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日本ではなかなか普及が進まない、とされるキャッシュレスですが、多くの人がクレジットカードはおろか銀行口座も持っていないといわれるケニアではキャッシュレスの普及具合はどうなのでしょうか?
カメラマンの桜木奈央子さんが、ケニアの友人を訪問する際に手土産のヤギをキャッシュレスで購入し、そのヤギをみんなでおいしく食べるところまでのお話を書いてくれましたのでそちらをご紹介します。
日本でキャッシュレスが普及していないのは、日本が便利すぎるから、なのかもしれません。
東アフリカの玄関口、ケニアのジョモ・ケニヤッタ空港からタウンに向かう車の中。
携帯電話でケニア人の友人に「今、空港に着いたよ」と連絡を入れると、「カリブ!(ようこそ!)」と、友人は電話口の向こうで嬉しそうにしてくれました。
友人の住む村までは、首都のナイロビから長距離バスに乗り、グレートリフトバレーの絶景やフラミンゴでピンクに染まる湖を通過し、さらに町でマタツ(乗合タクシー)をつかまえ、最後はボダボダ(バイクタクシー)ででこぼこ道を走るという、合計10時間ほどの長旅です。
村を訪問するときの私の定番の手土産は「ヤギ。」町のヤギ市場でおいしそうなヤギを物色し、運転手と私とヤギの3人乗り(?)のボダボダで村に行くと、友人たちがとても喜んでくれるのです。
「今日はニャマチョマ(ヤギのバーベキュー)だ!」
と、招待してない村人もやってきます。
「途中でヤギ市場に寄るから、着くのが明後日になるかも」
と伝えると、友達は
「時間がもったいないから、M-PESAでお金を送ってくれたらヤギを買っておくよ」とのこと。
「わたし、M-PESA使ってないんだよねー」と言うと、
「じゃあ、ドライバーに電話を代わって」と友人。
ドライバーに携帯電話を渡すと早口のスワヒリ語で話し、
「サワサワ!(OK!)」と、すぐに携帯電話は手元に戻ってきました。
電話口から友人に「ドライバーにM-PESAで送金してもらうことになったから、ヤギ代渡しといて」と言われ、私はドライバーにヤギ代約30ドル分のケニアシリングを渡しました。ドライバーは信号待ちのあいだに自分の携帯電話を操作し、あっというまに送金が完了。
このM-PESAという送金サービスは、ここ10年ほどで爆発的にケニアおよび東アフリカに普及しました。もともと多くの人が銀行口座を持っていなかったこと、出稼ぎ労働者など移動が多い生活様式、治安の面から現金を持ち運ぶリスクが高いことなどがそのおもな理由だと言われています。
送金だけでなく、給料の受け取り、学費や公共料金の支払いなどにもM-PESAが使われていて、ケニアの人たちにとってはなくてはならないサービスになっています。インターネットではなく携帯電話の電波を使っているので、スマホだけでなくガラケーでも送金できるのも、利用者のニーズに合っているのかもしれません。
さて、翌日。友人が住む村に着くと、ヤギを焼くいい匂いがしてきました。「ちょうど、焼き始めたところだ」と、うれしそうな友人とその家族。子どもたちは裸足でそこらを走りまわり、ふだんなかなか食べる機会のないごちそうに心踊らせています。
たしかに、送金システムは時間の短縮にもなるし、ヤギを背負って移動しなくていいので便利だと思う反面、少しさみしいような気もします。市場で「どれがおいしそうかな」「あの黒いやつはどうだ」「あのヤギ、肉づきがいいな」と食欲むき出しでヤギを物色したり、ボダボダの運転手と一緒に汗をかきながらバイクにヤギをくくりつけたり、嫌がるヤギをひっぱって村を歩いたことが懐かしくなりました。
ヤギを解体するのもちょっとしたイベントみたいで好きなんだけど、今回は逃しちゃったな。
そのうちヤギ肉が焼けて、アボカドの木の下に椅子を並べてみんなで食べました。塩だけのシンプルな味付けに、それぞれの好みでピリピリ(唐辛子)パウダーをかけたり、ライムを絞ったりします。しめたてのヤギはいい香りがして噛みごたえがあり、骨までしゃぶりたくなるおいしさでした。
(テキスト:桜木奈央子)
ヤギ市場、というのは想像するに上の動画のような感じなのだと思いますが、ヤギを手土産にする、というのは豪快ですね。ヤギ一頭30ドルが高いのか安いのか、ヤギ一頭で何人くらいの人がお腹を満たせるのか、などちょっと聞きたいことは山ほどありますが、、、それはさておき。
実際にM-Pesaが普通のインフラのように普及している様子を耳にすると、キャッシュレスが便利である、というよりも、場面によってはむしろキャッシュの方が不便である、というようにも思えます。日本でも近い将来キャッシュを使わないのが当たり前になるのでしょうか?
世界各国のキャッシュレス事情の1つのエピソードとしてケニアの様子をお届けしました。キャッシュレスについてもっと読みたい方はこちらからどうぞ!
(データのじかん編集部)
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