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「王道」や「当たり前」を疑い、エビデンスで日本のマーケティングを再構築する〜一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)が発足

エビデンスにもとづいたマーケティングを日本市場に浸透させることを目的として、一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)が発足、2024年10月23日に記者発表を行った。マーケティングについて「『王道』や『当たり前』をうのみにしていくことには、時として危険が伴う」と指摘。その設立背景などとともにEBMIの存在意義を語った。

         

2024年10月23日に記者発表会にて

「成功者の武勇伝」から「再現性のある成長法則」へ

冒頭で代表理事の木田浩理氏があいさつに立った。同氏は長くデータサイエンティストのキャリアを積み、現在は三井住友海上火災保険株式会社でCMOとして、データやマーケティング領域を統括している。マーケティング関連の書籍を出版するなど、「日本企業がどのようにマーケティングやデータを使ったビジネスを進めていけるか」をテーマに、発信活動も積極的に行っている。

木田 浩理氏 一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI) 代表理事/三井住友海上火災保険 CMO CXマーケティング戦略部長

木田氏は、EBMIのミッションと設立趣旨について「日本でマーケティングを勉強していく中で、例えば『上位20%のヘビーユーザーが売り上げの80%をもたらしている』など、『当たり前』とされていることがたくさんあります。しかし実際には、それに該当しないケースも珍しくありません。日本のマーケティングでは、成功者の事例がまるで鉄則のように語られますが、多くはエビデンスにもとづいておらず、再現性もありません。本来は、根拠のあるマーケティングが行われるべきだと考え、日本の市場・カテゴリーならではの、再現性のある成長法則を探索・検証する場をつくりました」と説明した。

日本のマーケティングへの問題提起と、EBMIのミッション

EBMIの研究主幹には、マーケティングサイエンティストであり、株式会社コレクシア執行役員の芹澤連氏が就任。さらにアカデミックアドバイザーには中央大学名誉教授の田中洋氏を招請するなど、日本における事実にもとづくマーケティングの実装をリードする人物が名を連ねる。

EBMI組織図

すでに、この動きに賛同し、伊藤ハム米久ホールディングス株式会社、株式会社カインズ、株式会社かんぽ生命保険、サントリー食品インターナショナル株式会社、ジャパンフリトレー株式会社、三井住友カード株式会社、三井住友海上火災保険株式会社などが加盟する他、複数の広告代理店がパートナーとして手を挙げている。

芹澤 連氏 一般社団法人日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)研究主幹/株式会社コレクシア 執行役員

研究主幹を務める芹澤氏は、EBMI発足に当たり、「データを通じて私が見ていることと、会議室などでマーケティング担当者らが交わしている会話の内容に、大きな隔たりをずっと感じていました。海外には、マーケティングの『実際』を検証する取り組みがありますが、日本においては、田中(洋)先生は長年取り組まれていますが、まだまだ一般的とは言えません。そのことを問題提起し、ご賛同いただいたのが研究振興評議会のメンバーの皆さんです。EBMIでは、海外の先行研究を積極的に紹介していきますが、一方で、日本ならではのエビデンスやカテゴリーの成長法則を、プラクティカルな知識として提唱していきたいと考えています」と意気込みを語る。

田中 洋氏 日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)アカデミックアドバイザー/中央大学名誉教授

また、アカデミアの視点から助言を行う中央大学名誉教授の田中氏は、「以前から『マーケティングの一般化』に関心がありました。マーケティングにはある種の規則性があり、1990年代辺りからアメリカのアカデミアでは、それを解明する動きが始まっていますが、日本では着目されてきませんでした。そんな中、芹澤さんが出された書籍『戦略ごっこ―マーケティング以前の問題』(日経BP)は、非常に大きなインパクトを与えたと思っています。エビデンスベーストという考え方が、徐々に浸透しようとしている今、アドバイザリーボードとしてお手伝いできることに大きな意義を感じます」と、EBMIへの期待を表明した。

記者発表では、研究振興評議会のメンバーである研究パートナーのカタリナ マーケティング ジャパン株式会社取締役副社長COOの松田伊三雄氏、ジャパンフリトレーの経営企画本部本部長の羽藤昇平氏も挨拶した。

松田 伊三雄氏 カタリナ マーケティング ジャパン株式会社取締役副社長COO

実務における有用性を評価。その中で再現性の高い知識やルールを導き出す

今後の活動については、事務局長・代表理事である村山 幹朗氏より伝えられた。EBMIでは、加盟事業会社のCMOクラスで構成する研究振興評議会の他、テーマ別の研究を推進する「研究分科会」が中心となって研究活動を進めていくという。

村山 幹朗氏 日本エビデンスベーストマーケティング研究機構(EBMI)事務局長・代表理事/株式会社コレクシア 代表取締役

研究振興評議会の主な役割は、エビデンスレビューと経験的一般化*だ。例えば、『戦略ごっこ』実証分科会やメンタルアベイラビリティ分科会、リテールサイエンス分科会など、当該テーマを専門に研究する各分科会がエビデンスを調べ、実際のデータで実証を行う。研究振興評議会は、その分科会の報告を受け、評議員がエビデンスをレビューし、実務における有用性(再現性やビジネスインパクト)を評価。「有用性が高い」と評価されたエビデンスは、「EBMI公認エビデンス」として会員に還元していく。

*実際のデータから観察されたパターンや傾向をもとに、広範な状況にも適用可能な知識やルールを導き出すこと

研究振興評議会と研究分科会の役割。EBMI公認エビデンスをもとに、学習コンテンツも整備していくという

学習コンテンツとしては、すでにCMOクラスの講師陣による「EBM専門家 養成講座」の受講者を募集している。同講座では、座学や演習、ワークショップなどを通して、エビデンスをビジネスの成果につなげる視点や技術の習得を目指す。

(現在受講者募集中の講座)
・エビデンスベーストマーケティングの基礎(EBMの基礎を理解し、商品/価格/流通/広告を事実ベースで考えられるようになる)
・自社ブランド専用の「成長フレームワーク」開発(CEPを軸としたブランド管理を学び、「自社ブランドの育て方=虎の巻」をつくる)
・広告意思決定論-エビデンスに基づく広告戦略‐(広告の働きを正しく理解し、適切な広告戦略の立案や企画評価の能力を身につける)

マーケティングの効果が疑問視され始める中で、エビデンスにもとづくマーケティングの普及は、日本企業がさらなる成長を遂げるための鍵となるはずだ。EBMIの今後の活動に注目していきたい。

記者発表(2024年10月23日)に発表された今後のEBMIの活動予定

(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣 PHOTO:Inoue Syuhei 編集:野島光太郎)

 
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