治体における異なる利害を持つ住民間の合意形成など、収斂のステージにこのワークショップの手法が使われるケースがあります。しかしスピードが重視されるビジネスにおける意思決定(Decision Making )にはかなり馴染みにくい手法であることは、直感的に理解していただけるものと思います。

ワークショップとセミナー・グループワークの違いとは? 目的が変わる!

ワークショップとセミナー・グループワークは集まって学習をする点で類似した言葉であるため、よく混同されます。ここでは、ワークショップとセミナー・グループワークの違いを以下にご紹介します。

・セミナーとの違い

・グループワークとの違い

それぞれを解説します。

セミナーとの違い

セミナーとは「知識やノウハウを持っている講師が参加者に対して自分の持っているものを伝授する」ことを目的とした集会です。

講師が参加者に対してノウハウを共有したり、講演者が参加者に対して研究の成果を発表したりする場として活用されます。演者スタイルの一方向的に話が進む形式で、参加者の発言する機会はほぼありません。

進行がスムーズで内容の濃い時間が確保しやすいことが特徴です。塾や大学の講義、講習会などでもセミナーの形態が活用されます。

一方で、参加者が受動的になりやすく、理解度に差が生じやすいとされています。

グループワークとの違い

グループワークとは、グループごとに課題が与えられ、「最終的な結論や結果を出す」ことを目的としたグループでの活動です。

ワークショップでは技術や学びの機会を得るのが目的ですが、グループワークではチームワークやコミュニケーション能力の向上を目的とします。

与えられた課題について、グループとしての結論を出したり作品を作り上げたりするので、参加者間でのやり取りが密に行われるのが特徴です。

ワークショップの2つのメリットとは?

ワークショップでは実体験を通して学習を行うので、他の方法では得られないメリットがあります。ワークショップの2つのメリットを以下にご紹介します。

・参加者の疑問をすぐに解決できる

・参加者のモチベーションが上がる

それぞれを解説します。

1.参加者の疑問をすぐに解決できる

ワークショップのメリットは参加者の疑問をすぐに解決できる点です。ワークショップでは、参加者と講師が一方向の関係ではなく、双方向のコミュニケーションが可能です。

セミナーでは最後に質疑応答の時間を設ける場合もありますが、ワークショップでは頻繁に質疑応答の時間が確保されます。疑問点を率先して聞ければ、その場での問題解決が可能となります。

2.参加者のモチベーションが上がる

ワークショップは参加者のモチベーションが上がります。ワークショップでは実際に提供されている商品やサービスを体験できるので参加者のモチベーション向上が期待できます。

また、商品やサービスに触れるのはモチベーションが上がるだけでなく、商品やサービスへの理解を深めることもできるでしょう。

さらに、実際に商品やサービスに触れることで当事者意識が高まり、途中離脱を防ぐことにもつながります。そのため、ワークショップは新入社員への商品紹介の教育の場として活用されています。

ワークショップの2つのデメリットとは?

ワークショップのメリットを先述しましたが、ワークショップにはデメリットもあります。ワークショップの2つのデメリットを以下にご紹介します。

・参加するだけで満足感が得られる

・学べる内容が少ない場合がある

それぞれを解説します

1.参加するだけで満足感を得られる

ワークショップのデメリットには、参加するだけで満足感が得られる点があります。

セミナーと違いワークショップは、課題に取り組む機会が多数あります。ワークショップは、自ら行動する機会があるので、参加者の中にはワークショップに参加するだけで技術や知識が習得できたと勘違いする方もいます。

ワークショップに参加する際は、参加して行動できた達成感のみに満足しないように注意しましょう。

2.学べる内容が少ない場合がある

ワークショップは学べる内容が少ない点もデメリットの1つです。

ワークショップでは参加者同士の関係が、講師と受講者ではなく、対等な立場にあるからです。

講義やセミナーであれば講師から専門的な知識を体系的に学べます。講師の意図した筋書きで内容を説明するので理解しやすいです。

一方で、ワークショップは何らかのテーマに対して体験を通して学習するので、実体験を伴います。しかし、参加者同士の関係は対等であり、専門的な知識を多く持つ人からは知識を得られません。

そのため、ワークショップでは学べる内容が少ない場合もあります。

【簡単6STEP】ワークショップを効果的に進めるやり方とは?

