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日本の中高生が「AIオリンピック」でメダル4枚獲得。IOAI2025の日本代表派遣報告会 参加レポート

日本の中高生が「AIオリンピック」でメダル4枚獲得。IOAI2025の日本代表派遣報告会 参加レポート

2025年10月11日、国際人工知能オリンピック日本委員会(JOAI委員会)は同年8月に中国・北京で開催された第2回「国際人工知能オリンピック(IOAI)」の報告会を実施した。同大会には、63の国・地域から80チーム・310名が参加。日本は4名の代表全員がメダルを獲得し、さらに国別順位も8位にランクインするなど輝かしい成果を収めた。

本記事では、2025年10月11日に開催された「日本代表派遣報告会」から、日本代表の学生が得た学びや、引率したスタッフの舞台裏などAI教育の新しい取り組みについて紹介する。

         

金・銀・銅メダルを獲得。世界を驚かせた日本代表の「快挙」

国際人工知能オリンピック(International Olympiad in Artificial Intelligence:IOAI)は、数学オリンピックなどで有名な国際科学オリンピックの一つで、中等教育修了前の生徒を対象とした人工知能(AI)の国際大会だ。そして、2025年8月、中国・北京で開催された第2回大会では日本代表の高校生4名が金1・銀1・銅2という快挙を成し遂げた。

快挙をなし得た日本代表の鈴木温登さん(筑波大学附属駒場高等学校)、時田直哉さん(筑波大学附属駒場高等学校)、山井勇人さん(開成高等学校)、付 聖宣さん(聖光学院高等学校)の4名。それぞれが個人戦でメダルを獲得し、国別順位では8位と、初出場から躍進した前回大会をさらに上回る成果を残した。

一般社団法人国際人工知能オリンピック日本委員会(JOAI委員会)は、IOAIへの日本代表選手の選抜、研修、派遣を行うほか、日本人工知能オリンピック(JOAI)競技大会の運営など、AIを通じた国際的な学びと人材育成を目的とした組織だ。10月に開催された日本代表派遣報告会では、代表学生4名による成果発表とパネルディスカッションに加え、育成・運営を担った理事や過去代表による講演が行われた。

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代表選出から約2ヵ月で本番に向けた準備を行う

代表学生たちによるライトニングトークでは、北京での大会を振り返りながら、それぞれの視点から学びや発見が語られた。

2025年大会は、個人戦である「Individual Contest」と団体戦「Team Challenge」の2部構成で競技が行われた。個人戦は、1日3問×2日間、計6問のセットを各6時間で解くという過酷な内容。そして、個人戦の成績上位8%(1/12)に金メダル、25%に銀メダル、50%に銅メダルが授与されるというルールで、より個々のスキルと戦略が問われる内容となった。

代表に選出されたのは5月で、そこから本番の8月まで約3カ月間、毎週末のオンライン勉強会が続いた。時田さんは、「毎週末に勉強会をして、過去の問題を一緒に解きながら自分の弱点を洗い出した」と述べ、学生たちは事前課題に取り組み、過去のコンペ問題や上位者の解法を共有。1人ひとりが得意分野を持ち寄りながら、AIモデルの構築力を磨いていった。

大会の1カ月前からは、NVIDIA L4 GPUが1人1台使い放題となり、各自が自宅から強化学習や画像認識の実験を繰り返した。鈴木さんは「模擬IOAIを実施して、本番と同じ環境・制限時間で練習できたのは大きかった」と話し、限られた時間の中で、「仮説を立て、検証し、修正する」サイクルを回していったことが分かる。

本番では、「個人戦は1問あたり2時間ほどしかないので、最初の1時間で解法方針を決められるかが重要。得点の高い問題を一つでも取り切れば順位が上がる」と付さんは述べ、メダルが決まる個人戦では、演算リソースの使い方や、時間配分の巧みさが勝敗を分けた。

団体戦は上位入賞を逃す。大会で磨かれた「AIを使いこなす姿勢」

団体戦では、4時間で1問の課題にチームで挑戦。2025年はロボット制御がテーマで、指定された地点までの移動、物体をカゴに入れ、カゴを棚に収納し、障害物を避けながら戻る──、といった一連の行動をAIで最適化するタスクだった。日本チームは惜しくも上位入賞を逃したが、「思考力と実装力の両方を問われる実践的な課題に刺激を受けた」と山井さんは振り返った。

大会期間中は、技術面だけでなく環境面でもタフさが求められた。時田さんは「不安定なサーバー、慣れないキーボード、英語表記のエディタなど、戸惑うことが多かった。でも動じずに対応するメンタルが大事だと痛感した」と振り返る。6時間の集中を2日間続ける中で、彼らは“AIを使う力”だけでなく、“AIを使いこなす姿勢”を身につけたようだ。

