オープンイノベーションとは、自社だけではなく競合他社や大学や研究所、地方自治体などと共に取り組む開発の手法です。他分野が持つ技術やアイデア、サービス、ノウハウ、データなどを組み合わせて、革新的なビジネスモデルや製品/サービスの開発、研究成果、組織改革、行政改革などにつなげることを目的としています。
運輸業界では、慢性的な人手不足が続く中、インターネット通販や時間指定の宅配など市場ニーズの変化による貨物取扱量の増大にうまく対処できていないことが課題となっています。従業員への過剰な業務負担を避けるために、個々の事業者の問題として捉えるのではなく、業界全体の課題として取り組みを始めました。運輸業界が抱える課題を解決するために、2016年8月に「運輸デジタルビジネス協議会(TDBC:Transportation Digital Business Conference)」が設立され、関連3省(国土交通省、経済産業省、厚生労働省)も参加し、定期的な会合が重ねられています。
ドイツでは、政府が中心となって産学官が連携して、オープンイノベーションに取り組む文化が徹底しています。ドイツの代表的な鉄道会社「ドイツ鉄道」はイノベーションの創出に積極的に取り組んでいます。事例としては、乗客が駅から自宅まで移動する時に「自動運転車サービス」を提供したり、列車の窓にAR(拡張現実)技術を組み合わせた車両を開発したりして、利用者の満足度を高める取り組みを行っています。また、自社で運営するアクセラレータープログラムを開始し、ベンチャー企業との協業を進めています。既存の鉄道事業のオペレーション業務の改善に取り組み、有望なベンチャー企業と共に、新規ビジネスにも投資をしているのです。
選手やチームのスポーツデータを詳細に記録し、試合をもっと楽しもうとする動きは、スポーツ業界でも起こっています。日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)では、デジタルの力で高度なプレーができる選手を育成したり、ファンが試合を楽しみやすい環境を整えたりする取り組みとして「Jリーグトラッキングデータコンテスト」を一般向けに開催しました。Jリーグが持つ公式データの一部を公開して、一般から大胆なアイデアを募るのが目的で、試合ごとのトラッキングデータ(走行距離やスプリント回数・ゴール数や勝率)、チーム別のスタッツ(ボールがパスされた流れ)、観客動員数、選手の身長や生年月日などのプロフィールデータなどのデータを元に、様々なアイデアが出されました。
従来の取り組みであれば、自分たちで編み出した手法やアイデアは、競合相手との差別化を図、自分たちの利益のために使われる、というのが常でしたが、オープンイノベーションはもう少し視野の広い、共存のための取り組みだと言えるでしょう。
オープンイノベーションがより広く社会に浸透することにより、より豊かな社会が実現することは、データの活用により人の暮らしが豊かになる、という実例の1つとなり得るかも知れませんね。
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