2023年8月23日に近畿地方に上陸して鉄道網に大きな混乱が生じた台風7号のように、近年、台風や大雨の影響により、東海道新幹線が計画運休、運転見合わせが相次いでいる。
東海道新幹線の代わりに中京・関西と関東を結ぶ代替ルートはあるのだろうか。2024年に敦賀延伸を果たす北陸新幹線も絡めて検証してきたい。
まずは名古屋から東京までの代替ルートを考えてみたい。最初に東海道の代替ルートとして中山道を思い浮かべるだろう。実際に中山道ルートには名古屋と新宿を結ぶ中央本線が存在する。
中央本線は塩尻駅を境に東はJR東日本、西はJR東海と別々に管理されていることもあり、名古屋と新宿を結ぶ定期直通列車は存在しない。そのため、塩尻駅での乗り換えが必須となる。
名古屋駅を朝8時に出発する特急「しなの5号」に乗ると、塩尻駅には9時54分に着く。塩尻駅では約20分の待ち合わせ。同駅で10時18分に発車する特急「あずさ18号」に乗ると、新宿駅には12時45分に到着する。所要時間は4時間45分、普通車指定席の料金は11880円(通常期)だ。なお「かがやき528号」が運行されない日は「はくたか562号」の利用で東京駅着は14時52分だ。
ただし、中央本線ルートでは特急「あずさ号」が原則として全車指定席であることに注意したい。ここで、わざわざ「原則」と書いたのは席を予約しなくても、席に着ける「座席未指定券」があるからだ。
「座席未指定券」を持っていると空席に着席でき、満席時でも販売される。もちろん、途中駅で着席している席を予約している人が乗り込んだら、席を譲らないといけない。他のJR各社には存在しないシステムだけに注意が必要だ。
もうひとつのルートが北陸経由だ。これは名古屋駅から特急「しらさぎ」に乗り金沢駅へ。金沢駅で北陸新幹線に乗り換え、東京駅を目指すルートだ。
名古屋駅で7時50分発の特急「しらさぎ1号」に乗ると、金沢駅着は10時48分。10分の接続で金沢駅10時58分発の北陸新幹線「はくたか560号」に乗車できる。東京駅着は13時52分だ。所要時間は6時間2分、普通車指定席の料金は18710円(通常期)となる。
大阪~名古屋間の代替ルートはずばり近鉄特急で決まりだ。実際に8月中旬の台風7号襲来では近鉄特急が大活躍した。
さて、大阪難波~近鉄名古屋間を結ぶ近鉄特急のフラッグシップといえば「ひのとり」だ。大阪難波駅を8時0分に出発する「ひのとり」8列車に乗ると近鉄名古屋駅には10時08分に着く。所要時間は2時間8分、料金は4990円(レギュラー車両)だ。
ただし、近鉄特急は全車座席指定のため、「ひのとり」が満席になることも考えられる。JRとは異なり、満席時は原則として乗車できない。
そこでおすすめしたいのが、大阪難波駅から伊勢・志摩方面の特急に乗り、伊勢中川駅で近鉄名古屋行きの特急に乗り換えるルートだ。「ひのとり」が満席の場合は伊勢中川駅経由を試してもらいたい。
大阪から東海道新幹線を使わずに東京へ向かうなら北陸経由になる。ルートとしては金沢駅まで特急「サンダーバード」に乗り、金沢駅で北陸新幹線に乗り換えるのが主となるだろう。
大阪駅8時10分発の特急「サンダーバード7号」に乗り、金沢駅着は11時02分。接続時間は40分以上あるので、同駅でひと息つける。金沢駅から北陸新幹線の速達タイプの「かがやき528号」に乗り、東京駅には14時20分に着く。所要時間は6時間10分、普通車指定席の料金は18710円(通常期)だ。
ただし、このプランは天候が悪い時に実現しない可能性が高いように予想する。なぜなら、湖西線(山科~近江塩津)は強風に弱いことで知られている。そのため、運転見合わせや遅延がよく発生する。
湖西線が使えない場合、特急「サンダーバード」は米原駅経由の東海道本線・北陸本線ルートになる。その際は通常ダイヤから30分前後、遅れる。
