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1993年3月のバーゼル規制適用や2013年1月のBCBS239公表など、金融機関を取り巻く外部環境は大きく変化。三菱UFJ銀行では、それらに対応するため「データ収集強化」と「データガバナンス体制の整備」を進めてられてきた。2019年からは「データ利活用」という新たなフェーズに移行。しかし、その道のりは決して簡単なものではなかった。
まずは、2019年度より導入していたBIツールを用いたデータ利活用の手法について、藤咲氏のチームが試行品・デモ版を作る等の工夫もしながら、現場への説明と活用推進をスタートした。
徐々に「BIツールは使えるかも」という声が同行に広がり始めた。そこで、BIツール利活用に対する本格的な協力を得ようと各部署のマネジメント層にも声を掛ける。
「多少綺麗ではなくても今あるデータをスキルがあればよりインサイト(気づき)を得る事は可能ではないか」という考えのもとBIツール利活用に対する支持を取り付けていった。
そして、ある転機が訪れる。トップ営業が「収益向上のためのBIツールによるデータ分析は十分に活用できる」と評価してくれたことで、社内にBIツール活用の必要性がさらに広まり、大きな追い風となった。
「営業におけるデータの利活用の成功もあり、BIツールで分析したデータが業務の効率化だけでなく、収益向上にも寄与することを証明できた。これは当行のデータ利活用創成期フェーズにおいて大きなターニングポイントだった」
さらなるBIツール普及のため、寺子屋制度を構築した。同制度は各部署・チームの希望者に“データを使って実現したいこと”を持ち寄ってもらい、講師陣がその実現方法をレクチャーするという仕組みだ。
さらに、社員全員がBIツールスキルをExcelスキルと同じレベルで習得できるようにと考え、人事部にもアプローチを開始。BIツールスキルを人事部研修のコンテンツに追加してもらった。
こうしてデータ利活用の重要性は社内に啓蒙できたが、実際に利活用を進めるにあたっては、さまざまな課題にぶつかった。例えば、「データマネジメントのあるべき論」ついてさまざまな議論が交わされた。然しながら議論をしていてもデータマネジメントの共通見解や実行計画には進まなかったという。
「データマネジメントの推進に優先すべきは議論ではなく、目的達成のための手段として、できることから開始することが重要だ」と考えた。全行共用のデータの整備と連動して、少しずつデータの説明文書であるデータ辞書を整備するなどの活動を通じてデータマネジメントに対する行内理解を高めていった。
このような地道な取り組みを経て、DX・Data・BI・AIを総合的に企画推進する「デジタル戦略統括部」が生まれた。
現在、地道なデータ整備・データマネジメント高度化を図りつつ、新たな取り組みとしてAIに対する非構造化データのデータマネジメント・データガバナンスの検討に挑戦中である。
藤咲氏は「データマネジメントはゴールの無い活動。今できることをどのように発展させるのか。ユーザーや経営層と話し合いながら当面のゴールを決めつつ、着実に取り組むことが大切だ」と自身の考えを述べ、話を締めくくった。
司会進行の吉村氏は「データマネジメント推進するにはさまざまなハードルがあるが、社員にスキルを身につけてもらうことがそのハードルを乗り越える一つの道であることに気付かされた」と感想を述べた。
最後に、吉村氏の進行により質疑応答が行われた。銀行における「守りのDX」や各業態横断でのデータマネジメントの課題および対応状況についてなど、さまざまな質問に対して藤咲氏から有益な回答がなされていた。
近年、AIやデータ活用がますます活発化しており、ビジネス環境の急速な変化にどれだけ迅速に対応できるかが大きな課題となっています。そのための鍵を握るのがデータマネジメントです。しかし、データマネジメントに関するナレッジやノウハウは、一般にあまり公開されておらず、たとえ情報があったとしても、業界特有の事情に即したものは入手しにくいのが現状です。そこで今回は、AIやデータ活用が特に盛んで事例も豊富な金融業界を対象に、全6回のシリーズセミナーを開催。金融業界のデータマネジメント最前線シリーズでは、業種や業界ごとにナレッジやノウハウを共有する場を設けることで、業界全体およびデータマネジメントのさらなる活性化に貢献したいと考えています。
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