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日本の交通網の要である鉄道。沖縄を除く日本全都道府県に鉄道網が張り巡らされている訳ですが、いまある問題が浮上しています。それは「無人駅」が増加しているということです。
国交省が発表したデータによれば、2020年3月末時点で、日本の駅のおよそ5割が無人駅であり、地方ではそれに起因する問題が発生し、訴訟にまで発展した事例があるといいます。そこで今回は増え続ける「無人駅」とその未来について調べてみました。
2020年三月時点で、日本には9465の駅があるのですが、その中の4564駅が無人駅だったといいます。つまり全体の48.2%の駅が無人駅であるということで、これは2002年のデータと比較すると、5%ほど増加しているといいます。
さらに都道府県別で見ると、最も無人駅の割合が高いのが高知県で93.5%。次に徳島県が81.6%、長崎県が79.6%と続きます。その一方で無人駅の割合が低いのは埼玉の3.0%で、東京はそれに次いで9.9%でした。また、大阪や神奈川も16.0%と、やはり都心は無人駅の割合が比較的低いことがわかります。とはいえ全体で見ると、30都県で無人駅の割合が5割以上であったということから、やはり日本の地方部は無人駅のほうが多いのです。
このように、実は日本の交通網を裏で支えていた無人駅ですが、その割合が増加する中で、ある訴訟が起こりました。
2020年9月、車いす利用者である障がい者3名がJR九州に対して権利侵害で訴えたのです。なぜ訴えられたのか、その背景には駅の無人化がありました。車いす利用者が無人駅を利用する際、駅に事前に予約することが必要でした。しかし、それは一般の乗客には求められず、障がいを持つ乗客にのみそういった制約が課されることは移動の自由の制限であるとして原告はJR九州を訴え、一人あたり11万円支払うことを求めたのです。鉄道会社を相手取った訴訟として話題になりましたが、日本福祉車両未来研究会の調査によると、日本人のおよそ181万人が肢体不自由者であることを考えると、この訴えは決して無視できるものではありません。
裁判はまだ始まったばかりですが、日本で加速する駅の無人化の流れに一石を投じたことは間違いないでしょう。しかし、鉄道会社としてはそうもいっていられない現状があるのです。
日本全国に張り巡らされているとはいえ、すべての駅や路線が頻繁に利用されているわけではありません。たとえば、北海道の石北本線の生野駅(北海道遠軽町)には一日に3本しか停まらず、1日あたりの乗車人員は0.6人だったといいます。
こういった場所に存在する無人駅は、むしろインフラとしての側面が強いわけですが、とはいえその運営にコストがかかりすぎる鉄道にとって、この駅を存続させるかどうかの判断はかなり難しいといえます。日本に存在する地方鉄道会社のおよそ70%以上が営業赤字を計上しているというデータもあり、コストを削減するためのもっともシンプルな方法として人件費を削るということがなされてきました。
興味深いのが、経営赤字の分を「ぬれ煎餅の売り上げ」や「まずい棒」などで補填している銚子電鉄の例です。
赤字に悩んでいた銚子電鉄は、2006年からぬれ煎餅の販売を開始。ネット上に広告を掲載したところ、ネットユーザーの間で話題となり、2週間で一万件もの応募が殺到。現在でもぬれ煎餅の売り上げのおかげで黒字を維持し続けることができているといいます。
銚子電鉄は映画「電車を止めるな!」を制作したりYouTubeチャンネルを開設したりなどの活動も近年は行なっており、こういった独特な方法によって経営難を切り抜くことができる会社も例外的に存在しますが、現実的にすべての鉄道会社でそれができるわけではありません。とはいえ削れるのは人件費だけ。というジレンマを鉄道会社は抱えている訳です。
そこで注目したいのが、山手線で49年ぶりに誕生した新駅「高輪ゲートウェイ駅」の自立移動型AIロボットです。
高輪ゲートウェイ駅で2020年3月から導入されているというのが自立移動型ロボット。
それぞれ、駅構内を案内するロボットが3台と、清掃用のロボットが2台と、警備用のロボット1台が稼働しているといいます。さらに、今後消毒用ロボットや手荷物搬送ロボットなど、これまで何人かのスタッフが担っていた役割を代替するロボットが導入されています。日本の業務用サービスロボットの市場は2019年時点でおよそ64億円と前年比27.9%の伸びを記録し、2022年には129億円にまで拡大すると予測されています。高輪ゲートウェイのロボットはまだ実証段階にあるものが少なくないのですが、ロボットが人に置き換わる未来が確実に近づいて来ているのです。
もちろんこういった最新のロボット技術が今問題になっている地方の無人駅をすぐに解決してくれるというわけではありません。ですが、仮にこういったロボットが数十年後、求められる駅で稼働するようになれば、たとえば今回のようなJR九州の問題も、車いす利用者を介助するロボットを常駐させておくことで解決することができるようになるかもしれません。
JR九州の訴訟はビジネスとしての鉄道と、インフラとしての鉄道のバランスという非常に厳しい課題が問題として露呈したものだといえます。もちろん障がいをもつ方々の人権もある一方で、駅に派遣される駅員の人権もある。
そういった課題を解決する存在として、ロボットが活用される未来が来るかもしれません。
【参考URL】 ・朝日新聞|20年で400駅が無人駅に 都市部でも増える日中だけ ・共同通信|駅無人化で権利侵害と提訴、大分 車いす障害者がJR九州に ・「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」の銚子電鉄は今どうなっているのか? ・列車の発車が最も少ない駅は? 1日1回の新十津川駅廃止 そのあとは…18きっぷの難所も ・矢野経済研 業務用サービスロボ調査、19年度28%増65億円市場に
(織田哲平)
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