About us データのじかんとは?
様々な場面で女性の社会進出が叫ばれていますが、実際には、女性が男性と同じようにイニシアティブを持って、経済や政治の課題に取り組める、という環境はまだまだ少ないもの。
特に、日本国内では主要国と比較した場合に、経済や政治の分野での女性進出が非常に遅れているということがデータでも指摘されるようになりました。
参考記事:ジェンダーギャップの縮まらない日本に光明はあるのか?ジェンダーギャップ指数2019が発表【最新版】
日本の女性の社会進出、その実情はどのようになっているのでしょうか?今回はデータで見て行きます。
SNSを眺めていると、日々働く女性の声が発信され、ドラマや漫画などでも「働く女性」をテーマにした作品を目にする機会が増えてきています。そうした中でなんとなく働く女性の数は増加しているのかな、と感じている方もいるのではないでしょうか?
そこで、総務省が行っている「労働力調査」から、この10年での働く女性の数がどのように変化しているのかのデータを見ていきます。
まず純粋に数だけで見ていくと以下のグラフのようになりました。
ここでの「就業者」とは自営業主や家族従業者(自営業主の家族で、その自営業主の営む事業に無給で従事している人)、雇用者を指し、一時的に仕事を休業している人も含みます。
2020年のデータを見ると、2010年と比較して20代後半から30代の就業者の数が減っています。これは少子化などの影響による世代の減少を反映しているものと考えられます。20代前半の就業者の数が増えているのは、大学卒業後に就職をするという選択をする女性が増えているという可能性が示唆されます。
女性の社会進出の中でよく使われるのが「M字グラフ」という用語です。これは女性にとって結婚、出産、介護などライフイベントが起こることが多い30代前後で一気に就業する日の数が減るというもので、実際2010年も2020年も30代の女性の就業数が停滞する傾向にあることが見て取れます。
一方で特に大きな変化があったのが40代以降の就業者の増加です。特に団塊ジュニアに当たる2020年時点で45歳〜49歳という年齢階級では、ちょうど育児などが落ち着くタイミングと重なり大きく増加しています。
また、団塊の世代を含む65歳以上の年齢階級でも、その数は大幅に増えています。
一方で就業者全体の女性比率という点でグラフを見て行きます。
2020年は2010年と比較して、ほとんどの世代で就業者のうち女性が占める割合が増えていることがわかります。特に30代の就業者の比率は3%以上増加しており、働く女性は以前よりは増えていると言えます。一方で実際に女性の比率が半数程度になっているのは15歳から20代前半までで、残りの年齢階級では、まだまだ男性の方が多いというのが現状のようです。
前述の結果から就業者の中で女性の割合は徐々に増えてきたということが明らかになりました。
一方で、「働く女性」の数が闇雲に増えても、実際に役職に就くなど、イニシアティブをもって働ける環境にいる女性の数が増えなければ、本当の意味での女性の社会進出には至りません。
そこで、2020年最新版の「労働力調査」から男性・女性別に、就業者の数のうちどの程度「非正規雇用」で働く人がいるのか、をグラフ化したのが以下になります。
このグラフを見ると、女性はライフイベントが多い30代以降、グッと非正規雇用の数が増え、40代後半では女性の就業者のうち、半数以上の人が非正規雇用で働いているということがわかります。
一方男性では逆にライフプランを迎える30代以降、非正規雇用で働いている人は、10%以下という状態が定年を迎える直前の50代まで続きます。
続いて、就業者全体の中で、企業などで役員になっている人の割合を男女別に出したものが以下になります。
どの世代でも共通して男性の方が役員率は高く、特に役員の比率が高くなる40代後半では男性の役員率は、女性の3倍近くになっています。
これまでのキャリアの結果が出る世代とも言える、40代50代前後で、女性の半数以上が非正規雇用なのに対し、男性の役員率は非正規雇用率よりも高く、男性と女性では、キャリアプランは今でも全く違うものであるということがわかります。
こうした環境下で若い女性がロールモデルとなる人材を見出すことは非常に難しく、働くモチベーションの低下にも繋がります。
また、実際問題として正規雇用になる場合に求められる週に5日、8時間労働、という現行の労働スタイルは、介護や育児などさまざまなライフプランと並行してこなすことが難しいもの。こうした労働環境の改善も大きな課題として挙げられます。
ここまでデータによってジェンダーによる労働状況の格差があることを明らかにしましたが、ここで、日本だけでなく世界的にみて女性がどのように活躍してきて、今後どのような影響力を持ち得るのかというところを見ていきたいと思います。
ジェトロ(日本貿易振興機構)が公開している「データで見る 世界の女性市場・ ビジネス」という資料によると、2011年時点で世界で労働に従事する人のうち、女性が占める割合は、50%以上を占めているということです。
女性の社会進出に伴い、女性の可処分所得も増加。女性向けの衣料品やコスメといった商品消費や習い事などさまざまな分野で女性の消費者層は拡大しています。
また女性の家事労働の比率が高いというのは多くの国が抱えている課題ではありますが、そのトレードオフとして家庭内で使用する家具や家電など、比較的高額な商品の意思決定権を女性が握っているという傾向も世界的に見られます。
女性向けの商品やサービスが増加する中で、意思決定層として女性を起用する、という動きも活発になっています。日本国内でも消費者として、そして労働者としての女性にきちんと目を向けていけば、自ずと要職に女性を起用する必要性が認識されるようになるのではないでしょうか?
【参考引用サイト】 ・ 統計局ホームページ/労働力調査 ・ 就業者、雇用者|労働統計用語解説|労働政策研究・研修機構(JILPT) ・ データで見る 世界の女性市場・ ビジネス
(大藤ヨシヲ)
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!