「大学入試=一般入試」はもう時代遅れ?有名私立大学の実情と偏差値との関連性を徹底調査 | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
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「大学入試=一般入試」はもう時代遅れ?有名私立大学の実情と偏差値との関連性を徹底調査

「大学入試=一般入試」はもう時代遅れ?有名私立大学の実情と偏差値との関連性を徹底調査

筆者が大学入試を受験したのは18年前のことだ。当時は大学に入学するなら「一般入試」という感じであり、筆者が卒業した公立高校ではあまり推薦入試を良くは思われていなかった。しかし、近年となると私立大学での受験は推薦入試が一般的になっているイメージが強い。そのなかでも多くの人々が関心を寄せる「有名私立大学」の入試の様相はいかがなものなのだろうか。

これまで多くの大学をめぐるテーマをデータで語ってきたからには、多くの人がなんとなく抱いているこのイメージの解像度を挙げる責任があるだろう。そこで今回は、有名大学の入試をめぐる実情を関東・関西で比較しながらまとめてみた。なお、この記事では『蛍雪時代2025年度用大学の真の実力情報公開BOOK』を用いている。

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「一般入試で入学」はもう古い?

まずは、個々の大学を見る前に、大学全体における入試方式別の入学者の割合を見ていきたい。私立大学では一般選抜は38.3%しかない。学校推薦型選抜は38.6%にも及び、このうち指定校制は59.2%である。AO入試をはじめとする総合型選抜は17.9%だ。一方、国立大学では一般選抜が80%を超え、私立大学とはまったく様相が異なる。

蛍雪時代によると、この20年間で入試の多様化が進み、一般選抜での入学者の割合が低下しているという。指定校推薦は様々な制約があるが、確実に入学できるため、学生の人気は高い。現在では私立大学の4分の3の学部で、学生募集の主力が総合型選抜・指定校推薦になっているという。私立大学に限って言えば、「一般入試で入学」というスタイルは古いのだ。

一般選抜の高さが目立つ青山学院大学

それでは、有名私立大学では、一般選抜での入学者数の割合はどの程度うだろうか。関東では有名私立大学、俗に「MARCH」(明治大学、青山学院大学、立教大学、中央大学、法政大学)のうち、明治大学を除く4校で比較したい。取り上げる学部は法学部、文学部、経済学部の文系主要3学部である。計算は各学部の一般選抜・指定校推薦の1年次入学者数を各学部の1年次入学者数で割った。

■法学部比較

法学部一般選抜指定校推薦
青山学院58.0%29.4%
立教50.9%非公表
中央49.6%21.2%
法政51.1%32.2%

■文学部比較

文学部一般選抜指定校推薦
青山学院63.4%20.1%
立教58.6%非公表
中央61.6%19.2%
法政54.6%22.5%

■経済学部比較

経済学部一般選抜指定校推薦
青山学院76.1%15.7%
立教52.7%非公表
中央41.4%27.5%
法政56.5%25.5%

有名私立大学ということもあり、一般選抜が占める割合は私立大学全体よりも高い。しかし、一般選抜は50~60%台であり、学生のうち2人に1人くらいしか、いないのだ。

学校別に見ていくと、青山学院大学が法学部、文学部、経済学部という文系の中でも一般的な学部ながら、一般選抜の割合は、学部ごとにバラツキが見られる。法学部が58.0%に対し、経済学部は70%を超える。ちなみに、私立の経済学部・経営学部のうち、入学者数100人以上の中で、一般選抜70%超は青山学院大学の他に、北海学園大学経営学部(1部)、東洋大学経営学部、南山大学経済学部しかない。

一方、バラツキが目立たなかったのは法政大学である。試しに、日本で唯一の学部であるキャリアデザイン学部で計算したところ、一般選抜が占める割合は56.7%であり、法学部、文学部、経済学部と変わりはなかった。

中央大学法学部のデータも興味深い。中央大学法学部は一般選抜が50%を切る一方、指定校推薦もそれほど高くない。その代わり、付属・系列からの入学者が多いのだ。指定校推薦が290名に対し、付属・系列は302名(22.1%)にも及ぶ。ちなみに、中央大学の中で付属・系列が指定校推薦よりも多いのは法学部と国際情報学部(付属・系列29名、指定校27名)のみである。

ここで、一般選抜が低い傾向にあるグローバル系・国際系の学部も確認しておきたい。青山学院の国際政治経済学部は64.4%で、一般選抜を重要視する。指定校推薦はわずか2名だ。中央の国際経営学部は72.0%となり、こちらも一般選抜を重視といえる。一方、指定校推薦は36名(9.5%)であり、青山学院の国際政治経済学部ほど極端に低いわけではない。

