2018年度大会の日本代表の挑戦はベスト8進出を賭けた戦いで、ベルギーに敗れた。
大会開始以前の期待値が決して高くなかったことを思えば、誰もが予想しなかった上々の結果だったといえるだろう。しかしベルギー戦、日本が2点リードした時点で、ベスト8という悲願が達成される、と多くのファンが確信に近い気持ちを抱いただろう。ついにその時が来るのだと夢見たのもつかの間、1点を返されると20分余りで逆転を許してしまう結果となった。結果は2-3。スコアだけを見れば拮抗していたかに見えるゲーム。これを惜敗と呼ぶべきなのか、完敗ととるべきなのか、まだ感情面では決めきれない部分もある筆者だが、データ上ではどのような数字が表れていたのかを見ながら試合を振り返って見たい。
FIFAのホームページに出ている統計をベースに振り返ってみよう。
ボール保有率は日本44%・ベルギー56%とベルギーが日本を上回った。シュート数は日本8本で枠内4本・ベルギー18本で枠内10本、パス精度日本83%(パス数453)・ベルギー87%(パス数621)といずれもベルギーが日本を上回る数字が出ており、戦前の様相通り、圧倒的なチーム力を見せつけられた。
守備の面では、ボール奪取回数が日本40回・ベルギー28回、タックル回数日本8回・ベルギー2回、シュートブロック数日本6回・ベルギー3回、クリアーボールはなんと日本39回に対してベルギーが12本。攻め込まれながらも、前半から先制・追加点まで以下に日本のディフェンスが集中していたかを物語っている。
総走行距離は、この日中盤でのゲームメイクという役割を12分に果たした日本の10番香川真司が両チーム合わせてトップの12,047㎞をたたき出し、厳しいプレスの中、多くのチャンスを創造した。その他、長友佑都(11,504㎞)、長谷部誠(10,666㎞)、乾貴士(10,417㎞)、酒井宏樹(10,374㎞)、大迫勇也(10,179㎞)と6人の選手が10㎞を超えた。一方ベルギーもトマ・ムニエ(11.916㎞)、デ・ブルイネ(11,724㎞)、アクセル・ヴィツェル(11.015㎞)と3選手が11㎞超え、他2選手が10㎞超えと、ベルギーの本気度がうかがえる数字となっている。
トップスピードでは両チーム合わせて酒井宏樹が32.40㎞/hが最高値、2位はケビン・デ・ブルイネと原口元気の31.97kmだった。見事な先制点を決めた原口元気と左サイドの二人が上位に。そして、スプリント回数では、総走行距離でも11㎞超えた長友佑都が56回、追加点を決めた乾貴士が59回と右サイドの二人が驚きの数字をマークした。この左右対称的な数字は、実際に得点が産まれたこともあり、この試合チームの多様性としてうまく機能していた。ベルギーでは総走行距離で12㎞近かったトマ・ムニエがスプリント回数65回という驚異的な数字をたたき出している。
後半69分、フェルトゲンがヘディングした折り返しのセンターリングともとれるボールは無情にも日本のゴールに。これまで日本は相手の攻撃に耐えながら、すきを見て攻撃に転じ、五分五分の、時にそれ以上の戦いをしていましたが、2点目失点した後のベルギーの猛攻は、画面越しですら気迫と迫力を感じさせるほどで、さらに74分にはフェライ二が打点の高いヘディングで同点弾を決める。
同点にされても日本は攻めのスタイルを変えず、81分疲れの見えた柴崎岳に替えて本田圭佑を投入。今大会初めて香川真司との共演で、勝負を決める3点目を取りにいった。いくつかの大ピンチを、GK川島永嗣の好セーブもありしのぐと、試合終了間際、本田圭佑のフリーキックから得たコーナーキック。得点して日本の勝利、または延長戦突入と思われたが、ベルギーの選手たちは一瞬の隙を見逃さず、美しいカウンターを決められてしまった。
3度目の挑戦となったベスト8への戦いで、日本代表はまたもや敗れ去った。
最もベスト8に近づいたのは2008年南アフリカ大会パラグアイ戦でのPK戦による敗退だろう。しかし、今回のベルギー戦で日本代表は大会史上最高のパフォーマンスを見せてくれたと筆者は感じている。しかし、客観的には、相手に主導権を渡してしまっている部分が数字上にも現れていた。攻めに耐え、少ないチャンスを確実に掴み取る技術を持つことが強豪国と戦う上で、今後尽力していくべき課題ではないだろうか。
ちなみに、FIFAのホームページによるとワールドカップの決勝トーナメントで2-0からの逆転劇は48年ぶりだったそうだ。1970年にメキシコで開催された、西ドイツ対イングランドの準々決勝の試合で、西ドイツが2-0から逆転し、イングランドを下している。この試合では、後半残り22分から西ドイツは2点を決め、90分を2-2で終えて迎えた延長戦の18分に西ドイツのゲルト・ミュラーが決勝点を挙げている。
試合後のインタビューで西野監督が「(日本に)何が足りないのか、それはすべてだと思います。わずかではありますが、この壁はまだ厚いものかもしれない」と言っていたが、その壁に果敢に挑み、チームとしての方向性を見せてくれた今回のワールドカップは、日本のサッカーが新しいステージに入ったことを感じさせてくれる大会となった。
この日の視聴率は深夜3時からの放送にも関わらず関東地区で30.8%(瞬間最高視聴率42.6%)という高い数字を示し、これはNHKで中継された午前3時から午前5時までに中継されたサッカー日本戦では2010年南アフリカ大会のデンマーク戦を超えて最も高いものとなり、番組占拠率は87.8%で、テレビを見ていた人の9割がこのベルギー戦を見ていたことになる。
これは4年後に向けて、日本代表の挑戦はまたはじまりますが、敗戦にもかかわらず日本の戦いぶりをたたえるムードが強かったことに加え、この数字は多くの国民が日本代表をサポートしていることを物語っている。
今後の日本サッカーの発展が楽しみだ。
(マシタアツシ)
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