毎年恒例のウイングアーク1st主催カンファレンス「ウイングアークフォーラム」。2020年は名称を「updataNOW 20」に刷新し、オンラインイベントとして開催しました。今年は10月12日の前夜祭を皮切りに16日までの会期中、65超のセッションでお送りしました。
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顧客の真の成功に向かって共に走り続けるために、ウイングアーク1stがカスタマーサクセスの専門部署を起ち上げてから5年。私たちはデータ活用という側面から、顧客が抱える課題の解決とサクセスに必要なリソースの提供を進めてきました。こうした取り組みの中で2019年、データ活用基盤「CSuP(しーずあっぷ)」を立ち上げて活用を開始。そこでたどり着いたカスタマーサクセスの方程式をシェアしました。
「カスタマーサクセス」といっても、その定義はいまだ明確ではありません。この領域自体がまだ発展途上であり、定まった方法論やアプローチは確立されていない状態です。こうした中で、カスタマーサクセス部門は、顧客に対するサービスの継続に常に責任を持たなくてはなりません。この相反する状況を打開する糸口として、ウイングアーク1stのCustomer Success部(以下、CS部)は、三つの課題=①セオリーがない ②リソースが足りない ③顧客のターゲティングが急務を提起したと、CS部 部長の渡部覚は語ります。
「データ活用は顧客によってアウトプットの形が違うため、まず基本となる『形』=セオリーやアプローチからつくっていかなくてはなりません。また私たちは、MotionBoardやSVF、SPA、Dr.SUM、DEJIRENなど複数のサービスを数千社規模で顧客に提供しています。限られた人数で品質の高いサービスを提供してゆくには、リソースの観点から、効率化が重要な課題になります」(渡部)
そして「顧客のターゲティング」も課題です。従来のカスタマーサービス部門は、顧客からの問い合わせに対応して動くため、問い合わせのない顧客の悩みを把握することができませんでした。このため、コンタクトできない(していない)ままサービスを退会されてしまう事例がかなりの確率でありました。これら三つの課題を解決するために新たに構築したのが、新しいデータ活用基盤「CSuP」です。
CSuPの最大の特徴は、CS部の担当者にプッシュ型で顧客情報を提供し、プロアクティブなアクションを可能にする点にあります。従来は「リアクティブ=顧客の要望を受けて動く」だったのに対し、CSuPで顧客に関するデータを可視化して状況を把握し、CS部の担当者みずからが「プロアクティブ=顧客から要望が来る前に動く」ことを可能にします。
CSuPでは全てのデータの入出力が、ダッシュボードの画面上から行えます。CS部スタッフは、このダッシュボードに表示されたさまざまな指標をもとにアクションを起こします。またスタッフだけでは把握しきれない顧客の状況は、データをもとにシステムが閾値を超えた状態を認識し、すぐにアラートを上げてくれます。
「この他、管理中の施策のタスクの進捗管理も可能です。さらにトライアル中の顧客についても動向を把握できるので、その動きに応じて必要なアクションが起こせるようになっています」(渡部)
続いて、CSuPでは、具体的にどの指標を主に管理しているのか。マネジメント視点から見たKGI(重要目標達成指標)として、渡部は「NRR(売上継続率)」を挙げます。NRRはChurn Rate(前期末と比較した際の既存顧客 契約解約率)とExpansion Rate(前期末と比較した際の既存顧客 契約拡大率)の二つを足して算出されます。
「棒グラフ(上図右)の一番左は、カスタマーサクセスがリアクティブな対応しかできていない場合、継続率は86%で契約拡大率は13%。合計してNRRは99%。つまり、毎月1%ずつ契約が減っていくことになります。これが左から四つめの棒グラフは、一般的に導入したSaaSを活用して成果を出し、なおかつ完全に業務に根づいている状態で、NRRは117%となり、毎年17%の追加契約が得られていることが分かります」(渡部)
こうした指標を重視する理由でもあり、CS部の活動コンセプトとなっているのが、もう一つの「方程式」です。
「これは、CS=CX+CO(下図左下)。つまり、カスタマーエクスペリエンス(顧客体験)とカスタマーアウトカム(顧客の得た成果)を見るのが、私たちCS部の役割であり、この考え方をメンバーに徹底しています。いくら顧客体験を向上させても、それが最終的に顧客の成果につながらないのでは意味がありません。私たちも、あくまでアウトカムという部分に確実にコミットして活動していきたいと考えています」(渡部)
