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法人番号との出会いから始まった、データ界隈を橋渡しする挑戦 –データ界隈100人カイギキュレーターインタビュー vol.04–法人番号株式会社 吉田裕宣(マエス)さん

法人番号との出会いから始まった、データ界隈を橋渡しする挑戦 –データ界隈100人カイギキュレーターインタビュー vol.04–法人番号株式会社 吉田裕宣(マエス)さん

「データ界隈100人カイギ」のキュレーターに就任されたマエスさんに、データとの出会いからコミュニティへの想いまで幅広くお話を伺いました。法人番号の活用を広め、学生データ分析アワードを主催するなど、データの力で人々を繋ぐ活動を精力的に展開するマエスさんの信念と哲学に迫ります。

         

データ整備に悩んだ過去が、今の原動力に

佐々木:
これまでのご経歴や、データに携わるようになったきっかけについてお聞かせください。

マエス:
私がデータに深く携わるようになったきっかけは、新卒で入社したコンサルティング会社での経験にあります。コンサルティング会社には話が上手い人が多い中で、実は、私はあまり話が得意ではなくて……。どうしたらお客様とちゃんと話せるようになるのか、ずっと悩んでいました。

しかし、あるとき、「自分は話がうまくなくても、データは正確なものを伝えられる」と気づきました。その正しいデータを資料に書くことで、お客様にちゃんと伝わるようになり、データを通じてコミュニケーションがとれた、という実感がすごく嬉しかったんです。

佐々木:
そうだったんですね。何かデータを使って、お客様とコミュニケーションをとる上で、気をつけていたポイントはありますか?

マエス:
ただ、単純なグラフだけではお客様の疑問にすぐには応えられず、さらに掘り下げて説明しようにも、その場で資料を作り直すのはとても追いつきませんでした。そんな時、BIツールがまるで体の、正確に言えば口の一部のように感じられたのです。自分が言葉でうまく説明する代わりに、ドラッグアンドドロップでデータを示すことで、情報がストーリーとしてお客様に伝わりやすくなったのです。

お客様の前でBIツールの画面を見せながら「ここはこういう理由でこういうデータなんです。これをさらに掘り下げていくとこういう知見が得られますよ」とデータでストーリーを話している感覚でした。この経験が、話が下手だった私を救ってくれたと思っており、「こんなに素晴らしい世界があるんだな」とめちゃくちゃ面白かったんです。

これまでの経歴の中で、データに携わりながら痛感していたのが、自社内のデータが整っておらず、何が正しいデータか分からないといった点に非常に苦労していたことです。お客様のデータなども、社名や住所が変更されると重複してしまったり、最新の情報がどれか分からなくなったりといった、まさにデータの名寄せに多くの時間と労力がかかっていました。

そんな中で、国が整備したIDである法人番号というものに出会ったのです。これさえ紐付ければデータが綺麗になるというシンプルさと、誰もが利用できる点を知り、本当に感動しました。こんなに素晴らしい世界があるんだな、と非常に面白いと感じたことを今でも鮮明に覚えています。これはまさに「これで自分の業務は変わる」と感じた瞬間でした。

実際に、法人番号によってデータが驚くほど綺麗になり、それまでデータの前処理や確認に費やしていた時間を、本来やりたかったデータ分析や活用に使えるようになりました。BIツールやCRM/SFAといったツール(例えばTableauやSalesforceなど)をより効果的に活用できるようになり、お客様の前でデータをストーリーとして語るような体験もできるようになりました。話すのが元々得意ではなかった私にとっては、データが正しいことを示してくれることが救いとなり、これは私のキャリアを変えたと言っても過言ではない、本当に大きな変化でした。

データ界隈100人カイギ キュレーター 吉田裕宣(マエス)さん(法人番号株式会社 代表取締役)

佐々木:
本当に大きな変化だったんですね。それからの活動はどう変化しましたか?

マエス:
自分がこうして救われた経験があるからこそ、次は自分が誰かを助ける側に回らなければいけないと思ったんです。そんな思いから、法人番号を広める活動をしたくて「法人番号株式会社」を立ち上げました。データに悩んでいる人たちが、法人番号を使うことで少しでも楽になり、前向きにチャレンジできるような仕組みを作りたいと思っています。

佐々木:
若者に向けた活動もされているそうですが、具体的にはどのような活動をされていますか?

マエス:
はい、学生たちが早い段階からデータに親しんでほしいという思いがあり、「学生データ分析AWARD」というコンテストも主催しています。賞金も用意して、学生が気軽に挑戦できる場を作っています。営利目的ではなく、あくまで次世代にデータの楽しさを伝えたいという思いで運営しています。こうした活動を続ける中で、大学の先生として教える機会もいただきました。

振り返ると、私自身、大学時代にもっと気軽にデータに触れられる環境があったら、キャリアのスタートも変わったのではないかと思うんです。だからこそ、今の学生たちには、もっと身近にデータと触れ合いながら、自分の可能性を広げていってほしいと思っています。これからも法人番号やマスターデータといった基盤となる仕組みを広めて、データに関わるキャリアが多くの人にとってプラスになるよう、活動を続けていきたいです。

共感から始まった、データ界隈への橋渡し

佐々木:
データ界隈100人カイギにキュレーターとして参加することになった経緯について教えてください。

マエス:
「100人カイギ」という形で開催するお話を伺い私自身、「データの壁を超える」という考え方が好きで、多くの人たちと連携しながら広げていくというアプローチを大切にしてきましたので、多くの人たちと連携しながら広めていくというアプローチも、私自身も意識していた観点でこの取り組みに強く共感したんです。

佐々木:
多くの人たちと連携しながら広めるというところが、「学生データ分析AWARD」や「法人番号株式会社」の取り組みにも表れていますね。

マエス:
そうですね、法人番号をオープンデータにしてから、現在は42万ユーザーの方々にご利用いただいています。「データ界隈100人カイギ」も同様に、幅広く多くの方に参加していただける会になっていけたらと思います。

法人番号(13桁の番号)でデータの海を切り開くことを目的とした会社。

佐々木:
「データ界隈100人カイギ」の取り組みにどんな期待を寄せていますか?

