2020年1月22日、ウイングアーク1stは、京都府宇治市に世界最大規模のBMXフリースタイルパーク「WingPark1st」をオープンしました。そして、このパークを使って練習に励むのは、若干17歳ながらBMX競技のプロ選手としてさまざまな大会で好成績を残す中村輪夢選手です。
この日、パークではオープンを記念した発表会が開催され、中村選手によるライディングやウイングアーク1stの代表取締役社長の田中潤によるインタビューが行われました。
BMXの未来を変えるかもしれない、「ライダーの動きをデータ分析するパーク」とはどのようなものなのでしょうか?
今回は、オープン記念発表会の様子をお届けするとともに、 「WingPark1st」制作の背景やその特異性に迫ります。
中村選手が取り組む「BMXフリースタイルパーク」という競技は、さまざまな大きさ、形状のセクションが並んだパークにおいて、持ち時間1分の間にライダーが繰り出す技(トリック)をジャッジが判定する、というもの。得点はトリックの難易度や完成度、さらにライダー自身のオリジナリティで決まります。
BMXに乗ったライダーが宙高くトリックを決める様子はダイナミック。今回のオープン発表会で中村選手がライディングを披露すると報道陣からは歓声が上がりました。
BMXは都市型のスポーツとして年々注目が高まっており、今年度東京で開催される国際大会においても新種目として追加されることになりました。
そうした状況の中、中村選手は昨年の10月から11月にかけて中国・成都で開催されたワールドカップで優勝し、世界王者の座を手に入れたばかり。今年5月に決定する国際大会の代表入りはもちろん、金メダルへの期待もかかる、という正念場で、「WingPark1st」がオープンしたのです。
データを専門に取り扱う会社がなぜスポーツ領域であるBMXフリースタイルパークを作るのかと疑問を覚えた方も少なくないかもしれません。一見、異色にも思えるこの組み合わせについて、田中はこう語ります。
「元々ウイングアーク1stでは、Enpower Data(情報に価値を)、Innovate the Bussiness(企業に変革を)、Shape the Future(社会に未来を)という三つのビジョンを掲げてきました。
ビジョンの一つであるShape the Futureには、日本において若者たちが新しい未来を切り開く際に、テクノロジーを使って応援したいという思いが込められています。
そこで、若者支援の一環として、無償で子供のIT教育を行ったり、スポーツ界では日本障害者スキー連盟のスポンサーとして成田緑夢選手をはじめ、選手の支援を行ったり、と活動をしてきました。
我々の強みであるデータ分析を生かして、若者支援ができないかと試行錯誤していた時に中村選手との専属契約が実現し、このBMXフリースタイルパークの制作が決まりました。」
一方の中村選手も、競技に取り組む中で、練習場所の不足や、その通いにくさについて課題を感じていたそうです。
「これまで練習をするためには、片道数時間をかけて府外のパークに足を運ぶ必要がありました。また、日本だと規模の大きいセクションのあるパークは少ないので、時には海外のパークにまで足を運ばなくてはなりませんでした。」
構想がはじまってから約1年、中村選手にとってアクセスの良い京都府内に無事、土地を確保し、建設に至りました。
また、これまでに遠征した世界各地のパークのいいところを集めた「理想のパーク」を目指して、中村選手自身も、元ライダーだった父親とともに制作段階から設計まで、監修を行ったそう。
その結果、中村選手にとって最も通いやすく、最も調子良く走れる、まさに「中村輪夢専用」パークが出来上がったということです。
施設の規模だけで行っても世界最大級水準のこのパークですが、さらに、他のBMXのパークと一線を画す強みが最新のテクノロジーをふんだんに使ったデータ分析です。
施設内には9台のカメラと15個のセンサーが設置されており、様々な角度から中村選手の動きをデータで捉えることができます。また、練習中、中村選手自身もバイタルセンサーを身につけることで、常に自分の体調をデータで管理することができるということです。
今後、中村選手が練習を積み重ねる中で集めたデータを基に様々な分析を行って、高得点を取るためには何が必要なのかを、定量的に理解することが、中村選手の更なる飛躍につながっていくのではないかと期待されます。
そんな「データ分析ができるパーク」を前に中村選手も嬉しそうにこう語ります。
「僕の武器はジャンプなんですけど、そのジャンプが一番高い時にスピードは何キロ出ているのかとかこれまで全くわからなかったので、これからどんなデータが集まるか楽しみです。今後はデータも参考にしてライン取りやスピードを調整していけたら、と。」
さらに、パークの制作に伴って、選手のメンタルをデータで管理できるセルフマネジメントアプリケーション「MAKiT」も開発し、メンタルコーチとのやり取りもアプリで一括管理でき、より練習に打ち込める環境を作っていくということです。
この日、クッションプールのあるセクションで、報道陣の前で新技を披露した中村選手。今後もここで新たな技に挑戦していきたいと語ってくれました。
さらに東京での国際大会への意欲について質問が飛ぶと、まずは代表に決まることと前置きをしながらも、
「基本的に参加する大会では常に一番を目指しているので、2020年に東京で開催される国際大会でも一番を目指したいと思っています。」
と強い口調で答え、金メダルへの想いの強さも垣間見えました。
一人のスターの誕生が一つの業界の成長を牽引することは少なくありません。
そうした中で、多角的なデータ収集とその分析が、今後、中村選手、ひいてはBMXの未来をどのように変えていくのか、今から楽しみでなりません。
まずは、今年夏に東京で開催される国際大会に向けて、是非中村選手の活動に注目してみてください。なお、当日の様子はテレビ各局を含む様々なメディアで取り上げられました。
(大藤ヨシヲ)
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