湖西線の影響により特急「サンダーバード」が運行中止になることを想定し、「サンダーバード」を使わない米原経由の特急「しらさぎ」を使ったルートも確認しておこう。
大阪駅から米原駅まではおなじみの新快速を使う。平日ダイヤだと、大阪駅8時06分発の新快速に乗る。米原駅には9時36分に着く。新快速の本数自体はそこそこあるのだが、米原駅まで行く新快速は少ないので注意したい。
米原駅では9時56分発の特急「しらさぎ3号」に乗り、金沢駅着は10時48分。11分の接続で北陸新幹線「はくたか562号」に乗り換え、東京駅には14時52分に着く。所要時間は6時間46分、普通車指定席の料金は18600円(通常期)だ。
ところで、先月にJR西日本は北陸新幹線金沢~敦賀が2024年3月16日に開業することを発表した。正直なところ、首都圏や関西圏の住民にとっては縁遠い話に聞こえるかもしれないが、実はとっても重要な話題だ。
今まで解説したとおり、北陸新幹線は単に首都圏と北陸を結ぶだけでなく、東海道新幹線の代替として機能する路線でもある。事実、代替ルートとしての役割は北陸新幹線の建設時から期待されていた。
少し古いが、2011年に北陸経済連合会が示したデータによると、東京~名古屋間の幹線交通網が寸断した場合、鉄道による移動は1日あたり約20万人に支障を来し、経済損失額は1日あたり約50億円と試算した。
その上で北陸新幹線迂回ルート経由による東西間の人的流動の回復を試算。北陸新幹線が金沢駅までの場合は回復困難流動量の約25%が回復、敦賀駅までの場合は回復困難流動量の約33%が回復と試算された。
試算の是非は脇に置くとして、関西圏・中京圏~首都圏間の移動を頻繁に行う人は北陸新幹線の敦賀延伸を把握した方がよさそうだ。
敦賀延伸に伴い、最速達列車を使った場合の東京~敦賀間の所要時間は3時間8分となる。
東京~敦賀間直通列車のダイヤは速達タイプの「かがやき」は9往復、「はくたか」は5往復の計14往復となる。ようするに1時間に1本くらいが東京直通便となる。
一方、特急「サンダーバード」、特急「しらさぎ」はいずれも敦賀駅発着となる。特急「サンダーバード」は大阪~敦賀間を25往復、特急「しらさぎ」は名古屋~敦賀間は8往復、米原~敦賀間は7往復となる。両特急とも北陸新幹線の接続列車は北陸内を走る「つるぎ」に接続する。「つるぎ」は東京駅に直通しないので注意したい。
区間 | ルート | 所要時間 | 料金 |
名古屋→新宿 | 中央本線経由 | 4時間45分 |
11880円 |
名古屋→東京 | 北陸新幹線経由 | 6時間2分 | 18710円 |
大阪難波→名古屋 | 近鉄線経由 | 2時間8分 | 4990円 |
大阪→東京 | 湖西線・北陸新幹線経由 | 6時間10分 | 18710円 |
大阪→東京 | 東海道線・北陸新幹線経由 | 6時間46分 | 18600円 |
今まで代替ルートを紹介したが、「東海道新幹線が運転見合わせ」というニュースを見た瞬間に代替ルートに飛びつくのは考えものだ。なぜなら、代替ルートを利用している最中に東海道新幹線の運行が再開している可能性もあるからだ。
まだ、代替ルートが大混雑に陥っている場合もある。時間に余裕がある際は当地で宿泊する選択肢も有効だろう。いずれにせよ、いろいろな案を冷静に検討する姿勢が最も重要だといえる。
著者:新田浩之
2016年より個人事業主としてライター活動に従事。主に関西の鉄道、中東欧・ロシアについて執筆活動を行う。著書に『関西の私鉄格差』(河出書房新社)がある。
(TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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