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沖縄企業3社から学ぶ、顧客を知るためのデータ活用–沖縄県主催データ利活用セミナー参加レポート

2024年7月30日、沖縄県那覇市の沖縄県立博物館・美術館にて、沖縄オープンデータプラットフォームを運営する沖縄県が主催する「データ利活用セミナー 第3弾 県内事例発表会」が開催された。同セミナーの前半では、自社データとオープンデータを活用して有効な取り組みにつなげた沖縄県内企業3社の事例発表が実施。

後半では、インバウンドデータに知見が深いVpon JAPAN株式会社の妻夫木友也氏により「データ活用で顧客を知るインバウンド誘客の超基本」というテーマで基調講演が行われた。また、デジタル人材育成の専門家株式会社ディジタルグロースアカデミア高橋範光氏により「顧客理解のデータ活用とデジタル人材育成」が講演された。

本セミナーでは、自社データやオープンデータを活用して「顧客が何を考えて行動しているのか?」「なぜ商品やサービスを購入したのか?」といった内容を分析して、アプローチしていく重要性を学べる。また、データを視覚化して見える化することで、当初の目標に縛られない柔軟な目標設定ができるという気づきも得られた。

本セミナーで講演された、沖縄県内3社のデータ活用事例を紹介しながら、基調講演で共有されたデータの分析手法や活用方法を紹介する。

         

沖縄オープンデータプラットフォームとは?

沖縄オープンデータプラットフォームとは、県内企業のデータ利活用を促進するため、行政や民間のオープンデータを公開するWebサイト。オープンデータのカタログ表示やダウンロード機能に加え、データの可視化やデータ活用事例の紹介等、企業がデータを活用しやすい情報を提供している。
出典:沖縄県「データ活用プラットフォーム構築事業
[webサイト] https://odcs.bodik.jp/okinawa-dpf/

データドリブンセミナー第3弾|県内企業によるデータ活用の事例が紹介

データ利活用セミナー第3弾の会場風景(撮影:金城ゆうき)

沖縄県では、新・沖縄21世紀ビジョン基本計画に基づき、全産業の労働生産性向上を図るため、DX推進の取り組みを『ResorTech Okinawa(リゾテックおきなわ)』と称して、さまざまな取り組みを推進している。その一環として、今回のデータドリブンセミナー第3弾 県内事例でわかる!『顧客を知る』ためのデータ活用!が開催された。

本セミナーの目的は、DX推進において重要な役割を果たすデータ活用について、県内企業の事例を中心に紹介することだ。

沖縄県は労働生産性や県民所得が全国最下位といった課題を抱えており、解決には、企業などの稼ぐ力向上につながるDXの推進が必要である。そして、DXを推進するためには、データの利活用が鍵となる。一方で「データの活用で具体的に何ができるのか」「どこから取り組めばいいのか」といった声もあるのが現状だ。

そこで本セミナーでは、オープンデータ(誰もが無料で二次利用可能なデータ)と自社データを分析し、マーケティングに活用した具体的な事例が紹介された。例えば、顧客ニーズの把握やターゲット層の選定に関して「データをどのように活用したのか」「どのような成果が得られたか」が詳しく説明されている。

後半の基調講演では「データ活用で顧客を知るインバウンド誘客の超基本」と「顧客理解のデータ活用とデジタル人材育成」というテーマで講演が行われた。

沖縄県内企業3社のデータ利活用の事例と基調講演を聞くことで、さまざまな業種のデータ活用事例を参考にしながら、自社で取り入れる際の具体的な方法を学べるだろう。

出典:令和2年度沖縄振興推進調査|内閣府・沖縄総合事務局

沖縄企業3社によるデータ利活用の事例

株式会社OCS、株式会社リウボウインダストリー、株式会社野嵩商会の3社は、それぞれ異なる業種で事業を展開しているが、データ活用による顧客獲得や顧客単価の向上を目指している。

以下で、3社のデータ利活用の事例を紹介する。

データ分析によりターゲット層を再定義

クレジットカード、キャッシング、各種ローンを提供する株式会社OCSは、会員数の減少や若年層の不足、カード利用額の伸び悩みという課題に直面していた。そこで、OCSが所有しているデータと沖縄県のオープンデータを使用し、PPDACサイクルを活用したデータ分析に着手している。

株式会社OCS 営業統括部 営業企画課 伊藤 彰記 氏(撮影:金城ゆうき)