セッションの後半では、Customer Success部 オンボーディングG GMG(当時) 山野辺史久が、CSuPのダッシュボード画面を紹介しながら、実際のオペレーションや得られる情報について説明しました。冒頭、山野辺は「CSuPの目的は『データの可視化』ではなく、顧客によりウイングアーク1stのサービスを活用していただくための業務改善のツールであるということを理解していただきたい」と強調。このデータ基盤のコンセプトがCS部の提案力、サポート力強化を通じて、文字どおりお客様のカスタマーサクセスを支えるものである点を明らかにしました。
「こうした考えを踏まえて、CSuPの設計に当たっては、定量情報だけでなく定性情報にもしっかりと目を向けるというのを大前提としました。こうしたツールでは、どうしても数値だけに頼ってさまざまな分析・判断を行いがちですが、数値化できない情報、たとえば顧客からの問い合わせ内容には、具体的な顧客の課題情報が隠れています。そういう情報を見ることで、各顧客の取り組みに対して柔軟に対応できると考えたのです」(山野辺)
では、実際にダッシュボードの例を見ていきましょう。プロアクティブな顧客サポートを可能にするには、どこに支援すべき顧客がいるのかを、まず見つけなくてはなりません。CSuPでは、そのために「展開率=どれだけ社内展開が進んでいるか」と「活用率=どれだけ活用が進んでいるか」という二つの指標を用いています。これを可視化したのが、下図の左側のグラフです。
「グラフの上に行くほど展開率が高くなり、右に行くほど活用率が高くなります。右上にいる顧客は社内でサービス展開が進んでいて、なおかつ頻繁に利用されている。逆に左下は展開も利用も進んでおらず、積極的な支援が必要だというのが読み取れます。またこのグラフには青と赤の円がありますが、青は直近に担当者がコンタクトを取っていて、赤は最近支援ができていない顧客です。だから左下に赤い円があった場合は、最優先でお声がけをする必要があると判断できるわけです」(山野辺)
画面の右側には、左のグラフでクリックした顧客(円)の利用状況の推移が表示されます。この利用状況も加味した上で、アクションを起こすべき顧客の優先順位を決めていくのです。
これら機能はCSuPの機能のごく一部分ですが、こうした個別の機能にもまして重要なCSuPのメリットは、さまざまなシステムに散在するデータを一つのダッシュボードから見ることができる点だと、山野辺は話します。
「さまざまな業種や業態、獲得目標を持つ顧客をサポートするために、CS部でも多種多様なツールを使っています。必然的にそれぞれのツールの中に、さまざまなデータが別々に存在することになりますが、CSuPはこれらの分散したシステムのデータを統合し、ダッシュボード上で一元的に見ることができます。この結果、幅広いデータに基づく、より正確で具体的な判断が可能になるのです」(山野辺)
セッション終盤で再び登壇した渡部は、CSuPのリリースからこれまでの成果をまとめて振り返ります。CSuPは2019年4月から本格的に検討が始まり、およそ4カ月をかけて業務設計を行いました。その後、さらに半年以上を費やしてPoCを実施しながらダッシュボードの設計や必要な機能の検討を重ね、2020年4月に正式にリリースしました。
「リリースからこの10月までの効果を測定した結果、見込みの継続率が3.3%向上したことが分かりました(下図)。当社では、過去の顧客の契約状況や現在の利用状況から、サービス利用の見込み継続率を算出しています。この3.3%という数字をどう評価するか議論はありますが、私自身は非常に大きな成果を得られたと考えています」(山野辺)
「継続率というのは、この先何年にもわたって複利で効いていく数字であり、将来的に大きな成果につながっていく数字です。この継続率が上がるということは、それだけ当社のサービスを利用される顧客が増えていくことにつながります。その実現のためにも、CSuPをCS部の業務改善、ひいては顧客のサービス活用の度合いを向上させるデータ活用基盤としてさらに成長させていきます」と渡部は力強く語り、セッションを締めくくりました。
ウイングアーク1stが毎年開催している国内最大級のビジネスイベント「ウイングアークフォーラム」。今年は「updataNOW 20」と名前を変え、10/12~10/16にオンラインで開催しました。 登録数15,000名以上、セッションの総視聴数は40,000を迎えました。 データ活用とDXを基軸に、ネクストノーマル時代に向けた洞察から、各業界・業種の先進的な成功事例、そして、ビジネスを加速する最新のサービス紹介まで、65を超えるセッションの大部分をアーカイブ配信として公開いたしました。 見逃した方はもちろん、もう一度視聴したい方も是非ご覧ください。
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