一般選抜が低い学部は、立教の異文化コミュニケーション学部(36.2%)、法政のグローバル教養学部(15.7%)である。

極端に一般選抜が少ない関西学院大学国際学部

関西は「関関同立」(関西大学、関西学院大学、同志社大学、立命館大学)を取り上げる。

■経済学部比較

法学部一般選抜指定校推薦
関西52.5%27.2%
関西学院54.1%27.7%
同志社51.9%23.5%
立命館61.1%11.9%

■文学部比較

法学部一般選抜指定校推薦
関西56.8%16.5%
関西学院53.3%29.7%
同志社69.5%13.3%
立命館54.5%11.6%

■法学部比較

法学部一般選抜指定校推薦
関西55.0%24.6%
関西学院58.2%16.9%
同志社51.3%31.8%
立命館66.3%12.4%

この中で、最もバランスがよいのは関西大学、関西学院大学といえるだろう。特に関西大学は文系の中で最も一般入試の割合が高い外国語学部であっても、62.8%だ。一方、関西学院大学の国際学部の一般入試の割合は29.5%しかない。国際学部は総合型選抜を重視する。

京都にある同志社、立命館は、どちらかというと一般選抜を重視するという感じか。特に同志社の文学部では、一般選抜が占める割合が7割近い。また、立命館は他大と比べると、指定校推薦の割合が低い。その代わり、付属・系列からの入学者数が多い。とはいえ、立命館は関西圏出身が占める割合も低いことから、地方出身で一般選抜重視であるなら、立命館は受けやすいのかもしれない。国際系では、同志社のグローバル・コミュニケーション学部の一般選抜の割合は41.4%だ。なお、立命館のグローバル教養学部は他学部のような一般選抜は実施されていない。

このように、単純比較ではあるが、関東・関西の有名私立大学における文系主要3学部の一般選抜入学者数の割合を見てきた。想像以上に学校、学部別にバラツキが見られ、受験時には学力もさることながら、データに基づいた戦略は必須と言える。また、国際系・グローバル系では、似たような学部名でも、青山学院の国際政治経済学部と関西学院の国際学部のように、一般選抜への考え方がまったく異なる場合がある。このあたりは高校生は戸惑うかもしれない。

一般入試・推薦入試の割合と偏差値との関係は?

それでは、一般選抜入学者の割合と偏差値との間に何かしらの相関関係はあるのだろうか。一般選抜の割合が低い学部の偏差値は極端に高かったりするのだろうか。ここで、河合塾が発表している2025年度入試難易予想ランキング表を確認してみよう。比較する大学、学部は先ほどと同じだ。

■法学部の偏差値(順不同)

青山学院60.0
立教60.0~62.5
中央57.5~62.5
法政57.5~62.5
関西55.0~57.5
関西学院55.0
同志社60.0
立命館55.0

■文学部の偏差値(順不同)

青山学院60.0~65.0
立教57.5~60.0
中央52.5~60.0
法政55.0~65.0
関西52.5~57.5
関西学院50.0~55.0
同志社57.5~62.5
立命館52.5~57.5

■経済学部の偏差値(順不同)

青山学院60.0~62.5
立教57.5~62.5
中央55.0~57.5
法政55.0~57.5
関西55.0
関西学院52.5~55.0
同志社60.0
立命館52.5~55.0

■その他学部の偏差値(順不同)

青山学院国際政治経済学部60.0
立教異文化コミュニケーション学部65.0
中央国際経営学部52.5~55.0
法政グローバル教養学部57.5~60.0
関西外国語学部57.5~60.0
関西学院国際学部60.0~70.0
同志社グローバル・コミュニケーション学部57.5~62.5

このように見ていくと、法学部・文学部・経済学部では、一般選抜の割合と偏差値との間に相関関係はないように思える。一方、国際系・グローバル系では顕著に見られるケースがある。たとえば、一般選抜の割合が36.2%の立教の異文化コミュニケーション学部、同じく29.5%の関西学院の国際学部はいずれも、文系学部の中で最も偏差値が高い。しかし、15.7%の法政グローバル教養学部はそれほど偏差値が高くないことから、必ずしも両者の間に強い相関関係があるわけではない。

いずれにせよ、立教の異文化コミュニケーション学部と関西学院の国際学部をすべり止めで受けることはリスクが高い、と言えそうだ。

一般入試は「一発逆転」の貴重な機会

近年は国公立大学を第一志望とする学生に対して、学校側がMARCHや関関同立をすべり止めとして認識することの危険性を説いているという。これは一般選抜の割合に起因する。私立大学の事情はあるだろうが、総合型選抜と比較すると、経済的環境の影響を受けにくく、一発逆転が可能な一般選抜の割合を確保して頂きたい、と一般選抜入学者の筆者は強く思うところだ。

著者・写真撮影:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 
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