■PPDACサイクル

問題解決の各段階をProblem(問題)、Plan(調査の計画)、Data(データ)、Analysis(分析)、Conclusion(結論)に分割した考え方

当初は会員に若年層が少ない点が課題だと考えていたが、データ分析をしてみると、40〜60代の利用が高水準であるとわかった。それにより、若年層へのアプローチよりも、現在のコア顧客層である壮年層・高齢層に焦点を当てた施策のほうが即効性があると判断した。

※出典:株式会社OCS営業統括部営業企画課 伊藤彰記氏「顧客を取り込む」ための「顧客を知る」取り組み

株式会社OCSの伊藤彰記氏は、次のように述べている。

「年代別の人口や所得構成などのデータも比較すると、若年層の取り込みが利用増に比例するとは言えないと気づき、現在利用数の多い顧客層にアプローチする方が即効性があると考えました。当初の問題や計画に縛られすぎずに、データを見ながら柔軟な発想で考えることが重要ですね。」

このように、自社データとオープンデータを分析・活用し、ターゲット層を再定義し、マーケティング施策の立案につなげている。OCSでは、年代別のデータだけでなく、会員の市町村別分布データと人口統計のデータを活用したり、曜日ごとの利用状況を分析したりするなどの取り組みも行う予定だ。

購買・行動データを見える化してアプローチ

百貨店事業を営むリウボウインダストリーの外商部門では、購買データは蓄積しているが活用できていないことに課題を感じていた。

そこで同社は、2019年3月から2023年9月までの購買データを収集し、ダッシュボードを作成。これにより、顧客ごとの購入頻度や購入商品を全従業員が把握できるようになった。取り組みの成果は早速現れていると、株式会社リウボウインダストリーの森田和也氏は語る。

株式会社リウボウインダストリー 外商部 外商課 森田 和也 氏(撮影:金城ゆうき)

「データを活用して、前年お中元の購入がなかった顧客1,000件をリストアップし、お中元カタログと申込書を送付しました。その結果、前年購入がなかった顧客からの購入件数が160件増加しています。

今後は、住所情報を活用した新規顧客の開拓や購買データから顧客が求める商品を把握し、品揃えを強化していきたいと考えています。」

また、24時間営業のスーパーマーケット「ユニオン」を運営する株式会社野嵩商会の事例も、データ利活用の参考になる。同社は2022年10月にポイント付き電子マネー「ユニーカード」をリニューアルし、販売促進活動のデジタルシフトを図っている。

株式会社野嵩商会 電算室 室長 仲里 健司氏(撮影:金城ゆうき)

データ分析により、会員の年齢構成が50代以上に偏っていることが判明した。そのため、20代から40代前半の顧客を増やすために、スマートフォンアプリなどを使った販売促進活動などを行い、販促活動を展開した。結果、50代以上の顧客は変わらず来店を続ける一方、売上向上にもつながってきている。

3社の事例に共通するのは、データ分析によって当初の仮説とは異なる結果が得られた点である。OCSは若年層ではなく壮年層・高齢層に注目し、リウボウインダストリーは顧客情報を一括管理することで新たな顧客層を開拓した。野嵩商会も、若年層をターゲットにしつつ、既存の50代以上の顧客の重要性を再認識している。

データ活用の専門家による基調講演&質疑応答

基調講演では、2人の専門家により、データ活用によるインバウンド集客と顧客理解が説明された。

自社データと外部データの効果的な活用

Vpon JAPAN株式会社の妻夫木友也氏は、インバウンド顧客の売上貢献度や顧客ニーズの把握、効果検証の難しさといった課題を挙げ、これらの解決にはデータの活用が必要だと説明する。

Vpon JAPAN株式会社 妻夫木 友也 氏(撮影:金城ゆうき)

特に強調されたのは、自社データの重要性だ。妻夫木氏は次のように述べている。

「会員登録情報やユーザーアンケート、購入履歴などの自社で収集したデータを充実させることで、顧客がどのような感情で行動しているのかがわかるようになります。」

さらに、これらのデータに加えて、アプリの利用履歴などのデータも取り入れると、顧客の全体像がより鮮明になる。例えば、どのようなアプリを使用しているかによって、ユーザーのライフスタイルを推測できるため、プロモーション戦略立案の際に有効活用できるのだ。

一方で、オープンデータなどの外部データは自組織でリーチできない広い範囲のデータが取れるが、内容によっては他社との差別化要因にはなりにくいデメリットがある。そのため、自社データとオープンデータのバランスを取りながら活用することが重要だ。