ワークショップを効果的に進めるやり方を6つのSTEPに分けて紹介します。

・目的を決める

・ワークショップのテーマを決める

・序盤は個人ワークから始める

・意見を発表しやすい雰囲気を作る

・事前準備をきちんと行う

・ファシリテーターを配置する

それぞれを解説します。

1.目的を決める

目的をしっかりと決めることで、ワークショップを効果的に進められます。

どんなワークショップにしたいかを目的を明確にしないと、ワークショップで得たいものが得られません。

ワークショップを開催したり、参加したりした際に、このワークショップに参加すればどんな結果が得られるか目的がわかるようにしましょう。

目的がきちんと決まればゴールも明確になるので、ワークショップのテーマ選定もしやすくなります。

2.ワークショップのテーマを決める

目的がきちんと決まったら、ワークショップのテーマを決めましょう。効果的にワークショップを進めるためにはテーマの選定が重要です。

ワークショップでは、テーマの良し悪しで人から興味を持たれ、どれだけ参加希望者を集められるかが変わります。また、テーマと内容にずれが生じていないかも満足度の高いワークショップには大切です。不安な場合は第三者の意見を取り入れ、テーマに沿ったワークショップの内容になっているかを確認しましょう。

3.序盤は個人ワークから始める

ワークショップの序盤は個人ワークから始めると、効率的にワークショップを進められます。ワークショップはグループでの意見交換や体験から得られる学習方法ですが、テーマの内容の実践に慣れていないうちは個人で始めた方が効率的に進められます。

グループワークにいきなり取り掛かるのでなく、個人でできる課題やワークを用意し、それからグループワークへと発展できる流れを作れるとスムーズにワークショップが進行します。

参加者全てがワークショップに慣れているとは限らないので、グループワークが行いやすい工夫をしましょう。

4.意見を発表しやすい雰囲気を作る

効率的なワークショップを進めるには、意見を発表しやすい雰囲気を作りましょう。ワークショップでは画期的なグループ活動ができると、良い意見が出て有意義なワークショップになるからです。

机の配置やBGMの選択、人数構成などの部屋の雰囲気を整えると、リラックスしてワークショップに参加できます。ワークショップを行うスペースも意見交換のやりやすさに関わる要素です。会議室や個室など、規模やグループの数を考慮して場所を選択しましょう。

意見交換がしやすい雰囲気が作れれば、グループでの意見交換や効率的なワークショップが可能となるでしょう。

5.事前準備をきちんと行う

効率的なワークショップを行うために、事前準備をしっかりしましょう。事前準備を丁寧に行うことでワークショップの生産性を上げられます。

ワークショップにあると便利なものは以下の通りです。

・ボールペン、サインペン、蛍光ペン、カラーマーカーなどの筆記用具

・コピー用紙、模造紙などの紙類

・ホワイトボードなどの大型備品

その他、参加者各自で用意してほしいものがある場合は事前に告知しておくことをおすすめします。

どのようなものがあれば、ワークスペースとそのグループでの意見交換が効率よく行われるかを想像し、事前準備を行いましょう。

6.ファシリテーターを配置する

ワークスペースを効率よく進めるには、ファシリテーターを配置しましょう。ファシリテーターを配置するとワークショップ全体の流れがスムーズになります。

ファシリテーターとは、進行役を指します。ワークスペースでのファシリテーターは、参加者の発言を促したり、意見交換をゴールに導いたり、テーマに沿った内容をたどるようにコントロールしたりする役目のことです。

話題の脱線や、タイムキーパーの役目も担うのでよりスムーズなワークスペースを実現できるでしょう。あらかじめファシリテーターを用意し、ワークスペースの流れをコントロールすることでより良いワークスペースができます。

組織におけるワークショップの3つの活用事例とは?

組織におけるワークショップの3つの活用事例を紹介します。

・ファシリテーターの育成

・心理的安全性

・戦略と組織

それぞれを解説します。

ファシリテーターの育成

ワークショップを特徴づけるもうひとつのキーワードが、対話を実現し、ワークショップを円滑に進める役割を担う「ファシリテーター」の存在です。ファシリテーションは、特殊なスキルだという印象を持つ方もいますが、決してそのようなことはありません。

「養成講座」のようなプログラムがいろいろなところから提供されており、誰でもそうしたプログラムを受ければ身につくものです。なぜなら、それはスキルというよりは、ひとつの「姿勢」だからです。そのポイントは、次の2点に集約できるでしょう。

傾聴――参加者の一人ひとりの発言にていねいに耳を傾ける。

中立・公平――どの参加者の発言からも等しい距離を置く。ファシリテーター自身の見方に誘導しない。特定の参加者のみが発言するような状況を回避し、参加者がまんべんなく公平に発言できるような環境をつくる。

