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デジタルリテラシー強化!リスキリングとDXの悩みに「ITパスポート試験」が有用な理由 by デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)

程度の差こそあれ、デジタル活用のスキルはエンジニアのみならず、ビジネスサイドやバックオフィスに席を置く人々にも必須となってきた。企業も従業員全体のデジタルリテラシーを底上げする取り組みを始めているが、具体的な方法については模索段階というケースも多い。そんな中、「デジタルリテラシー協議会」(Di-Lite)はデジタルリテラシー強化の最初の一歩として、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施している「ITパスポート試験」の活用を提唱する。その理由とは。

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DXの推進力は個人のスキルではなく、組織の総合力で決まる! デジタルリテラシー協議会が考える組織の総合力UPの方程式 by デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)

DXの推進力は個人のスキルではなく、組織の総合力で決まる! デジタルリテラシー協議会が考える組織の総合力UPの方程式 by デジタルリテラシー協議会(Di-Lite)

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デジタルリテラシー協議会では、デジタルリテラシーの普及・啓発に向けた活動を行っている。取り組みの1つとして、「DX推進パスポート」として3つの試験(ITパスポート試験、データサイエンティスト検定リテラシーレベル、G検定)の合格者にバッジを発行し、日本企業全体のリテラシー向上、DXに向けたスキルや知識獲得へのモチベーション向上に努めている。同協議会のYouTubeライブ配信「ランチトーク #2」では、ITパスポート試験の運営に当たる笠井優一氏を迎え、なぜITパスポート試験がデジタル人材育成のスタート地点として重要なのか、その理由や最新の試験動向、活用事例が共有された。

ITパスポート試験は、ITを利活用する全ての人を対象にした試験

デジタルリテラシー協議会が、3試験の中で最初に受験することを推奨しているのがITパスポート試験だ。ITパスポート試験は、経済産業省が認定する国家試験の1つ。IPAは「情報処理の促進に関する法律」にもとづいた情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験(国家試験)を、全13の試験区分で実施しており、ITパスポート試験は、エンジニアとしてではなく「ITを利活用する者」向けの「レベル1」とい う位置づけとなっている(下図)。

情報処理技術者試験・情報処理安全確保支援士試験の全13区分におけるITパスポート試験の位置づけ

試験の内容は一般的・基本的な知識を問うもので、ITの利活用に必要不可欠なマネジメントや経営戦略、法務の基礎知識まで習得できるように設計されている。同試験の創設から関与し、30年の試験運営経験を持つIPAの笠井氏は、「ITパスポート試験は、文系の人でも非IT企業の人でも基本的なITリテラシーを身につける道具として活用できます」と、全体の底上げに向いていることを語る。

同試験応募者数は年々増えており、2023年度の応募者数は30万人に迫る29万7864人と過去最高を記録。累計応募者数は200万人を突破した。2023年度の応募者は、8割近くが社会人。非IT企業の応募者は8割を超える

上図の通り、応募者は非IT企業の比率が多くなっているが、笠井氏が行ったヒアリングによると、IT企業では「基本情報技術者試験」や「応用情報技術者試験」など、より高度な試験に重点を置いているため、ITパスポート試験の利用が割合として少なくなっているとのこと。

非IT企業の勤務先に見ると、「金融・保険業、不動産業」が最も多い。次いで「製造業」「サービス業」が多く、その他、「運輸・通信業」「官公庁、公益団体」も応募者が増えている。また、応募者が少なかった「電気・ガス・熱供給・水道業」も、2023年度には前年度比74.1%増と大きく伸びている。なお、業務別では、「営業・販売」の割合が多く、これは活用実績の多い銀行業界の行員の方が応募していると思われる。その他、「研究・開発」「総務・人事」なども増えている。

勤務先別の応募者数(2022年度、2023年度)

また、勤務経験年数ごとの割合では、22年以上の勤務経験者の割合が比較的高く、ベテラン社員のリスキリン グ・学び直しの意識が見られる。

勤務年数ごとの応募者の割合(2022年度、2023年度)

