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営業嫌いの社員を生む過去の営業から科学的な手法によるインサイドセールスへ

         

インサイドセールスを導入する企業が、わが国でも急増している。激しい競争や人手不足の中で、より効率的に営業活動を行う仕組みと、一方では顧客との密接なコンタクトや迅速な対応を要求される。この相反する課題の克服に、社内にいながら多くの顧客に対応できるメリットが注目されているのだ。だがインサイドセールスの本質は、単なる移動時間の節約などではない。これまで個人の「勘と根性」に頼ってきた営業という仕事に、最新のテクノロジーを活用して人と組織、そして「商い」のプロセスそのものにイノベーションをもたらすものだという。

営業嫌い社員を生むのは旧態依然の「営業」に問題がある

ベルフェイス株式会社インサイドセールス支援事業部ビジネスイネーブルメントチームマネージャー 清水貴裕氏

「5秒でつながるweb会議システム」をキャッチフレーズに、営業に特化したWeb会議システム「bellface」を提供しているベルフェイス株式会社。サービス提供開始からわずか3年半で、約1,000社以上の導入実績を誇り、この分野のサービスでは、国内の導入社数トップの地位を獲得している。

「当社のミッションは、『Technology for Sales(テクノロジー・フォー・セールス)』。すなわち、営業をどのようにテクノロジーで変革していくかが、最も重要な課題になっています。これは言い換えれば、『勘と根性の営業をどう変えていくのか』ということなのです」と清水氏は語る。

長らく営業というのは、個人の経験値や能力に依存するものと考えられてきた。このため社員や組織の間でノウハウを共有することは難しく、若手の育成にしても先輩から後輩への「一子相伝」や「あうんの呼吸」のような、「伝えようにも伝えられないもの」と誰もが思ってきたのだ。

だが、清水氏は、そうした旧来からの営業観は、業務プロセス上のさまざまな無駄を容認し、その上多くの「営業嫌い」な社員を生んでしまいかねない、そもそも世の中の仕事の半分はセールスと言われており、その本質は「誰かに何かを届ける」「その商品の価値を伝え、選んでもらう」というビジネスの基本中の基本だ。それを嫌いにさせてしまうのは、根本の考え方に問題があると清水氏は指摘する。

「セールスというのは、『人と人との商い』であり、その中に人間自身が成長する何かがあると私は考えています。単にモノを売るだけでなく、そのプロセスを通じて販売スキルはもちろん、さまざまな知識や考え方を糧とし成長することが、最終的にお客様の成功を支える。そんな素晴らしい仕事を嫌いになってしまうのは、営業の手法が昔から変わらないままだからです」

これをテクノロジーで最適化していくことが、各自手探りで進めるような従来の営業にイノベーションをもたらすというのだ。

客観的なデータから気付きを得る、そしてそれら気付きを基に顧客の実像をつかむ

では、そうしたイノベーションを実現する上で、営業担当者はどんなところから始めればよいのだろうか。最も大切なのは、「自分で気付けるかどうか」だと清水氏は示唆する。

「上司や先輩から教えられるのではなく、自ら課題に気付くこと。しかし激しい市場競争の中で、じっくり時間をかけている暇はありません。どれが一番の早道かを瞬時に見分けるには、勘と根性ではなく、客観的で具体的な数字やデータを基にした判断や推論が不可欠です」

そうした考えに基づき、ベルフェイス社の営業シーンでは、マーケティングオートメーションを使って新規見込み客をスコアリングし、優先度付けを行っている。

データを活用しているのは、営業担当者だけではない。既存顧客を担当するカスタマーサクセス(CS)部門では、「各ユーザーが1カ月間に何回サービスに接続しているか」「どんな機能を利用しているか」「サポート担当者とどれくらいミーティングを持っているか」などを指標化した「カスタマーヘルススコア」を作成している。CS担当者は、このスコアからユーザーの満足度や顧客自身気付いていない要望などを読み取り、必要であれば営業部門と連携を取りながら、潜在的ニーズの掘り起こしにもつなげているという。

このスコアの開発経緯を、野田氏は「CS担当者が自分のお客様の利用状況などを見たいと思っても、基幹システムの中にあるデータをすぐに見ることは困難です。そこで誰もが簡単にデータを得られるようにしようと、 BIダッシュボード『MotionBoard』を使って開発したのが、『カスタマーヘルススコア』です」と明かす。

これがもし、従来の「勘や感性評価」だけだったらどうだろうか。「今までクレームが来たことがない」と安心していたら、実はほとんど利用していないだけだったというオチでは笑えない。

「だからこそ、お客様が満足しているかではなく、実際のサービスへの接続回数が本当の判断指標になる。営業担当者の主観だけでなく、ファクトでしっかりと状況を把握することが必要なのです。それも特定の指標だけでなく、bellfaceとSFA(営業支援システム)など何種類ものデータを組み合わせ、その上で営業担当者の主観に基づく評価を加え、総合的に判断することで、より正確な評価が可能になります」(清水氏)

