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横のつながりを深め信用金庫DXを共に加速する –日立システムズ×ウイングアーク1st「信金交流会」リポート

横のつながりを深め信用金庫DXを共に加速する –日立システムズ×ウイングアーク1st「信金交流会」リポート

地域金融機関のデジタル変革が急務となる中、具体的な一歩をどう踏み出すべきか。この問いに対する実践的な解を共有する場として、2025年年末に株式会社日立システムズとウイングアーク1st株式会社共催による「信金交流会」が開催された。イベントは、BIダッシュボード「MotionBoard」を軸に改革を進める信用金庫の「事例発表」と、信用金庫の担当者らが横のつながりを深める「情報交換会」の2部構成で行われた。

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「DX担当者のリアルな悩み」を共有する場の価値

多忙な時期に多数の信用金庫関係者が参加したこのイベントは、SIerやベンダー主導の一方的な情報提供の場とは異なる熱を帯びていた。日立システムズ金融営業統括本部地域ソリューション拡販部の小林圭也氏が冒頭で「システムの紹介はしません」と述べ、参加者同士のつながりを深めて生の声を交換し合う場であることを強調した。

株式会社日立システムズ 金融営業統括本部 地域ソリューション拡販部 小林圭也氏

ウイングアーク1st事業戦略本部金融DX企画部の堀口祐輔氏は開会に当たり次のように語った。「デジタル化の波は、地域金融機関にも大きな変革を迫っています。しかし『何から始めればよいのか』『他の信用金庫はどう取り組んでいるのか』といった悩みを抱えている担当者も多いでしょう。本交流会では、MotionBoard導入により業務改革を実現した信用金庫様や具体的に検討を進めている信用金庫様の生の声をお届けします」。

ウイングアーク1st株式会社 事業戦略本部 金融DX企画部 堀口祐輔氏

開会のあいさつの後は、旭川信用金庫、京都信用金庫が事例を発表した。

【事例1】旭川信用金庫――相続業務システムで得た費用削減と効率化の成功例

旭川信用金庫事務システム部の成瀬史哉氏は、MotionBoardを活用して構築した相続案件の管理システムについて経緯を語った。同金庫はDX推進を進める中で、既存BIツールのOS更改終了への対応、情報活用不足、報告業務の非効率性といった課題に直面していた。

旭川信用金庫 事務システム部 成瀬史哉氏

特に相続業務では膨大な情報を管理する必要があるため、営業店と本部間でタイムリーな情報共有が必須ながら難易度が高いという課題があった。「営業店が相続案件を登録し、本部の相続センターで確認・更新する流れを効率化する必要がありました」と語る成瀬氏は、MotionBoardを活用したシステム構築に着手した。

MotionBoardによる相続案件管理システムでは、営業店側の「案件登録ボード」と本部側の「案件管理ボード」で構成され、リアルタイムで進捗を共有できる仕組みとなっている。営業店では顧客情報を検索・登録し、本部では案件の確認・更新を行う。このプロセスにより、「これまで紙ベースで行っていた作業が大幅に効率化され、紛失リスクも軽減されました」と成瀬氏は語る。

旭川信用金庫の相続案件管理システムの構成イメージ

さらに、ステータスごとの件数を把握できる機能やPDF帳票の自動生成機能を搭載することで、業務の正確性とスピードが向上した。「例えば、管理職しか承認ボタンを押せないように権限を制御する仕組みを取り入れることで、不正やミスも防げるようになりました」と具体的な工夫を紹介した。

導入効果は、業務削減やコスト削減という形で顕著に表れた。「年間3000時間が削減され、専用の相続システムを導入する場合と比べて概算で3000万円の費用を削減できました」と成瀬氏は語る。こうした成果は、旭川信用金庫内でのDX推進への期待をさらに高める成功事例となった。

一方で、「データベースの命名規約を定めずに進めると後の管理が困難になる」「ルールを整備しないと、ボタンアクションの設定などが複雑化する」など、運用の中で生じた課題を共有し、「相続業務の効率化を通じて、金庫全体のさらなる業務改革が進むことを期待しています」と締めくくった。この事例は、専用システムを導入せずとも汎用ツールを活用して大きな成果を上げられることを示す好例となった。

【事例2】京都信用金庫――長期的な運用で磨かれた実践知

京都信用金庫システム部の藤井幸氏と岡崎智哉氏は、2020年からMotionBoardを導入し、5年間の運用を通じて得られた知見を共有した。長期的な取り組みの中で、同金庫は業務の効率化や情報管理の改善に加え、現場のニーズを拾い上げ、その声を反映する仕組みを構築してきた。特に、格付け作業の効率化や融資業務の一元化はDX推進において重要な課題であり、今回の事例発表の中でも大きなテーマとなった。

京都信用金庫では、営業店と本部が連携して行う格付け作業が課題となっていた。決算書を顧客から受け取り、営業店が本部に伝送し、本部が格付けを行うというプロセスの中で、進捗が分かりづらく、連携が滞ることがあった。これに対し、MotionBoardを活用して進捗をリアルタイムで把握できる格付け進捗管理ボードを導入した。