笠井氏は「2024年8月現在では、応募者数は10万3804人と前年同期比5.6%増となっており、本年度中に30万人を超える見込み」と語る。

企業や自治体の活用事例はIPAページから参照可能

IPAでは、企業や自治体での活用事例をWebサイトで紹介している。例えば、次のような事例がある。

・東京電力ホールディングス株式会社:社内のDX人材育成推進の第一歩として活用
・株式会社そごう・西武:数年前から積極的に活用中
・株式会社千葉銀行:全社員に合格を奨励し、リテラシー強化
・株式会社大林組:早期から採用してデジタル人材育成に注力
・宇都宮市:地元中小企業のデジタル化推進のために合格者に補助金を支出(同種事例は広島県にも)
・下野市:市職員のデジタルリテラシー向上に活用
・東北電力株式会社:4階層のDX人材を設定し、ベース層にITパスポート試験合格を必須に
・株式会社ファンケル:全ての社員が基礎的なITリテラシーを身につける。社長も受験

以上の他にも、多くの事例がWebサイトに掲載されている。

バウチャーチケット制度の利用で受験者の受験状況・成績状況を把握

笠井氏は、企業での活用に当たり、バウチャーチケット(前売り電子チケット)を購入して活用する企業が増えていることを明かす。これは受験者人数分の受験手数料を一括で支払いできる制度だ。一括購入することにより、IPAから全受験者の受験状況・成績状況の情報が提供される。成績情報や合否の把握だけでなく、レーダーチャートで各領域の正答率も分かり、組織全体としてどの領域に強いか弱いかを判断し、教育や人材活用に生かすことができる。

ITパスポート試験の受験を促す方法などをアドバイス

ランチトークの後半では、質問応答が行われ、笠井氏にDi-Lite 事務局の小泉誠氏、高橋範光氏が加わり回答した。

●人的資本経営の観点で、デジタルリテラシー協議会推奨の3試験の活用例はあるか?

小泉氏:有用だと考えます。人的資本経営は明確に国としてコーポレートガバナンス・コードを指針として公表しており、それにもとづき経済産業省は、デジタルガバナンス・コードのもとDX認定やDX銘柄(事務局:IPA)などを認定しています。経済産業省の当該ページで、活用事例が公開されているので参照してください。

●組織内でデジタル人材育成を推進するために何から着手すべきか?

高橋氏:ITパスポート試験の利用が最適です。受験を促すためには「合格が何のために必要なのか」という質問に、明確に答えられることが大事です。例えば文系の人、非IT企業の人の受験が多い事実を伝え、エンジニアのためだけの試験ではなく、実際の仕事上でも必要な知識が身につくなどことなど、メリットを説明することが有効です。

会社の方針として、全員受験・合格を目指すことを宣言して実行していくアプローチもあります。複数のアプローチを組み合わせ、受験を提案していく必要があるでしょう。デジタルリテラシー協議会のサイトでも、事例を公表しているので参照してください。

●独学でデジタル人材を目指している。企業ではなく個人の視点・レベルでのスキル学習においてアドバイスやロードマップがあれば教えてほしい

小泉氏:個人のスキルアップも、デジタルリテラシー協議会の目指すところです。まずはITパスポート試験を受けていただきたいです。ITパスポート試験は、カバー領域が広く、データの扱い方やディープラーニングの意味なども出題されます。この試験に合格してから、自分の興味の方向を見極めて、データサイエンティスト検定やG検定の受験を考えるとよいでしょう。

なお、デジタル人材として成長するためのロードマップとしては、IPAが策定している「デジタルスキル標準」の中に「DX推進スキル標準」があり、人材の5類型と役割が記されています。参照してみてください。

● ITパスポート試験の団体受験は、任意の場所・日程で実施できないか

笠井氏:企業や学校で多くの受験者がいる場合は、実施の3〜4カ月前に相談してもらうことで、既存会場の試験開催日や座席数等の調整ができる可能性はあります。一方で、社員や学生を対象に自組織の施設を試験会場として試験を実施することについては、国家試験であるため、一般の人にも開かれている必要があり、特定の人たちに限った実施は難しいのが現状です。

ITパスポート試験は、非IT部門や文系出身者を含む幅広い層が基本的なITリテラシーを身につけるための優れた手段ということが分かった。特に、DX推進においては、全社員が共通の基礎知識を持つことで、デジタル化に対する抵抗感を減らすと同時に、業務プロセスの効率化や新しい価値創造に向けたコミュニケーションの土台を築くことができるはずだ。同試験の活用の増加を期待したい。

 
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