新型コロナウイルス感染症による都市のロックダウンや、ロシアのウクライナ侵攻など、不安定な情勢の影響で物流の停滞やエネルギーの価格が上昇。さらに円安の影響もあり、食品や衣料品、エネルギー、半導体など、さまざまなモノの物価上昇傾向や不足が続く昨今。
経済が鈍化する一方で、首都圏近郊では、物件価格が上昇し、昨年から続くウッドショックの影響や半導体不足の影響で、住居の建築費は今後も増加していくことが予想されています。
衣食住と経済の先行きが不透明な中で、気になるのがお金の問題です。
そこで今回は日本の平均給与の推移から今後の未来を考えます。
今回は国税庁が公開している「民間給与実態統計調査結果」より、1949年以降の一年を通じて勤続した人の平均給与の推移を見ていきます。
1949年以降の推移をグラフ化したものが以下になります。
高度経済成長以後、1980年代にかけて上昇傾向が続いてきた平均給与ですが、1990年代以降は鈍化、特に2000年代には継続し、減少傾向が続いていました。
ここで1989年以後の推移を切り取って詳しく見てみましょう。
1990年代前半までは上昇傾向が見られますが、その後は鈍化、特に、2011年の大震災で平均給与が大きく下がっていることがわかります。その後、およそ10年をかけ、2010年の水準まで持ち直しましたが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより再び減少に転じています。
長年にわたる停滞の背景には、平均給与が増加から減少に転じたバブル崩壊以降の1990〜2000年代に新卒を迎えた氷河期世代の人々が社会的な支援がないまま、活躍の場を奪われ、その状況が改善されないまま時代が過ぎて行ったことがあります。その結果経済の成長は30年に渡り鈍化し、失われた30年と呼ばれています。
給与の増減を評価する上で重要な指標となるのが消費者物価指数です。
物価は、人々の所得が増加し、モノを買う人が増えれば上昇し、逆に所得が減少し、モノを買う人が少なくなると下降する傾向にあります。
そんな物価の動きを把握するための統計指標が消費者物価指数です。略称はCPI(Consumer Price Index)。消費者物価指数の変化を見ることで物価の変動を把握することができ、消費者物価指数は、国民の生活水準を示す指標のひとつになっています。消費者物価指数は「経済の体温計」とも呼ばれ、国家単位で経済政策を決める上で、非常に重要な指数として使われています。
消費者物価指数は総務省から毎月、発表されています。指数は、全国と東京都区部の2種類あります。東京都の23の特別区から構成される東京都区部の消費者物価指数は速報で集計され当月分が発表されます。全ての商品を総合した「総合指数」の他、価格変動の大きい生鮮食品を除いた500品目以上の値段を集計して算出されている「生鮮食品を除く総合指数」も発表されます。
1989年以降の消費者物価指数をグラフ化すると以下のようになります。なお2015年の消費者物価指数を100として評価しています
平均給与と同じく、1990年代後半から停滞している物価指数です。2000年代は減少傾向が続き、2010年以降は増加傾向に転じる傾向も平均給与の動きと合致しています。
平均給与は物価に対し相対的にどのくらい変化したのか、を見るために、平均給与を消費者物価指数で補正したものをグラフ化したものが以下になります(なお2015年の消費者物価指数を100として評価する)。
平均給与だけ見ると1990年代と同程度に見えていましたが、物価の上昇に対し、平均給与伸びは追いついていないため、現在の人々の平均給与は1990年代と比較すると大きく下回っていることがわかります。
国内だけ切り取って見れば変化がないため、貧しくなっている、とは感じにくいものです。一方で、日本が停滞している間にも世界経済は成長しています。このまま停滞が続けば、世界経済が成長するにつれ相対的に貧しくなっていくことは明らかです。
実質的な給与が上がらないのは、物価に対し給与の増加が追いついていないこと、また、活躍できる人材を社会がうまく支援できていないことが大きな要因です。
今後、ますますの物価上昇が懸念される今だからこそ、給与水準を上げ、相対的な所得の減少から脱するチャンスなのではないでしょうか?
【参考引用サイト】 ・民間給与実態統計調査結果|国税庁 ・図表1-8-2 平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者) ・物価|早わかり グラフでみる長期労働統計 ・消費者物価指数│初めてでもわかりやすい用語集│SMBC日興証券
(大藤ヨシヲ)
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