岡崎氏はその仕組みについて次のように語る。「営業店が顧客から決算書を受領して『伝送』ボタンを押すと、リアルタイムで本部に通知が行く仕組みになっています。本部は画面上で進捗状況を確認し、定量的な情報をもとに格付けの大枠を決定。定性的な情報については、連絡事項入力欄を通じて営業店に確認を求めます」。この仕組みにより、格付け作業のプロセスがスムーズになった。

京都信用金庫システム部 岡崎智哉氏

続けて藤井氏が説明したのは、融資期限管理の一元化である。「出社した営業店の事務チーフが、朝1つの画面を見るだけで1日分の仕事の準備が完了する状態を目指しました」と藤井氏は語る。実現に向けてMotionBoardのメニュー機能を活用し、10種類の画面を1つのメニューに集約。顧客情報の更新や融資期限管理など、重要な業務を1つの入口から確認できる仕組みを整えた。

京都信用金庫システム部 藤井幸氏

また、営業担当者のモチベーション向上を目的に、MotionBoardの機能を活用して「活動自己分析チャート」ボードを作成。このボードは、営業担当者が自身の実績を月次や半期ごとに可視化できる仕組みで、チャートやグラフを活用して成果を直感的に把握できるように設計されている。「自分の成績が見えることで、やる気が出るという声が多かったです」と岡崎氏は反応を明かした。

さらに、個人金融業務では保険や投信の満期管理表を活用し、営業店が直接情報を入力できる仕組みを整備。「これまでバラバラだった管理をMotionBoard上の1のボードで完結できるようにしました。営業店が入力した情報がリアルタイムで本部に共有されるので、大きく効率化が進みました」と藤井氏は述べた。

藤井氏が特に力を入れて紹介したのは「リクエストポスト」である。これは営業店から具体的なデータ要件のリクエストを受け付け、システム部がボードを作成して全店に展開する取り組みだ。「店舗ごとではなく、全体の効率化、営業活動の質向上につなげています」と藤井氏は語る。

自ら取り組んだ京都信用金庫のDXについて藤井氏は謙遜を口にしたが、現場のニーズを丁寧に拾い上げてシステム化し、金庫全体へと展開させた実践知の積み重ねであり、見習うべきDXの成功モデルといえる。

信用金庫業界のDX推進における課題と方向性

3つの事例発表に続き、日立システムズの小林氏が「DX推進とMotionBoard」をテーマにセッションを行った。その中で小林氏は、DX推進の本質に照らして信用金庫業界が抱える現状と課題を明らかにした。

冒頭、小林氏は「今、信用金庫の内部でどれだけのExcelの資料・帳票が動いているか把握されていますか。そして、そのExcelファイルは何世代目ですか」と投げかけ、属人化したデータ管理や非効率な業務プロセスが、DX推進の大きな障壁となっている現状を指摘した。その上で、効率化やデータ活用の視点からExcelの役割を再定義する必要性を訴えた。

これを皮切りに、業界全体が取り組むべき共通課題として以下を挙げた。

・紙・押印の廃止やデータ項目標準化の推進
・窓口業務の効率化と、相談・提案型活動へのシフト
・データ活用のKPI化と顧客ニーズの深掘り

その上で、小林氏は現場からの声を反映した課題発見の重要性を強調。「業務システムの制約やルールにとらわれず、日常業務の中で感じる『面倒くさい』『もっと楽にできないか』という声を拾い上げることがDX推進の第一歩です」と語り、現場での課題発見がシステム導入の成功を左右すると強調した。

現場の声から課題を発見し、DXを推進する

こうした姿勢でDXを加速させる視点として重要なのは「守りの投資」と「攻めの投資」の両立であり、柔軟な予算確保だとした。従来のシステム投資では、年度ごとに明確な目的を持って予算を確保するため、途中で変更することは難しい。しかし、技術革新のスピードに対応してDXを加速させるためには、柔軟性のある予算執行が欠かせないためだ。

「例えば、システム導入後に『もっとユーザーライセンスを増やしたい』『新しい機能を追加したい』と思ったときに、年度ごとの予算確保では対応が遅れることがあります。DX推進に関わる予算を大枠で確保し、その中で柔軟に対応できる仕組みが必要です」と小林氏は説明し、進化の速いテクノロジーに対応するための新しい投資の在り方を提案した。

さらに、IT投資の評価基準を従来のROI(投資対効果)からROX(体験価値)へと転換する重要性も指摘した。「職員が『使いやすい』『仕事が楽になった』と感じる体験価値を重視することが、システム導入の成功につながります」と述べ、現場の自走力を育む仕組みづくりの必要性を強調した。

DXを加速させるには、IT投資の重心を変える必要がある

日立システムズとウイングアーク1stの協働によって実現した今回の交流会は、同じ業界内で課題を共有し、共に解決策を模索する貴重な機会となった。信用金庫という同じフィールドで働く者同士が、業界特有の課題や担当者レベルの具体的な取り組みを共有し合うことで新たな気づきにつながり、次の一歩を踏み出すためのヒントと勇気が得られる。このような場をつくること自体が、DX推進の大きな原動力となる。

イベント会場の様子。多忙な時期にもかかわらず、多数の信用金庫関係者が参加。リラックスした雰囲気の中で活発な情報交換が行われた。

(取材・TEXT:JBPRESS+稲垣  PHOTO:野口岳彦 編集:野島光太郎)

 
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