【独自検証】JR大阪駅(うめきたエリア)が開業! 関空アクセス特急「はるか」のコストパは上がるのか? | データで越境者に寄り添うメディア データのじかん
会員ページへmember

About us データのじかんとは?

【独自検証】JR大阪駅(うめきたエリア)が開業! 関空アクセス特急「はるか」のコストパは上がるのか?

         

2023年3月、現在の大阪駅の西北に大阪駅(うめきたエリア)が開業する。従来、関西空港アクセス特急「はるか」は大阪駅に停車しなかった。同駅の開業により、「はるか」も大阪駅に停車するようになる。

大阪駅停車により、「はるか」のコストパフォーマンスは上がるのだろうか。関西の欠点の一つである交通インフラの改善に大きく寄与するのだろうか。データを元に検証してみよう。

もう一つの「大阪駅」が誕生

「はるか」のコストパフォーマンスを語る前に大阪駅(うめきたエリア)の概要を確認しておきたい。大阪駅(うめきたエリア)は現在の大阪駅の北側を走る東海道支線(梅田貨物線)に新設される地下駅だ。

東海道支線(梅田貨物線)は吹田貨物ターミナル〜西九条間を結ぶが、一般向けの説明では「新大阪駅と大阪環状線西九条駅を結ぶ路線」と説明した方がわかりやすいだろう。同線には関西空港行き特急「はるか」や白浜・新宮行き特急「くろしお」などが走る。しかし路線の構造上、大阪駅には立ち寄らず、新大阪駅での乗降を余儀なくされていた。

大阪駅から関西空港駅へは大阪環状線ホームから出発する関空快速を利用するのが一般的だ。しかし、関空快速は快速列車なので、速達性や快適度では「はるか」よりも劣る。そのため、大阪駅から関西空港へのアクセスの改善は長年の課題であった。

そこで、東海道支線(梅田貨物線)の一部区間を移設・地下化した上で、大阪駅北側に大阪駅(うめきたエリア)が開業することになった。同駅はあくまでも大阪駅の一部ということになり、現在の大阪駅とは改札内連絡通路で結ばれる。関東で例えると「東京駅と東京駅京葉線ホームの関係」といったところだろうか。

大阪駅(うめきたエリア)は2面4線の構造となり、特急「はるか」「くろしお」が乗り入れる。またおおさか東線(新大阪~久宝寺)も乗り入れ、おおさか東線沿線から大阪駅へのアクセスが大きく改善される。

また2031年春に開業予定の「なにわ筋線」も同駅に乗り入れる予定だ。このように大阪駅(うめきたエリア)は単なる新駅ではなく、関西の鉄道地図を劇的に変える駅なのだ。

大阪駅~関西空港駅間の所要時間は短縮されるが…

「はるか」が大阪駅に乗り入れることになり、大阪~関西空港間の所要時間は大幅に短縮される。現在、大阪駅から関西空港駅まで関空快速を使うと67分を要する。駅開業後は「はるか」の利用により、20分短縮の47分になる。大阪駅(うめきたエリア)に停車する「はるか」の本数は1日上下各30本なので、基本的にどの時間帯であっても利用できる。なお「はるか」乗り入れ後も関空快速の運行は継続する。

「大阪駅から関西空港駅まで47分」という所要時間はいかほどのインパクトなのだろうか。リムジンバスだと新阪急ホテル(大阪駅前)から関西空港第1ターミナルまでの所要時間は50分だ。関西空港第1ターミナルの降車場所は国際線出発エリア4階に着くため利便性は高い。いずれにせよ、大阪駅~関西空港駅間の所要時間においては、ようやくJRがリムジンバスに追いついたといった感じだ。

一方、大阪環状線の大阪駅から新今宮駅で南海に乗り換えるコースだと60分強を要する。実は新今宮駅から関西空港駅へはJR・関空快速よりも南海・空港急行の方が速く、しかも安い。ただし乗換えを要する分、リムジンバスよりは遅い。

このように「はるか」の大阪駅乗り入れにより、所要時間では他の交通機関と肩を並べるレベルになったといえよう。

問題は運賃だ。現状、新大阪〜関西空港間の「はるか」普通車指定席(通常期)の運賃は2,910円だ。リムジンバス(大阪駅前〜関西空港)は1,600円なので、ずいぶんと差がある。また新大阪駅から大阪駅へ向かうと、計3,000円を超えてしまうのだ。

