DXが世界中で必須の現代において、日本の中小企業においてもDXは同様に避けては通れない重要なキーワードとなりました。DX(デジタルトランスフォーメーション)の意味を理解していても、実際の企業運営や日々の業務に活用していかなければ意味はありません。また、DXを活用しない企業は近いうちに淘汰されてしまう可能性すらあります。
「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」(KADOKAWA 2022)は、中小企業診断士でコンサルタント会社を経営する長尾一洋氏が、中小企業の経営者やリーダーにとって知っておくべきデジタル活用の全てを解説した貴重な書籍です。
第1章では、DXとは何なのか、DXによって何ができるのかといった基本的なことから解説を始めています。ペーパーレスや脱ハンコなどもDXの一つではありますが、それを実行しただけではDXを推進しているとはとても言えません。また、デジタル化による効果はコストダウンだけではありません。もちろん、DXによってコストダウンすることはメリットの一つではありますが、それが最大の価値ではないということです。
DXによる最大の価値は、初期投資以外にその後の投資がいらない「限界投資0」という点です。つまり、売上アップや事業拡大などに挑戦する際に、追加の経費を考えずにチャレンジできるという点がDXの特質と言えると強調しています。
DXが中小企業の経営にも大いに役立つということを理解している経営者が年々増加していることは間違いありません。しかし、本当の意味でDXを経営に活かせている中小企業はまだそれほど多くないのが実情です。
巷では、DXを成功するための3つの条件があるそうです。
しかし、これらの3つの条件を「無視」すべきというのが本書の主張です。この3つの条件を行ってはいけないというわけではありませんが、中小企業にとってはこれにこだわりすぎると大変な労力や費用を使わなければならない可能性があります。そのため、無理にこの3条件にこだわりすぎる必要がないということです。
本書では、中小企業が実際にDXを活用するための戦略を8つ紹介しています。どれも、それぞれの企業が、無理をせず身の丈に合った経営をしていくうえで大切な点を解説してくれています。
中小企業においてはデジタル人材を獲得することは難しく、また外注しても費用ばかりがかさみ効果はあまり期待できないのが現実です。そこで必要なのが、ノーコード(プログラミングなし)でシステムやアプリをつくるサービスを利用することです。また、ノーコードを戦略的に勧めていく人材(ノーコーダー)を育成することが重要となります。
情報の集約や処理をデジタル化して、業務プロセスの効率化と短時間化が求められています。経費精算や日々の売り上げの報告など、あらゆる業務をデジタル化していくことで仕事のスピードアップが実現できます。
新型コロナウイルスの感染拡大により、取引先のリモートワークや社外の人との接触自粛などが起きたために、新規開拓が難しくなったという声を聴きますが、オンラインでもしっかりとした施策をすれば営業は可能です。
顧客を逃がさずにリピーターとして取り込み、常連に育て上げることはどの企業にとっても重要です。DXを活用することで、中小企業が顧客離れを防ぐためにできることはたくさんあります。
テレワークは中小企業にとって、非常に有効な働き方の一つです。そして、DXを活用することで、より効果的なテレワークを継続していくことが可能となります。また、部下のメンタルケアや社員教育においてもDXの活用が役立ちます。
DXの過程において、AIの導入は不可欠です。特に社員の少ない中小企業においては、AIを導入することで働き手不足を補うことができるために重要になります。
中小企業においては事後的なフィードバックよりも先行的なフィードフォワードがより重要になります。デジタル活用により大量のデータを取り込み、フィードフォワードの視点でビジネスを行うことが可能になります。
中小企業では、少人数経営から「省」人数経営へ移行する必要があります。デジタルをうまく活用することで、業務の効率化を進めてより少ない人数で高い生産性を上げることが可能になります。
本書「デジタル人材がいない中小企業のためのDX入門」の最後で、企業には人間力が必要だが、デジタル化を行わなければ人間力すらうまく活用できない時代であり、あらゆる会社がデジタル企業になる覚悟を固める必要があると強調しています。今後は、中小企業の経営者やリーダー自身が、率先してデジタル化を実践していくことが何よりも大切になっていくと予想されます。だからこそ、DXについて学ぶことが急務だといえます。
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