スナップショット(snapshot)という言葉は聞いたことあるけど、実際に意味や仕組みを知らない方も多いと思います。
スナップ写真とスナップショットを混同して覚えている方もいますが、IT分野では、スナップショットとは「切り取ったデータを保存する」技術のことを表します。また、スナップショットは、クラウドサービスや暗号資産など、様々なサービスで活用されている技術です。
本記事では、スナップショットについて仕組みやメリット・デメリットを紹介します。スナップショットを利用する前にスナップショットについて基本的な知識を身につけておきましょう。ぜひ最後までご覧ください。
スナップショットとは「瞬間を切り取ったもの」という意味です。
「瞬間を切り取ったもの=人物や風景をカメラで撮った写真」である場合には、スナップショットまたはスナップ写真と呼ばれています。また、IT分野でもスナップショットという言葉は使われており、データを切り取り保存する技術のことを表します。IT分野のスナップショットについては、次の見出しで詳しく見ていきましょう。
IT分野におけるスナップショット仕組みは、ストレージやサーバー内のデータを写真のように切り取り、切り取ったデータを一時的に保存するものです。
スナップショットでは、ストレージやサーバー内のデータのすべてを保存するわけではありません。あくまでも、データの特定の瞬間や一部を切り抜いて保存します。スナップショットを活用することで、データを削除してしまうトラブルがあったとしても、データを復元する際に役に立ちます。
スナップショットとバックアップには、以下の表のような違いがあります。
スナップショット | バックアップ | |
保存するデータ | 元データの特定の瞬間 | 元データの全部 |
データの保存場所 | 元データと同じストレージ | 外部ストレージやオンラインサーバーなど、元データとは異なる場所 |
データの取得時間 | 短い | 長い |
元データが消失した場合の復元できるかどうか | できない | できる |
上記の表のように、スナップショットはあくまでもデータの特定の瞬間や一部を一時的に保存するものであり、元データと同じストレージに保存されるものです。そのため、データを守る機能としては、バックアップの方が優れていると言えます。では、スナップショットはなぜ活用されているのでしょうか。それを知るために、次はスナップショットの3つのメリットについて解説します。
スナップショットには、以下の3つのようなメリットがあります。
上記から、短い時間かつデータ量が少ない状態で作成可能で、サーバーがウイルス感染した際の対処ができることが、スナップショットのメリットだと分かります。それでは、それぞれのメリットについて、もう少し深掘りして解説します。
スナップショットはバックアップと異なり、短い時間で作成可能です。バックアップはデータのすべてを保存するため、作成時間が長くなってしまいますが、スナップショットはデータの一部を保存するため、短い時間で作成できます。
さらに、データ量が多くなればなるほど、バックアップの作成には時間がかかってしまいます。だからこそ、短い時間で作成可能なことはスナップショットの大きなメリットだと言えるでしょう。
スナップショットを利用することで、サーバーがウイルス感染した際の対処ができます。
スナップショットで保存したデータを用いることで、誤ってデータを削除してしまった場合や破損してしまった場合のデータ復元を容易に行えます。そのため、サーバーがウイルス感染した際にも、ウイルスに感染する前の状態に復元することで対処ができる可能性が高いです。しかし、あくまでもスナップショットは、対処法の1つとして利用し、バックアップと併用した方が良いでしょう。
バックアップはデータ量が多いですが、スナップショットはデータ量が少ない状態で保存可能です。
スナップショットで保存するデータ量は、元データの10〜20%程度です。昨今では、サーバーに保存されるデータ量が多くなっている傾向にあります。そのため、データ量が少ない状態で保存できることは、大きなメリットと言えるでしょう。また、データ量を抑えることで、サーバーやストレージの負担を軽減することにも繋がります。
スナップショットにはメリットがある反面、デメリットも存在します。スナップショットのデメリットとしては、以下の4つのようなものが挙げられます。
スナップショットは、バックアップとは異なりデータのすべてを保存するものではないです。そのため、すべてのデータを復元できない可能性があることや、完全にデータの損失を防げるわけではないことなどのデメリットがあります。だからこそ、スナップショットとバックアップを併用して活用できると良いでしょう。
