ベイ・シャトルの正式名称は「神戸-関空ベイ・シャトル」といい、神戸市が出資する第三セクターの株式会社こうべ未来都市機構が運営している。ただし、運航自体は加藤汽船に委託している。
神戸空港、関西空港共に桟橋から出港し、連絡バスが各ターミナルへの橋渡しとなる。2024年12月現在のダイヤは1日16往復となり、神戸空港発初発便は6時01分発、関西空港発終発便は23時50分である。このように早朝・深夜便が存在することもベイ・シャトルの特徴といえる。神戸空港桟橋~関西空港桟橋間の所要時間は約30分だ。
※筆者撮影
料金システムは少々複雑だ。片道運賃は大人1880円だが、往復割引だと3060円になる。また、日帰りの往復割引は普通の往復割引よりも550円安い2510円だ。三宮と神戸空港を結ぶ「ポートライナー」を利用するなら、「ポートライナーセット券」がお得だ。ポートライナーセット券は片道1880円だ。ちなみに、ポートライナー三宮~神戸空港間の運賃は340円となる。
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しかし、ベイ・シャトルの魅力は駐車場にある。ベイ・シャトルに乗船すると、神戸空港海上アクセスターミナル近くにあるベイ・シャトル専用駐車場を利用できる。ベイ・シャトルに乗船すると、乗船者割引として無料で利用できるのだ。
しかし、この無料サービスは残念ながら2025年2月28日まで。3月1日からは1日最大料金として7日目まで500円、8日目以降は1500円が徴収される。
無料駐車サービスの終了の理由に関して、こうべ未来都市機構は2点挙げている。一点目は乗船客がコロナ禍前まで回復していないことを挙げ、「競争性を保ちながら事業を安定的に継続するため」。二点目は「SDGs達成への貢献を踏まえ、車から公共交通機関への利用転換の促進を図るため」としている。
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筆者は12月の平日に「ポートライナーセット券」を使ってベイ・シャトルに乗船した。ポートライナーセット券はオンラインでの販売はなく、関西国際空港チケットカウンター、もしくはポートライナー三宮駅にあるインフォメーションで購入する。なお、三宮駅インフォメーションではクレジットカードは利用できず、現金対応のみだった。
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三宮駅から神戸空港駅までは18分だ。神戸空港駅は神戸空港ターミナルと直結している。ただし、ベイ・シャトルが出港する神戸空港海上アクセスターミナルは空港ターミナルから少し離れている。
出港に合わせて空港ターミナルと海上アクセスターミナルを結ぶバスはあるが、出港に合わせて運行されるため便数は少ない。仕方なく、筆者は歩いて海上アクセスターミナルへ行くことにした。たいたい歩いて10分ほどで海上アクセスターミナルに到着。カウンターで乗船する便の予約「時間指定」をする。ベイ・シャトルでは基本的に時間指定が必要だ。
15時30分の出港まで1時間あるとのことで、ホールで時間待ちをする。ホールは一般的な待合室とそれほど変わらず特別感はない。
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15時20分頃に案内放送が流れ、ベイ・シャトルに乗船する。乗船人数は20名ほど、2割くらいといった感じだ。ビジネスパーソンもいれば、子ども連れもあり、幅広い世代にわたって利用されている。また、外国人観光客の姿も見かけた。
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15時30分に神戸空港を後にする。神戸空港は内海にあるため、波は穏やかだ。船内はシートベルトの着用が義務付けられていることもあり、全員が着席している。一応、自動販売機とトイレはある。
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ダイヤ通り、16時01分に関西空港側の桟橋に到着。ここから、関西空港第一ターミナル・第二ターミナル行きのバスに乗る。なお、バスの料金は乗船券に含まれている。16時10分に関西空港第一ターミナルに到着。神戸空港海上アクセスターミナルから約40分といった感じだ。
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復路もベイ・シャトルを利用したが、筆者は時間指定を完璧に忘れていた。そのため、関西空港第1ターミナルからのバスに乗り込もうとすると、スタッフから呼び止められた。
実はこれにはカラクリがある。神戸空港側のベイ・シャトルのカウンターはベイ・シャトルが出航する神戸空港海上アクセスターミナルにある。そのため、カウンターに行きやすいのだ。一方、関西空港側のカウンターは第1ターミナル内にあるため、つい忘れてしまうというわけだ。
18時発神戸空港行きの便は波が荒れていたこともあり、到着が5分ほど遅れ、神戸空港海上アクセスターミナルに18時35分に着いた。なお、18時発の便は往路よりも乗船客は多く、8割ほど埋まった。神戸空港海上アクセスターミナルから神戸空港ターミナルへは基本的に公共交通機関の利用者が乗車することになる。バス利用者は少ないと思っていたが、立ち客が出るほどの乗車率だった。
2019年度から2023年度のベイ・シャトルの年間利用者数は以下の通りだ。
2018年度 | 381,696人 |
2019年度 | 368,337人 |
2020年度 | 27,612人 |
2021年度 | 37,691人 |
2022年度 | 103,613人 |
2023年度 | 269,197人 |
コロナ禍は脱したものの、2023年度と2019年度を比較すると、まだ7割ほどしか回復していない。2024年度年間利用者数の見込みは295,000人であり、まだコロナ禍前の2019年度にはほど遠い数字だ。
海上アクセス事業の2023年度の収支を見ると、3億9000万円以上の赤字を計上している。神戸市からの補助金約2700万円は焼け石に水という感じだ。累積赤字もかさんでいる。利用者数の見込みを見てもわかるとおり、これからも大幅な乗船客数増は考えられない。専用駐車場の駐車料金の徴収は仕方ない。
赤字の背景としては昨今の燃料高、そして円安による海外旅行者数の減少が挙げられる。一方、2022年度から2023年度への年間利用者数の増加はコロナ禍からの回復とインバウンド客の増加だ。事業報告書にも「インバウンド客を中心に乗船客数が増加した」と明記されている。
今後の方針として、「インバウンド向けのプロモーションも強化」し、「収支改善に向けた検討に着手する」としている。
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ところで、2025年春から神戸空港国際化が開始される。当然のことながら、インバウンド客も見込まれる。そのような中で神戸空港と関西空港の棲み分け議論が展開されているが、ベイ・シャトルはどのような立ち位置になるのだろうか。
また、公共交通機関(ポートライナー、バス)からの利用促進を狙っているが、乗船から見えてくる課題も多い。まずは「ポートライナーセット券」のオンライン化、クレジットカードでの購入化は必須だろう。理想をいえば、神戸空港駅から直結に近い形でベイ・シャトルに乗船できたらいい。それが無理だとしても、もう少しスムーズにバスに乗車できればと思う。実際、停留所で特大荷物をバスに持ち込む際に苦労する乗客を見かけた。
今後のベイ・シャトルを見守りたいと思う。
(取材・TEXT:新田浩之 編集:藤冨啓之)
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