「仲間がいたから頑張れた」AIを通じて生まれたチームの絆

続くパネルトークでは、「代表になるまで」と「現地での協働」に焦点が当てられた。4人はいずれも、JOAI委員会が主催する国内大会「JOAI 2025」で上位入賞を果たし、日本代表に選出された。国内大会は、データ分析プラットフォーム「Kaggle(カグル)」を用いたコンペティション形式で行われ、参加者は課題データをもとにAIモデルを構築する。

「Kaggleを中心に、書籍やネット記事を読み、試行錯誤を繰り返して、自分なりの学び方を模索した」と語るのは山井さんだ。同じく鈴木さんも「KaggleがAIを学ぶきっかけだった。テーブルデータやディープラーニングに関する記事を読んで、自分で実装して理解を深めた。解法のコードを読むのも重要だった」と振り返る。

一方で、付さんは「理論書を読みながら自分でコードを書いて試すタイプ。Kaggleは少し苦手で、理論を丁寧に追う方が自分には合っていた」と話し、アプローチの多様さを示した。

海外の選手の熱量の高さと言葉の壁の高さを実感

続いて話題は、北京での現地体験へ。時田さんは「中国は同年代でも機械学習を本格的に取り組む人が多く、日本との差を感じた」と述べ、付さんは「会場の規模に圧倒された。約300人の選手がいて、送迎やスタッフの動きまで組織的だった」と、そのスケールの大きさに驚いたと話す。

もちろん順風満帆ではなく、山井さんは「英語が通じない場面が多く、言語の壁は大きかった」と話し、鈴木さんも「GPUサーバーが不安定で、Day2の午前中は一番つらかった。虫刺されにも悩まされた」と振り返った。

一方で、チームとしての支え合いは大きな心の支柱になった。付さんは「個人戦の前にあったチームチャレンジで、慣れない環境でも“一緒にやれば何とかなる”という感覚を得られた」と話す。鈴木さんも「同年代でこれほどAIに詳しい仲間がいるのが心強かった。事前課題で分からなかった解法を共有し合えた」と続けた。

さらに、パネルトークの終盤では、次世代へのメッセージも語られた。「チャレンジすることが大事。最初は自信がなかったけど、仲間と出会えて頑張れた」と山井さんが述べれば、鈴木さんも「理論も実装も、手を動かして覚えるのが一番。6時間3問という形式に慣れておくとよい」とした。そして、「とりあえず登録してみること。ベースラインを見るだけでも一歩が踏み出せる」(付さん)、「続けることが大事。結果はすぐ出なくても、続けていれば必ず成果になる」(時田さん)というように、来年の代表を目指す後輩へのメッセージも寄せられた。

JOAIが実践する育成と伴走の姿勢と、世界で活躍する先輩のキャリア

報告会の後半では、JOAI委員会理事の村上直輝氏と、前回代表の越智優真氏が登壇し、運営と育成の裏側を語った。

村上氏は、データサイエンティストとしてAIコンペに多数参加し、自らも入賞経験を持つ。JOAI2025の国内大会では、課題設計から運営・初心者講座までを手がけた。「初心者がAIコンペを楽しめる場であり、同時に代表選抜の実践の場でもある。この2つを両立させたかった」と村上氏は語る。実際の国内大会では、画像・テキスト・表データを組み合わせたマルチモーダル課題を出題し、AIの総合力を問う設計にしたという。

しかし、運営の裏には多くの苦労もあった。5月の代表選抜から8月の国際大会までの実質2カ月という短期間で、育成プログラムを組まなければならなかった。「代表の自主性に任せながら、必要な部分だけをサポートする方針にした。短い期間でも主体的に学ぶ姿勢があれば、驚くほど成長する」と村上氏は振り返る。

さらに、計算資源や翻訳作業の制約も大きな課題だった。「大会では中国語・英語の問題をその日の朝に日本語訳しなければならず、時間との戦いだった。初日はフォントの問題もあり苦戦したが、2日目にはスムーズに対応できた」と、運営の舞台裏を明かした。村上氏は「代表の努力を間近で見て、誇らしかった」と語り、育成者としての喜びと手応えを感じたようだ。

続いて登壇した越智氏は、2024年の初代日本代表で銅メダルを獲得。現在はシンガポールの南洋理工大学(NTU)に奨学生として在籍し、AI研究を続けている。「IOAIをきっかけに海外の大学に進学できた。AIを学ぶことが、自分の世界を広げてくれた」と語る越智氏の言葉は、後輩たちにとって未来の指針そのものといえる。IOAIを通じて世界とつながり、学び続ける若きAI人材の姿は、今後の日本のAI教育のモデルケースということができるだろう。

書き手:阿部欽一
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクション等を経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「ITソリューション」「セキュリティ」「マーケティング」などをテーマにした解説記事やインタビュー記事等の執筆のほか、動画やクイズ形式の学習コンテンツ、マンガやアニメーションを使ったプロモーションコンテンツなどを企画から制作までワンストップで多数プロデュースしている。
 

(TEXT:阿部欽一  編集:藤冨啓之・野島光太郎)

 

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