人の持つ「揺らぎ」までを包含してテクノロジー化することが成功の要

ベルフェイス株式会社インサイドセールス支援事業部ビジネスイネーブルメントチーム 野田千愛氏

ベルフェイス社では、「カスタマーヘルススコア」を基に、顧客だけでなく自社のインサイドセールス担当者の定量的なパフォーマンス評価の仕組みもすでに確立している。

「同社の営業担当者は入社1年くらいの若手が多く、スコアを当人たちのスキルアップに活用するのはもちろん、これから先どんどん蓄積して、将来的にはどれくらい有望なお客様を獲得できたかを分析できるような経営評価、営業評価の仕組みにまで育てていきたいと考えています」(野田氏)

清水氏は、こうした業績評価の仕組みでも、単純にデータだけを評価の指標とするのは正しくないと指摘する。営業活動をテクノロジー化するのは必要だが、一方でそこに収まりきらない、さまざまな「現場の揺らぎ」こそが大切だと考えているからだ。

ベルフェイスを導入する企業に送られるスターターキットには、インサイドセールス担当者が業務を進める上で役立つツールが同梱されている。写真は、インサイドセールス担当者がWeb会議中であることをわかりやすく同僚に表示する際に役立つためにつくられた「bellFaceしてます」のフラッグ。

 
 

 

「やはり人間ですから、数字だけでは割り切れない部分が沢山あります。だから営業活動の例えば8割くらいまでは誰でも使えるようにシステム化しておき、残りの2割の「揺らぎ」の部分は運用で賄う。例えば営業力とか、組織としてのチーム力ですね」(清水氏)

「勘と根性」時代の営業では、せっかく各人が熱意や意欲を抱いて取り組んでも、それを確実に成果に結び付けることは難しかった。割り切れない部分も包含した上でテクノロジー化することによって、人の頑張りを確実に結果としてアウトプットできるようになる。「だからこそ、経営と人とデータは三位一体で動かす必要があるのです」と清水氏は強調する。

ツールを導入するだけでなく活用ノウハウを持つパートナーを探せ

最後に、これからインサイドセールスに本格的に取り組んで行こうという企業のために、いくつか成功のためのヒントを伺ってみよう。清水氏は、あくまでインサイドセールスは営業活動のチャネルの選択肢の一つであり、それを効果的に活用できる仕組みをどうつくるかが重要なポイントだと語る。

「現在はインサイドセールスという言葉が1人歩きして、企業の側も身構えてしまっている印象です。しかし実際は、これまでのメールや電話、直接訪問といった方法に、もう一つ加わったに過ぎません。だから全てをインサイドセールスに変える必要はなく、自社に最適な組み合わせを選択する方が大切です」

Googleトレンドによるキーワード別の検索数の比較と推移

日本でもここ数年急激に注目が高まっており、海外では、営業職の50%はすでにインサイドセールスに移行していると言われる。このままいけば、世界的な規模で主流といえる存在になるのは間違いない。また日本は人口が減少し、市場が縮小している。今後、全国規模で営業を展開するには、インサイドセールスは必須の選択肢だ。

そうした中で「取り組みたいが、全く社内にノウハウがない」という企業も多いだろう。それだけに、インサイドセールスという“ツール”だけでなく、それを活用するノウハウや実績までを持つパートナーを探すことが第一歩だと清水氏はアドバイスする。

「次々に登場する新しいテクノロジーによって、イノベーションが急速に進んでいます。その中で営業だけが何一つ変わらないまま今日に至っている。それがいよいよ変わる時が来た、と私は考えています。営業というのは、誰かが何かをお客様に届けるプロセスの起点です。そこにテクノロジーが加わって変革が起きれば、あらゆる商品の届くプロセスそのものが変わってゆくでしょう」

すでにベルフェイス社には、膨大な量のインサイドセールスに関するデータが蓄積されている。そのデータとテクノロジーを基に、新たな科学的営業の知見を提供できる点で、ベルフェイス社は唯一無二の企業の自負があると胸を張る清水氏。これから先も次々に、セールスの世界にイノベーションをもたらしてくれるに違いない。

お話をお伺いしたDataLovers:清水 貴裕 さん(写真左)、野田 千愛 さん(写真右)

ベルフェイス株式会社インサイドセールス支援事業部
ビジネスイネーブルメントチームマネージャー 清水貴裕氏


北海道大学大学院を卒業後、新卒でベンチャーに入社し、2年目には新規事業の営業責任者に就任し、100社以上の営業設計や仕組み化支援に携わり、グループ会社化させる。その後東証一部上場グループのEC統括や新規事業責任者を経て、ベンチャー企業の取締役就任。3年で売上を5倍に成長させ、社員数を100名規模にまで育てた。上場企業を中心に、数十社の営業コンサルテイングを行い、2019年退職。現職に至る。

ベルフェイス株式会社インサイドセールス支援事業部
ビジネスイネーブルメントチーム 野田千愛氏


立教大学卒業後、2014年株式会社ソフトクリエイトへ新卒で入社。中小企業向けにマイクロソフト製品をはじめとしたクラウドソリューションの販売および導入支援に従事。その後、セールスフォース・ドットコムのSDRを経てベルフェイスへジョイン。入社して2年間は、サポートチームの立ち上げに関与し、現在はCRMやBIツールを中心とした業務オペレーションの企画に携わる。

 

(取材・TEXT:データのじかん編集部+JBPRESS+田口/工藤  PHOTO:Inoue Syuhei  企画・編集:野島光太郎)

 

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