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データドリブン経営の実現に向けてデータサイエンティストの役割とスキルセットを理解する by デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)

デジタルリテラシー協議会では、デジタルリテラシーの普及・啓発に向けた活動を行っている。データサイエンティストという職種が日本のメディアで取り上げられるようになったのは、2012年~2013年ごろ。

それから12年ほどが経ち、現在は多くの企業で重要な役割を担う存在として認知されているが、役割やスキルセットが曖昧でうまく生かせていないケースも多い。その課題を解決する策の1つとして実施されているのが、YouTubeライブ配信「ランチトーク #3」だ。

配信では、一般社団法人データサイエンティスト協会(以下、DS協会)の事務局長を務める佐伯諭氏をゲストに同職種に求められる知識や実務能力を評価するDS検定(データサイエンティスト検定)の概要と活用事例が共有された。

前回のレポートはこちら

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増加傾向にあるデータサイエンティスト。求められるスキルとは

DS検定は、DS協会が2021年9月から実施している。同協会の事務局長を務める佐伯諭氏は、「当協会はビッグデータの活用が企業に強く意識され始めた2013年に設立されました。それまで曖昧だったデータサイエンティストという職種を定義するとともに、組織化や評価の方法を整理し、産業での役割を位置づける活動を行ってきました」と、協会の活動を説明する。具体的には、データサイエンティストのスキル定義や事例発信、コミュニティの形成やシンポジウムの開催、さらにDS検定の実施、情報交流の促進、企業とデータサイエンティストのマッチング支援などを行っている。

同協会では、データサイエンティストに必要なスキルセットを「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニアリング力」の3領域に分類、650項目のスキルとして整理して、スキルチェックシートとして公開している(2023年更新時)。

スキルチェックリストの項目の内訳。現在、データサイエンス領域では309項目、エンジニアリング領域では182項目、ビジネス領域では159項目となっており、それぞれに「棟梁レベル」「一人前レベル(アソシエート)」「見習いレベル(アシスタント)」というレベルの基準が設けられている。なお同リストは2015年発行のVer.1から2023年発行のVer.5まで2年に1回のアップデートが行われており、バージョンが上がるにつれて項目数が増えている。

より効果的に運用するにはスキルチェックシートのカスタマイズが必須

実際の活用について、佐伯氏は「同リストは産業界に共通するスキルを網羅しているため、特定の業界・組織・ドメインにおいては、スキルチェックシートにある650項目全てを適用する必要はありません。また、企業ごとに『シートに上がっていないが必要となるスキル』があります。そのため実際の活用ケースでは、同シートから自組織に有用なスキルを抽出し、それに自組織やドメインに必要なスキルを独自に追加して、データサイエンティストの評価や育成に役立てています」と語る。

企業でのスキルチェックシート活用例

また同氏は、マーケティング業界での活用を例に、3領域にマーケティング領域の項目を加えたスキルマップも紹介した(下図)。

マーケティング業界での活用例

「中には、同シートを活用して360度評価(多面評価)を実施している企業もあります。データサイエンティストチームのリーダーがメンバーを評価し、どのスキルを高めるべきか目標を定めて組織力強化を図っています」(佐伯氏)

DS検定の受験数、合格者数、合格率。同検定は2021年7月からスタートし、2024年11月まで年2回のペースで実施。受験者は男性が8割弱、20〜40歳代が多いが、50〜60歳代の人も2割ほどおり、マネジメント層にも利用されている。IT・通信業、金融・保険業の受験者が特に多く、製造業がそれに次ぐ。

DS検定では、データ分析関連のプロジェクトにアシスタントとして参加するのに必要となる、基礎的な知識と実務能力を有しているかも評価できる。その特徴から、IT業界以外、データサイエンティスト職以外の受験者も多い。次回のDS検定は、2025年3月開催の第9回の実施を予定しているが、検定の利用実態に合わせて内容もアップデートしていくと佐伯氏は話す。

「スキルチェックシートは、2年に1回改定しています。それに伴いDS検定の内容も再構成していきます。現在はリテラシーレベルの検定として位置づけていますが、さらに上位のレベルの検定を設けるかどうかの議論も進めています」(佐伯氏)

知識だけではビジネスシーンで役立たない? DS検定を取得すること自体の意義

ランチトークの後半では質疑応答が行われ、佐伯氏にDi-Lite 事務局の小泉誠氏、高橋範光氏が加わり回答した。

●DS検定とG検定の違いは?

佐伯氏:DS検定はデータ活用に関する知識を「浅く・広く」問うのに対して、G検定(ジェネラリスト検定)は、AIの機械学習やモデル化に関して「深く・狭く」問われます。また、DS検定はデータの数学的理解やエンジニアリング領域でのプログラミングスキルなどの要素が厚くなっていることも特徴です。

●資格を取得しても実際に実践できるとは限らない。取得すること自体の意義を会社に理解してもらうには?

佐伯氏:DS検定は、基礎能力としてのリテラシーを身につけることが前提になっています。資格を持っていても能力が生かせるとは限らないのは事実ですが、体系的に身につけたデータ分析の基礎能力がないと、多様な情報をもとにした課題解決は難しいでしょう。その意味で資格取得には意味があると考えています。試験の内容も、知識を証明するだけでなく、具体的な実践力を問い、証明するものになっています。

高橋氏:例えば自動車の「仮免」のように、実践の場に出る際に知っておくべき基本ルールを網羅的に身につけるのが、DS検定を含むDXパスポートの3試験です。我流で仕事をすると問題が発生しやすいものです。また、我流では自分の経験でしか物事を判断できず、新しい問題に対応できない場合もあるでしょう。

●数理統計がビジネスシーンで役に立つイメージが描けない

佐伯氏:データやファクトに基づいたビジネス課題の分析や意思決定が問われる際、よくデータ可視化や機械学習を用いた予測モデルを開発しよう、などの議論になります。最終的な成果物のイメージからは数理統計の影が薄いかも知れません。ですが、前提として、ビジネス課題の解決に資するデータ整理や基礎的なデータ分析は行う必要があります。その際にデータの分布や平均、時系列データの特徴理解など、数理統計スキルを駆使してデータを理解し、ビジネス要件との接合を見極めるわけです。とても重要な工程です。その上で、このデータはビジネス判断上重要だから常にダッシュボードとして可視化しておきたいとか、説明変数の絞り込みなどを経て予測モデル開発とか、次の工程に進めるのです。

 

デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)主催
「ランチタイムトーク」

デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)主催「ランチタイムトーク」では、Di-Lite事務局の小泉誠氏と高橋範光氏の2名が司会進行役ランチタイムの30分間、デジタルリテラシーについての学びや「DX推進パスポート」が目指すところやメリット、デジタル人材育成に関するホットトピックスを紹介。本記事は「デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)公式YouTube」に配信されたコンテンツを許可を得て掲載しています。

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