スナップショットのやり方は、サービスによって異なりますが、スナップショットを作成するボタンが設置されている場合には、そのボタンを押すことでスナップショットを作成できます。
保存したスナップショットをテンプレート化できる機能を利用できるサービスもあるため、自社でスナップショットになにを求めるのかを明確にできると良いでしょう。
スナップショットの活用例として、以下の5つを紹介します。
これらは、スナップショットの特徴を活かして利便性や精度を高めています。それぞれの事例がどのようにスナップショットが活用されているのかを把握し、スナップショットに対するイメージを広げてみてください。
データ分析でスナップショットは、特定の時点でのデータの状態を捉えられるため、時系列分析やバージョン管理、データの信頼性確保に役立ちます。これにより、変化やパターンを把握し、過去の状態と比較することが可能です。しかし、スナップショットには難しさも伴います。データストレージ容量の増加やパフォーマンスの低下、最適なスナップショットの選択、データ一貫性の確保が課題です。さらに、サーバー費用やデータトランザクションコストの増加も懸念されます。
そのため、DBやデータ分析するBIツールによっては、最新情報のデータを取りだし、レポート、ダッシュボードで表現することを得意としていますが、逆に最新のデータであるが故、1カ月前、1週間前のデータを比較するのがむずかしいケースがあります。例えば、Salesforceのケースでは、一部のオブジェクト(商談等)は履歴管理も標準でできるのですが、それだけでは足りないことが多いです。それらを補うために、スナップショットを取得し、別途データを履歴管理していくことが必要です。
つまり、最新データとスナップショットを合わせて活用すること、適切な管理方法を採用して、コストとパフォーマンスのバランスを見つけることが重要であり、これによりデータ分析の精度を向上させられます。
データ分析でスナップショットを取得することの重要性には、以下の3つがあります。
スナップショットを用いることで、異なる時点でのデータを比較できるため、時系列ごとの変化やパターンの分析が可能です。
また、スナップショットを用いて、データのバージョンを管理すると、過去の状態に戻せます。これは、データの整合性やエラーの修正に役立ちます。
スナップショットは、データの信頼性を維持し、不正確な情報の影響を最小限に抑えることも可能なため、データ分析においてスナップショットは重要だと言えるでしょう。
データ分析でスナップショットを取得するにあたって、以下の5つのような課題や難しさがあります。
上記は、データ分析でスナップショットを取得する場合には、無視できないものであるため、注意が必要です。以下では、それぞれの課題や難しさについて詳しく解説します。
スナップショットを定期的に取得することで、データストレージの容量が増加し、管理が難しくなります。
大量のスナップショットが存在すると、データ分析のパフォーマンスが低下することがあります。
どのスナップショットが最も適切であるかを判断することは、データ分析の過程で難しい課題となります。
スナップショット間でデータの一貫性を確保することは、データの品質を維持する上で重要ですが、これは容易ではありません。
スナップショットの増加は、サーバーの費用やデータのトランザクションによるコストを増加させる可能性があります。これは特に、大量のスナップショットを管理する必要がある場合や、クラウドベースのストレージやコンピューティングリソースを使用する場合に顕著です。
これらの難しさを克服するために、適切なスナップショット管理方法を採用し、データを活かせるサービスやソフトウェアを検討する際にも、コストとパフォーマンスのバランスを見つけることが重要です。これにより、データ分析の精度を向上させられます。
ソフトウェア開発やプログラミングの分野などでも、スナップショットは活用されています。
ソフトウェア開発の場合には、特定の時点における開発中のソフトウェアに関するプログラムのコードやデータなどのまとまりのことをスナップショットと呼びます。このスナップショットは、開発者が特定の時点における最新の状態を確認したり、他者に共有したりするために作成されることが多いです。
スナップ写真というものもありますが、スナップショットでは画像としてデータが保存されることもあります。パソコンやスマホなどの画面を画像データとして保存するスクリーンショットを利用したことがある方は多いと思いますが、このスクリーンショットをスナップショットと呼ぶことがあります。