さらに、妻夫木氏は、インバウンド顧客におけるデータ活用の事例を挙げた。

「慶良間諸島などの自然豊かな地域を訪れる観光客は、どのようなライフスタイルの人なのかを分析しました。すると、台湾の特定地域に住むスポーツ好きの方々が多く訪れていることが判明したのです。分析結果をもとに、台湾在住のスポーツが好きな人に向けて、離島のアクティブな側面を強調したバナーや画像を作成し、広告配信しました。その結果、広告を見た人の1.7%が実際に日本を訪れ、そのうちの7.5%が私たちが狙っていた沖縄の特定地域を訪問しています。」

このように、データを活用すると、仮説の立案から実行、そして効果検証まで一貫して数字に基づいた施策が打てることがわかる。すべての過程を数値で把握し、客観的に評価できることが、データドリブンの強みである。

顧客の属性だけでなく、行動の目的を理解する

株式会社ディジタルグロースアカデミアの高橋範光氏は、顧客理解には単なる属性情報(名前、性別、住所、職業など)の理解だけでなく、行動や目的の把握が必要だと説明する。

株式会社ディジタルグロースアカデミア 代表取締役会長 高橋 範光 氏(撮影:金城ゆうき)

「行動の目的を理解することが本来の顧客理解のデータ活用です。顧客の目的が理解できれば作る商品や提供する商品がわかるようになります。」

また、購買ニーズやタイミングを逃さない戦略の重要性を強調した。例えば、母の日に花を購入した顧客に対して、次年度も同時期に通知を送るなど、顧客の行動パターンや目的を把握し、適切なタイミングでのアプローチが重要だ。

そして、得られたデータを活かすためには、RAG技術(検索拡張生成)を活用する。

「例えば、「優良顧客」「既存顧客」「新規顧客」に対しては、それぞれ異なるアプローチが必要となります。特に差別化戦略が求められる「優良顧客」に対しては、RAG技術を活用することで効果的な分析が可能になります。

具体的には、これまで活用してきた購買データや属性情報に加え、音声データや購買に至らなかった事例のデータなど、多様な形式の情報を徹底的に蓄積します。これらのデータをRAGで分析することで、従来はベテラン社員の経験や勘に頼っていた部分を、データに基づいた戦略立案へと転換できます。」

このアプローチにより、企業固有の情報や過去の事例を効果的に参照し、各顧客セグメントに対する精度の高い戦略立案、より実践的な顧客アプローチが可能となるということだ。

質疑応答

質疑応答では、Vpon JAPANの妻夫木氏に対して「広告を見てクリックした人が沖縄に訪れたかどうかはわかるのか」という質問がされた。

妻夫木氏は、次のように答える。

「Vpon JAPANでは訪日検証という仕組みを活用しており、人流データ(人がいつどこに何人いるのかを把握できるデータ)とスマートフォンのデバイスのIDを紐づけて取得しています。それにより、マップ上で、実際に訪問しているのかや紹介スポットに訪問したのかなどを足跡を見るように可視化できます。」

データ分析においては、トラッキング技術などを活用して、ターゲットの情報を詳細に追跡できる。顧客の行動を知るだけでなく、実行した施策に効果があったのかを把握するためにも、トラッキング技術は活用できるだろう。

まとめ:データから見えてくる顧客理解が重要

本セミナーを通して、データを活用することで、自社の課題をさまざまな角度から分析でき、マーケティングに活用できると認識できた。

印象的だったのが、マーケティング課題を解決するために設定した目標でも、データを分析してみると、異なる解決策が見えてくる点だ。問題や計画に縛られすぎずに、データを分析しながら柔軟に施策を打つことが重要である。

また、自社データ・オープンデータを問わず、顧客を理解するためには、属性を知るだけでは足りない。行動データや購買データなどをもとに、顧客の目的まで把握することが必要だ。そのためには、データを単純に分析するだけでなく、今までのビジネス経験も活かしながら、目的を理解する姿勢が求められる。

本セミナーでは、データを利活用している企業の事例や基調講演を受けながら、業界ごとのデータの具体的な活用方法を理解できた。社内でのDX化とデータの利活用を推進している企業やこれから始める企業にとって参考になる情報が多いだろう。

取材・ライティング・写真:金城ゆうき
法学部を卒業後、ITベンダーに入社。主にPCやサーバーなどのハードウェアや業務効率化向けのシステム販売に従事。現在は、Webライター・ディレクターとして活動しており、BtoB向けの記事制作を行っている。IT系のジャンルに強く、業務効率化システムや生成AIジャンルなどの記事執筆多数。
 

(TEXT・取材・撮影:金城ゆうき 編集:藤冨啓之・野島光太郎)

 

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