これは誰もが意識をし、心掛れば会得できる姿勢です。筆者がお勧めしたいのは、職場のメンバー全員がこのファシリテーターとしての姿勢を学ぶ機会を設けることです。

心理的安全性

ここ数年、現場のマネジャーを悩ませている言葉に「心理的安全性」があります。いったいどのように運営していけば心理的安全性の高い職場ができるのでしょうか。心理的安全性とはいつでもどこでも誰もが好き勝手なことを言ってよいというわけではありません。

そうした戸惑いに対し、ワークショップのファシリテーターの姿勢はひとつ回答を与えてくれるでしょう。もし、マネジャー自身もふくめて、職場の誰もが上記のような「傾聴」「中立・公平」という姿勢の価値を理解し、対話を実践しようと努めるならば、心理的安全性の高い職場が実現する確率はかなり高いでしょう。

戦略と組織

 

緊急

緊急ではない

重要

やる

予定する

重要ではない

任せる

やらない

図2

図2のようなマトリクスを「アイゼンハワーマトリクス」といい、非常に単純ですが、経営トップから現場のリーダーまで、マネジメントに携わるビジネスパーソンには必須の課題整理です。

「重要 or重要でない」の区別は非常に微妙かつ大切なところで、その見極めのセンスが最終的な個人と組織のパフォーマンスを決めると言っても過言ではないでしょう。

 

緊急

緊急ではない

重要

戦略

組織

図3

そして、マネジメントの役割を振り分けると、重要で緊急なのが「戦略」であり、重要だけれど緊急でないのが「組織」とすることができます。

戦略とは、戦略を立案し、その戦略を速やかに実践し、成果を挙げることです。組織運営上のプライオリティ、ナンバー1であることは言を俟ちません。

組織とは、組織風土を豊かにし、働きがいのある職場をつくり、メンバーの士気を高く保つことです。英語でいえば ”How to Cultivate Corporate Culture” ですね。最近では、「組織開発」という言葉をしばしば耳にするようになりました。戦略を効率的に達成するための土壌づくりといっていいでしょう。両者は、相互補完的です。

ワークショップは役に立つのか

冒頭の「ワークショップは役に立つのか」という問いに立ち返りましょう。ビジネスにおけるワークショップが有効なのは組織のステージです。ここを混交して、意思決定などの戦略のステージに使うと、ワークショップに対するネガティブな疑問が生まれやすくなります。

「拡散と収斂」という枠組みをしっかり意識して、ワークショップの目的を定めることが重要です。

ワークショップについて「そんな悠長なことをしている余裕は、うちにはないはずだ」というような発言をするマネジャーには要注意です。そうした人は、そもそも組織に関心がない可能性があります。それは、本来のマネジャーとしての職責を半分手放しているとも言えます。そうした組織が長期的発展を遂げることは、かなり難しいと思われます。

データのじかんのワークショップの取り組み

「データの時間」はこれまでにさまざまな場所でワークショップを実施しています。

例えば、2024年1月26日に名古屋で「身の丈DXワークショップで学ぶ『現場主導のデジタル化』」を開催しました。

経済産業省が「DXレポート」を発表して早6年が経過しましたが、具体的にどのようにDX化に向けて取り組めばよいか悩みを抱える方も少なくありません。

名古屋でのワークショップでは、アイデア検討①(個人ワーク)、アイデア検討②(グループワーク)、発表・共有の3つのセクションが設けられDX化についての知識の定着をすすめました。

「データの時間」が日本各地で開催しているワークショップの詳細について知りたい方は以下を参考にしてください。

終わりに

ワークショップとは、意見交換やワークを通して実体験を元にした学びの方法のひとつです。

講演会やセミナーとは違って、自ら率先してワークやグループでの意見交換に参加できるため、スキル習得などに役立ちます。企業や組織などの研修や学習の一環として、ワークショップが選択されることが増えてきました。

ワークショップであれば、コミュニケーション能力や意見交換能力も学習やワークをこなす中で得られます。このような面から、ワークショップを活用する場面が増えていくでしょう。講習会では得られない実体験から得られる学びを重視する場合はワークショップを取り入れてください。

図版・著者:下平博文
事業会社において企業理念(Corporate Philosophy)を活用した組織開発、インターナルコミュニケーション等に携わる。2018年よりフリーランスのライターとして活動。

(TEXT:下平博文 編集:藤冨啓之)

 

参照元

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