話はこれだけでは終わらない。JR西日本では4月1日から特急料金の見直しが行われる。この見直しにより、割安な特急料金制度であるB特急料金が廃止され、A特急料金に統一されるのだ。この改定により、大阪~関西空港間の運賃は計2,940円(予測)となり、コスト面では「はるか」は圧倒的不利になる。改定後の運賃を見ると、いくら所要時間が短縮されるとはいえ、「はるか」を利用する気にはならないだろう。

JR西日本が用意する秘策

さすがにJR西日本も手をこまねているわけではない。JR西日本は「J-WESTチケットレス」を販売している。これは一部特急列車の指定席券を割安で購入でき、しかもチケットレスなのだ。「J-WESTチケットレス」を利用すると「はるか」新大阪~関西空港間の特急券は550円となり、乗車券と合算すると計1,940円だ。

しかも3月中旬~4月28日までの期間限定ながら、「J-WESTチケット390」も販売する。これは普通車指定席券が一律390円となり、「はるか」にも適用される。「J-WESTチケットレス」を使うと大阪~関西空港間は計1,600円(予測)となり、リムジンバスと並ぶことになる。

ただし「J-WESTチケットレス」の場合、新大阪~関西空港間の特急券が550円となる時間帯は10時~16時台に新大阪駅を発着する列車に限られる。それ以外の時間帯は100円増しだ。「J-WESTチケット390」も平日のみの設定だ。ビジネスには使えるが、レジャーには適さないといった感じだ。

「成田エクスプレス」と比較して見えてくるもの

ここで少し視点を変えて、JR東日本が運行する成田空港へのアクセス特急「成田エクスプレス」と比較してみたい。

成田エクスプレスは成田空港と首都圏各地を結ぶが、ここでは東京駅~成田空港間を取り上げる。東京~成田空港間の営業キロは79.2キロとなり、所要時間は約1時間だ。普通車指定席(通常期)の正規運賃は3072円(IC利用)だが、「えきねっとチケットレスサービス」だと2872円になる。「えきねっとチケットレスサービス」に曜日の縛りはない。

一方、大阪~関西空港間の営業キロは56.7キロ、新大阪~関西空港間は60.8キロだ。実は新大阪~関西空港間の「はるか」正規運賃と「えきねっとチケットレスサービス」使用時の東京~成田空港の「成田エクスプレス」だと、「成田エクスプレス」の方が営業キロが長いにも関わらず、運賃は安いのだ。

また車両の質も異なる。成田エクスプレスは2009年登場のE259系を用いる。E259系は全席に大型テーブルとコンセントを備え、足元には高さ25センチの荷物スペースも設ける。

一方、「はるか」は271系と281系を用いる。2020年登場の271系は全席に大型テーブルやコンセントを設置しているが、一部にとどまる。大半は関西空港開港時にデビューした281系であり、グリーン車座席にもコンセントは設置されていない。

このように「成田エクスプレス」と比較すると「はるか」はパフォーマンスがよい列車とは言いづらいのが現状だ。

大阪~関西空港間の所要時間が短縮されるものの、「はるか」のコストパフォーマンスが劇的に上がったとは言い難いのが現状だ。しかし、2025年開催の大阪・関西万博に向け、何かしらの手は打ってくるだろう。改善の余地がある分、これからの「はるか」の姿に楽しみが持てるといえよう。


図版・著者:新田浩之(にったひろし)
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。


【参考資料】

「2023年3月18日にダイヤ改正を実施します」JR西日本 「『すわっていこかキャンペーン』を実施します!」JR西日本 「在来線特急料金の一部見直しについて」JR西日本 関西空港交通HP JR東日本HP 『JR特急列車年鑑2023』イカロス出版、2022年

(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)

 
データ活用 Data utilization テクノロジー technology 社会 society ビジネス business ライフ life 特集 Special feature

関連記事Related article

書評記事Book-review

データのじかん公式InstagramInstagram

データのじかん公式Instagram

30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!

おすすめ記事Recommended articles

データのじかん会員なら、
全てのコンテンツが
見放題・ダウンロードし放題
データのじかん会員でできること
  • 会員限定資料がすべてダウンロードできる
  • セミナー開催を優先告知
  • 厳選情報をメルマガで確認
会員登録する
データのじかん会員について詳しく知りたい方
close close