マエス:
データ界隈には、それぞれ盛り上がるコミュニティがたくさん存在しています。これは悪い意味ではなく、「村」。それぞれの村で役割がある。連帯感が強くなる良さもあるのですが、一方で、村同士のつながりが生まれにくいという課題も感じています。本当は多くの人が広く繋がりたいと思っているはずなのに、それを実現する場がなかなかないのが現状です。

データ界隈100人会議は、そうした村を越えて人と文化を繋ぐ、第三者的な立場を持った貴重な場だと感じています。「壁を超える」「文化を繋ぐ」というキーワードがまさにぴったりで、今回の取り組みが、みんなが自然に繋がれる場所になってくれたら嬉しいです。

データ活用の入り口を広げる3つのテーマ

佐々木:
マエスさんが担当するテーマとそれに込めた思いをお聞かせください。

マエス:
今回、テーマに選んだのは「オープンデータ」「BizOps」「マスターデータマネジメント」の3つです。

まず「オープンデータ」についてですが、これは誰でも自由に使っていいよと公開されているデータのことです。たとえば、自治体が観光情報をまとめたデータを公開して、民間企業や市民がそれを使って新しいサービスを作れる、みたいなイメージです。

ただ、せっかくデータがあっても、どこに何があるのかわからなかったり、使い方が難しかったりして、活用しきれていない現実もあります。くわえて、活動が地域ごとや、特定のグループの中だけで盛り上がってしまうことも多いんです。みんなでデータをもっと便利に使えるようにするには、地域やツールを超えて「一緒にやろう」と話し合える場が必要だなと思って、今回テーマに選びました。

次に「BizOps」ですが、これは会社の中でデータを上手に活かすために、日々の仕事のやり方を整える役割のことです。たとえば、営業部と経理部がバラバラに管理しているデータをまとめたり、社長と現場の間でちゃんとデータを共有したりする、そんな橋渡し役です。でも実は、この役割はまだ世間的にあまり目立っていません。それぞれの部署は一生懸命頑張っているけど、部署同士をつなげる人がいない。だから、ここをもっとちゃんとつないでいけたら、会社全体がスムーズに動くようになるんじゃないかと思っています。

最後に「マスターデータマネジメント」ですが、CRM(顧客関係管理)の領域では、「同じお客様なのに、部署ごとに名前の表記が違う」とか「商品データがバラバラ」といったことを防ぐために、データをきちんと管理する仕組みです。実は昔からCRMというレベルではなく歴史が深い考え方です。

今、データが爆発的に増えている時代だからこそ、改めて大事になってきています。でも、どうやってマスターデータを整えたらいいかっていうノウハウは、意外と知られていないし、本もほとんどありません。昔からこの分野を支えてきたベテランの方々はたくさんいるのですが、なかなか表には出てこない。だから今回、そんな玄人のみなさんにも協力してもらって、次の世代につながる知恵を共有できたらいいなと思っています。

人とデータそれぞれが補い合う不完全さと尊重できる関係性

佐々木:
データと「文化」「人」という観点で意識していることはありますか?

マエス:
難しいテーマですね…、データと文化というテーマでは、「まだ過信しないこと」が重要です。データはデータ上は正しくても、欠損や網羅性の点で限界があります。すべての事象がデータ化されているわけではないため、「データがすべて正しい」とは言えません。

したがって、人の勘や経験は非常に大切です。人の勘や経験を尊重して、データと向き合う姿勢こそが、データにおける文化的な付き合い方と言えるのかもしれません。

佐々木:
「データ界隈100人カイギ」が、参加者にとってこうなったらいいなという期待について、教えてください。

マエス:
普段学べることも多いと思うんですけれども、「みんなで集まるからこそ」という点が重要です。普段会いそうで会わない人たちとのコミュニケーションができると、すごく面白い会になると思います。

みんなでこの界隈を盛り上げたいというのが心からの願いです。皆が同じ方向を向いて、この場を良いものにしていけたらと思っています。

 

データ界隈100人カイギ運営事務局 主催
データ界隈100人カイギ #02
ラーニングヒーロー会

イベント名データ界隈100人カイギ#02「ラーニングヒーロー会」
開催日時2025年7月18日(金) 18:30~21:00
会場ウイングアーク1st株式会社コラボスペース
〒106-0032 東京都港区六本木三丁目2番1号 六本木グランドタワー36階
主催データ界隈100人カイギ運営事務局
対象者データに携わる全ての方
・ITツールベンダー
・コンサルタント
・Chief Data Officer(CDO)
・データサイエンティスト
・エンジニア
・ビジネストランスレーター など
参加費・定員・現地参加:1,000円(定員:40名)
・オンライン参加:500円(定員:20名)
・学生の方:現地・オンライン参加ともに無料(定員:10名 ※各5名)
URL2025年07月18日開催|データ界隈100人カイギ#02|ラーニングヒーロー会

 

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