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氾濫するニュースに踊らされないために、今こそ気をつけたい「認知バイアス」とは?

         

SNSのおかげで世界中の誰もが情報発信者になれる世の中。さまざまなプラットフォームにあらゆる情報や意見が溢れています。情報の大海原を上手に航海するには、多角的な視点から信頼性の高い情報を探すのがベストですが、それを妨げるのが誰もが多少は持っている「認知バイアス」と呼ばれるものです。

ここでは、日常生活で陥りがちな認知バイアスを3つをご紹介します。

1. 信じたい情報を選んでしまう「確証バイアス」

人間はもともと持っている先入観の裏付けが欲しくてたまりません。常に自分の正しさを証明したいのです。そのため、無意識に先入観を裏付ける情報を探す傾向があります。この傾向を「確証バイアス」と言います。

例えば占い師に鑑定してもらったとします。占い師は、客の雰囲気を見てそれらしいことを言いながら、客から引き出す情報を頼りに憶測を重ねていきます。客観的に見て発言の当たり外れは半々です。

「当たると評判」という先入観と、「わざわざお店に出向いてお金を払っているから損をしたくない」という気持ちを持っている人なら、当たり発言のみにフォーカスして、「この占い師はすごい」と思い込みます。

逆に友達に連れられて嫌々来店する人は、「当たるわけがない」という先入観を証明するため、外れ発言のみにフォーカスして「やっぱり占いなんてインチキだ」と言うでしょう。

結果は正反対ですが、どちらの人も確証バイアスに基づいて行動しています。

もうひとつの例が、新大陸の発見者とされるクリストファー・コロンブス。キューバに流されながらもヨーロッパに帰還した船員と出会ったコロンブスは、この船員の体験談を聞いて「それはインド大陸に違いない」と思い込みます。このときコロンブスが根拠としたのは、大西洋からアジアまでの距離は既存の説よりもはるかに短いという地理学者の友人の提言でした。

完全に確証バイアスに呑まれたコロンブスは、インドとは逆方向の西廻り航路で航海に乗り出し、その結果インドではなくカリブ海諸島を発見します。しかし本人は死ぬまでアジアの島々を発見したのだと思い込んでいたそう。

こうした確証バイアスに囚われやすい人がパートナーや上司だとかなり苦労します。一度決めたらテコでも動かず、話し合いができないからです。あなたにも思い当たる人はいませんか?

2. 危険を直視させない「正常性バイアス」

非常事態が起きたとき、人間の脳はストレスから来る不快感を和らげるために危険性を否定する理由探しをします。これが「正常性バイアス」です。

非常に痛ましい事例が、東日本大震災の津波被害に遭い、全校生徒108人の7割が犠牲になった石巻・大川小学校です。校舎のすぐ裏手に小高い山があったにも関わらず、津波警報が出ても生徒は校庭で待機させられたままでした。その結果、大多数が校庭まで押し寄せてきた津波に流されて亡くなりました。地震があった直後に、心配で迎えに来た家族と下校した子供たちは助かったそうです。

このとき避難が遅れたのは、当時のハザードマップでは大川小学校が浸水予想地域に入っていなかったためと言われています。また、住民の間でも大川小学校は有事の避難場所として認識されていたことが挙げられています。

校舎の窓ガラスが粉々になるほどの大揺れを体験していながら、「でもハザードマップによれば津波は来ないし…」という正常性バイアスの囁きに負けたことで起こった悲劇でした。

3. 自分はいつでも少数派「敵対的メディア認知」

メディアは嘘つきだ、本当のことを言わない。メディアはいつも私とは違う立場に立った報道をしている。こう感じるようであれば、あなたの認知には「敵対的メディア認知」というバイアスがかかっているかもしれません。

敵対的メディア認知を扱った興味深い実験があります。この実験では、被験者を親イスラエルグループと親アラブグループに分け、1982年にイスラエル人団体によってパレスチナ難民が虐殺された事件のニュースを見せました。すると同一のニュースを見たにも関わらず、双方が「相手側にとって都合のいい内容だ」と主張したのです。

さらには、普段からニュースを頻繁にチェックし、事件の詳細を知っている人の方が、敵対的メディア認知のバイアスが強いことが分かりました。こういう人たちは「私は他の人が知らないことを知っている」と思いたがる傾向があるためでしょうか。

認知バイアスは当然そこにあるもの

とはいえ、認知バイアスを完全に消し去ることは不可能です。それは「個人の意見」と表裏一体なので、認知バイアスを恐れるあまりすべての意見に配慮していたらただの八方美人な人になってしまうからです。

ただし、「認知バイアスは誰にでもあるもの」と意識して、なるべく良質な一次情報を参照することで、ネガティブな影響を最小限に抑えることができるかもしれません。そういう意味でも自分がみている情報がデータに基づくものであるか否か、そのデータの収集方法、分析方法が妥当なものであるか、という部分にはぜひデータのじかんの読者の方々には冷静に見極めていただきたい、と願う今日この頃です。

以上を踏まえて、どうぞ快適なニュースサーフィンを!

参考リンク:
・ 自分が選んだものしか見えない!3つの認知バイアスの恐ろしさ大川小学校を襲った津波の悲劇・石巻 

佐藤ちひろ

 
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