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いま、国内はこれまでにない人手不足。好景気で仕事はあるのに人がいないという状況が続いています。一方、2018年7月時点での2019年卒の内定率は80%を切っており、前年同月比でマイナスとなるなど、大手志向の強まりもあるようです。そんな中、苦戦しているのが外食産業。意外な方法で働き方改革を進めています。
吉野家に行ったことがないという読者はほとんどいないでしょう。奥に厨房があり、U字型に配置された客席の中を店員が歩き回るスタイルには馴染みがありますよね。
しかし、そんな吉野家が5年ぶりの赤字に転じたというニュースがありました。2019年2月期の最終損益が17億円の黒字予想から一転、11億円の赤字になったというのです。
その原因は2つ。ひとつはコメを始めとした原材料費の高騰、そして人手不足による人件費の高騰です。前者は季節要因もありすぐの解決は難しい課題ですが、後者については従業員の負担を減らして人手を確保するという方法もあります。
そういった事情から今、じわじわと増えているのが「黒い吉野家」です。
めちゃくちゃ忙しい「ブラックな」吉野家を想像してしまいますが、まったくの真逆。黒を基調とした外観デザインが特徴的な実験店舗です。
380円の「牛丼」よりも高価格な商品を扱っているのも特徴のひとつですが、大きな変化は店舗のレイアウト。あの「U字型」ではなく、レジで注文して客が自分で席まで商品を運ぶ「カフェ型」になっているのです。
U字型のレイアウトでは、席につくとすぐに店員が駆け寄り、注文をすればまたたく間に牛丼が配膳されました。食べ終わって席を立てばまた店員が駆け寄り、会計して店を出ます。
パタパタと忙しそうに働く店員と仕事の合間に丼をかきこむ男性サラリーマン。このセットは日本の風物詩のひとつになりつつありますが、一方で「忙しすぎる」という負の側面も表現していると思いませんか?
実際、少なくとも店員にとっては動きっぱなしの過酷な労働環境だったと言えるでしょう。それがカフェ型に変わることで、接客と配膳の店員はレジからほとんど動く必要がなくなり、だいぶ働き方が楽になります。
吉野家では、2019年以降、数百店を新レイアウトに変更していくとのことです。人手不足解消の一手になるでしょうか。
厚生労働省によると、2018年4月の有効求人倍率(パート含む)は全体で1.35倍ですが、「接客・給仕」は3.44倍、「飲食物調理」でも3.15倍とかなりの水準で、深刻な人手不足の状態です。
日本全体の人手不足から仕事を選びやすい環境にある求職者たちが、過酷なイメージのある外食産業を敬遠している現状が見えてきます。つまり、これは吉野家だけの問題ではないのです。
このような動きを受けて、同業他社でも「働き方改革」の動きが見えてきました。
セブン&アイ・フードサービスの運営する「デニーズ」は厨房の気温を2〜3度下げる設備の導入を進めています。また、イートアンドの「大阪王将」では女性や高齢者にはキツい「鍋ふり」の工程をなくしてオーブンレンジのみで完結するキッチン設備の導入を進めています。また、ロイヤルホールディングスの「シズラー」は初めての小型店舗を東京都内に開き、レイアウトも工夫することで店員の歩数を6割減らす実験を行っています。
外食産業は、価格競争が激しい分野だけに価格に反映されやすい賃上げはしにくく、また、業界のイメージが悪いためにそれだけでは人が集まりにくいという二重の困難があります。
初期の設備投資をしてでも働き手を確保したいという思いがあるのでしょう。
【参考記事】
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