例えば、PDFの一部をスクリーンショットすることで、「PDFファイルの一部を切り取って保存する=スナップショット」となるでしょう。このように、スナップショットでは、画像としてデータが保存される場合があります。
クラウドサービスでも、スナップショットが活用されています。
クラウドサーバーにバックアップを保存する場合、バックアップ処理中にファイルの更新やデータの書き換えが行われると、データの不整合が起こる可能性があります。しかし、スナップショットを活用して、特定の時点でのデータを保存しておくことで、スナップショットはバックアップ処理中の更新の影響を受けないため、データの不整合の対策になります。
仮想通貨やNFTとしても知られる暗号資産もスナップショットが活用されている事例の1つです。
暗号資産のスナップショットでは、アドレス・取引内容・手数料・残高などのブロックチェーン台帳のデータが保存されます。そして、スナップショットによって保存されたデータをもとに、特定の時点での暗号資産の保有者や保有量などを把握し、把握したデータは暗号資産の保有者に何かしらの権利を付与する場合に用います。
スナップショットが利用できるサービスとして、以下の6つを紹介します。
それぞれのサービスについて、詳しく解説しているので、スナップショットを利用する際の参考にしてみてください。
QNAPはハードディスクを製造している台湾のメーカーのことです。また、NASとはNetwork Attached Storageの略称で、インターネットに接続されている記憶装置のことを指します。QNAPのNASには、セキュリティ対策としてスナップショット機能が標準搭載されており、保存されているデータをウイルスから守ります。
Google Cloudにもスナップショット機能があります。Google Cloudとは、その名の通りGoogleが提供しているクラウドサービスのことで、Google Cloudのスナップショットでは、ディスクを指定してスナップショットを作成可能です。即時スナップショット機能で迅速に新しいディスクを作成できることが特徴です。
Linuxとは、OSの一種でオープンソースであるため、誰でも無料で使えます。Linuxはオープンソースであるため、スナップショットの取得・復元をするための方法やツールが多く存在しています。目的や環境によって使い分けると良いでしょう。
AWSとはAmazon Web Servicesの略で、インターネット通販で有名なAmazonが提供するクラウドサービスの総称です。Amazon RDSやAmazon EBSなどのクラウド―サービスがあり、スナップショットが利用できるものもあります。特に、 EBS スナップショットというサービスでは、1つ前のデータからの変更分を保存できます。
Oracleとは、データベース管理システムを提供している会社のことです。Oracleが提供しているサービスは複数ありますが、Oracle Adaptive Access Managerの機能であるUniversal Risk Snapshotでは、システムやイメージを格納しての管理が可能です。
MotionBoardとは、WingArc1st株式会社が提供する、データ活用に必要な機能を1つのプラットフォームで提供するBIツールです。MotionBoardでは、明細・集計結果・差分比較・レプリケーションの4つのスナップショットがあります。これによって、データソース・ボード等々を作成し、データをビジュアライズして表現ができる機能と、それらを保存しておくデータストレージが提供されます。
スナップショットとは瞬間を切り取ったものという意味であり、IT分野では「瞬間を切り取ったもの=写真のように切り取ったデータ」のことを表します。そして、スナップショットの仕組みは、切り取ったデータを一時的に保存するものです。
スナップショットのメリットとしては、短い時間かつデータ量が少ない状態で作成可能で、サーバーがウイルス感染した際の対処ができることが挙げられます。
また、デメリットはバックアップとは異なりデータのすべてを保存するものではないことから、データの復元やデータの損失を防ぐことが完全ではないことです。
スナップショットはバックアップと併用することで、よりセキュリティ対策として有効になるため、活用してみてください。
メルマガ登録をしていただくと、記事やイベントなどの最新情報をお届けいたします。
30秒で理解!インフォグラフィックや動画で解説!フォローして『1日1記事』インプットしよう!