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グローバルニッチトップ企業とは? どんな企業が選ばれ、5年後にはどう変化したのか

         

日本企業はイノベーションが起こせておらず、経済は衰退の一歩をたどっている。

こんな悲観的な言説を目にする機会が増えました。しかし、日本にも世界で競争力を獲得できている企業は、有名無名を問わず数多く存在します。例えばみなさんは今すぐ名前を挙げられる「グローバルニッチトップ企業」はありますか。

グローバルニッチトップ企業とは何か、どんな企業が存在するのか、日本の未来を切り開くヒントとして、これらの基礎知識を身につけていきましょう。

 

「グローバルニッチトップ企業」とは? どんな企業が当てはまる?

グローバルニッチトップ企業とは、ニッチ(規模が比較的小さい専門的市場)において、グローバルなサプライチェーン上で重要な役割を占めている企業を意味します。

経済産業省は2014年と2020年に「グローバルニッチトップ企業100選」を発表し、また2018年には2014年認定企業の「5年後の現状と課題」を調査レポートにて報告しています。

その2020年版におけるグローバルニッチトップ企業の選定基準は以下の通り。

大企業:特定の商品・サービスの世界市場の規模が100~1,000億円程度であって、過去3年以内において1年でも、概ね20%以上の世界シェアを確保したことがあるもの
中堅企業・中小企業:特定の商品・サービスについて、過去3年以内において1年でも、概ね10%以上の世界シェアを確保したことがあるもの

※引用元:2020年版グローバルニッチトップ企業100選┃経済産業省

「2020年版グローバルニッチトップ企業100選」の公表とともに公開されたメッセージ動画において梶山経済産業大臣はグローバルニッチトップ企業を「不確実な世界を生き抜こうとする、多くの企業にとって、灯台であり、羅針盤になるものです(※)」と表現しています。

VUCA時代の要因の一つであるグローバル化。インターネットを通じて世界中の企業が競合となったことを脅威ではなく機会とできるかに対するニーズの高まりが「グローバルニッチトップ企業」への注目増加を後押ししたのでしょう。

実際、同時期の2015年に経済産業省より発表された『通商白書2015』においても「10 年後にも競争力を持つために日本企業が取り組む必要がある課題」についての経済同友会のアンケートで「グローバル化への対応」が「34.0%(2008年度)→60.8%(2009年度)→68.9%(2012年度)」と年々高まっていることが指摘されています。

昨今はコロナ禍、ウクライナ危機など地政学的リスクの高まりを受け、国内回帰の動きも見られましたが、長期的目線でみれば日本国内の生産年齢人合現象が予測されるなかで、グローバルで競争力を発揮することが課題となってくるはず。

そのための灯台であり、羅針盤となるのが「グローバルトップニッチ企業」なのです。

※……「2020年版グローバルニッチトップ企業100選 大臣からのメッセージ┃metichannel」1:34~1:37より引用

グローバルニッチトップ企業の事例を見てみよう

なんとなく重要性は伝わったものの、グローバルトップニッチ企業のイメージがまだ具体的につかめない、という方は少なくないでしょう。そこで、2014年、2020年で連続受賞を果たしたグローバルニッチトップ企業を4社ご紹介いたします。

【1】NITTOKU株式会社(機械・加工部門)


埼玉県さいたま市にて、FA(ファクトリーオートメーション)ライン設備の開発、製造に取り組むNITTOKU株式会社。同社の強みは、モーター、コイルを生産する巻線機の開発、製造からラインビルド、制御まで一気通貫して提供することで他社にない立ち位置を確立したことにあるとのこと。結果として、同社の自動巻線機システム市場における売り上げは世界シェアNo.1(37%)に到達しています。

【2】株式会社イシダ(機械・加工部門)


京都府京都市の本社で、スーパーマーケットなどで活用される「自動包装値付機」の製造販売を行う株式会社イシダ。全世界にサプライチェーンを展開しており、自社・外部を問わないイノベーションの創出に注力。海外市場を見据え、メンテナンス体制の強化にも積極的に取り組んでいます。そのスーパーマーケット、食品業界における世界シェアは40%を超えているということです。

【3】株式会社フルヤ⾦属(素材・化学部門)


東京都豊島区に本社を構え、イリジウム化合物(有機 EL 燐光材一次材料)の製造販売に従事する、300人規模の株式会社フルヤ⾦属。スマートフォン製造の一時材料として利用されるイリジウムや、ハードディスクドライブの記録層などに用いられるルテニウムの高純度化技術とリサイクル技術において他社にない優位性を持ち、高純度イリジウム化合物の世界シェア9割を達成しているということです。

【4】オプテックス株式会社(電気・電子部門)


滋賀県大津市にて自動ドアセンサーやIoT機器などの製造販売に従事しているオプテックス株式会社。足踏式が主流だった自動ドア業界に遠赤外線を用いた自動ドアセンサーを初導入し、従業員291人と比較的小規模ながら世界シェア 30%を獲得しています。その海外売上高比率は約 7 割。2014年には「屋外向け侵入検知センサー」と、別事業にてグローバルニッチトップ企業に選定されていました。

グローバルニッチトップ企業は5年間でどう変化した?

2014年に選ばれた「グローバルニッチトップ企業」について、フォローアップ調査が行われたことについてはすでにご紹介しました。

『2018年度グローバルニッチトップ企業調査結果概要』によると、選定企業の売上高(平均値)は319億2,100万円→407億4,200万円に、営業利益率は11.0%→11.4%に、従業員数は1,015人→1,110人に増加しています。一人当たりの売上高も3,350万円→3,700万円にアップしました。

ただし、世界市場シェアは58.7 %→55.0 %に3.7ポイント低下したとのこと。その背景として、市場自体の成長により、競合が増加したことがあるのではないかと考察が行われています。

グローバルニッチトップ企業となるにあたって、そもそも競合の少ないブルーオーシャンを見つけることがいかに重要かがここから推察されますね。

ただし、各企業の「世界市場シェアに影響を与えた/与えている要因」として「製品・サービス自体の競争力が向上した」が1番目(59.7%)、「自社の営業活動が奏功し、海外販路が拡大した」が2番目(56.9%)、「取引先企業の製品・サービスの需要に連動して需要が増えた」が3番目(54.2%)のシェアを占めており、「競合他社の台頭・躍進があった」と回答したのはわずか23.6%。


引用元:グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題┃経済産業省製造産業局総務課

市場の成長は、競合の参入という脅威以上に自社の利益につながっている。こうした認識が、グローバルニッチトップ企業で支配的なことは間違いなさそうです。

グローバルニッチトップ企業はすなわち、ニッチ市場自体を育て活性化させることにおいてもトップの企業だと言い換えられるでしょう。そこでは、「そこに市場はあるか?」ではなく「自社が市場を生み出し牽引できるか?」という視点が必要になってくるはずです。

終わりに

『グローバルニッチトップ企業の5年後の現状と課題』では、グローバルニッチ企業の戦略の特徴として「コア技術の深化」「用途・顧客の拡大」の両面が意識されていることが指摘されています。

自社のコア技術、あるいはコアコンピタンスは何なのか、そして用途やマーケットに見逃している領域はないのか。ぜひその分析から、グローバルニッチトップ企業への道を目指していきましょう。

(宮田文机)

 

参照元

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