Share!

今、Chief Digital Officer(CDO)に熱い注目が集まっている。

デジタルトランスフォーメーション(DX)が時代のキーワードとなっている中、「D=デジタル/データ」戦略を担う重要なポジションとして、欧米に続き日本でもCDOのポストを設ける企業が、大手を中心に続々と現れている。

だが、そもそも CDOとはどんな役職であり、その課題や人物像をどのようにとらえればよいのだろうか。日本のCDO育成・啓蒙の先駆者であり、CDO Club Japanの創立者でもある、同 代表理事&CEO の加茂 純氏に伺った。

お話をお伺いしたDataLover:
CDO CLUB JAPAN 代表理事&CEO  加茂 純 氏

CDO Club Japan代表理事&CEO東京大学理学部情報科学科卒。米イリノイ大学大学院アーバナ・シャンペーン校コンピュータサイエンス学科AI専攻修士。電通に入社。電通退社後はセコイアキャピタルで米Harmonic Communicationsを創業し、アジアパシフィック地域統括担当副社長、日本支社長に就任。CMOワールドワイドを設立し、代表取締役。2017年11月一般社団法人CDO Club Japan代表理事就任。
著書に『企業の遺伝子は進化する』『インドビジネスのルール』『P&G 伝説のGMOが教えてくれたマーケティングに大切なこと』『インテル中興の祖アンディ・グローブの世界』など多数。

DX実現の戦略リーダーとして急増中のCDOというポジション

CDOという名称が生まれたのは2011年、アメリカのCDO Clubが設立された時のことです。

ただ当時、CDOと名乗っているのは数名で、認知度も高くありませんでした。それが2014年、インダストリー4.0やディープラーニングが盛り上がり、人々が「企業にはデジタル化のキーパーソンが必要だと気付いたあたりから注目されるようになり、一気に数が増えました。

日本でも7%から9%と、増加したが、グローバル、アジア諸国と比較しても低い状況。
参照:PwC:The 2019 Chief Digital Officer Study Global Findings(2019年3月)

CDOとは、基本的にデジタル化によって企業変革(トランスフォーメーション)を戦略的に進めていく役割を担っています。

CIOが既存のデータ資産を活用するのに重点を置いているのに対し、CDOは新しい=未知のビジネス領域を切り開くのをミッションとしている点において、より攻めのポジションと言えます。実際の例としてもっとも有名なのが、米国スターバックスでCDO を務めるアダム・ブロットマン氏でしょう。彼はスターバックスが成長する過程で、デジタルだけでなくお客様への細かい対応や什器の設置といった部分にまで踏み込んで取り組み、現在の成功を支えてきました。そうした業績が評価され、アメリカではCDO のモデルとされている人物です。

日本でも2018年あたりから、CDOを任命する企業が急速に増えてきました。私が主宰するCDO Club Japan にも、大手企業を中心に続々と参加者が増えています。当クラブは、2017年春に米国CDO Clubの承認を受け、日本独自の組織として発足しました。こちらも最初は数名でしたが、2018年に一挙に100人くらい増え、今も多くの参加希望をいただいています。最近では希望者が増えすぎて、面談の順番待ちをお願いしているほどです。

これには、CDO Club Japanの創業期メンバーの尽力も大きいと思います。株式会社LDH JAPAN CDO 執行役員 デジタルマーケティング部 本部長の長瀬次英氏、株式会社三菱ケミカルホールディングス 執行役員CDO(最高デジタル責任者)の岩野和生氏、そしてSOMPOホールディングス株式会社 グループCDO 常務執行役員の楢﨑浩一氏。この3人がPRに啓蒙に奮闘されたおかげで、国内企業の経営層のCDOに対する認識も飛躍的に高まってきたと実感しています。

さらに2019年からは、NTTグループ5社がCDOを副社長クラスの人事で設置し、グループを代表して日本電信電話株式会社の方が参加される予定など、大きな潮流が生まれつつあると感じます。

失敗を恐れないチャレンジ精神と人情味を併せ持つ人が求められる

CDOの適性について、われわれは「チームつくりがうまい人」と位置付けています。CDO はCEO の経営ビジョンを理解し、それを全社に伝えてデジタル戦略の側面から組織を動かしていく存在です。そのためには、いろいろな部署をまたがってチームを組織できる人。そのチームを、経営のビジョンを実践するために的確に動かしていける人。そういう人物がCDO として成功しています。

もう一つ大切なのは「チャレンジ精神」です。特に日本企業の場合、一度きりの失敗でキャリアが台無しになるという恐怖から、往々にして「ことなかれ主義」に陥りがちですが、DXやイノベーションは、これまでに例がない新しいものをつくる、いわば試行錯誤の繰り返しです。失敗を恐れていては何も生まれません。CDO 自身が「1度や2度、失敗してもいい」「みんなで新しいゴールに向けて進もう」「イノベーションを目指してチームで頑張ろう」というメッセージを発信し、メンバー全員のモチベーションを上げていく、そんな人物が望ましいと思います。

別の言い方をすれば「人間味のある人」「人として魅力のある人」とも言えます。いろいろな人を束ねていくわけですから、コミュニケーション能力が高く、自分自身も失敗した経験がある「苦労人」で、他人の気持ちを思いやれる人です。実際、CDO Club Japan でラウンドテーブルを開催すると、そういう明るくて元気な人たちが勢ぞろいします。

“異能の人”の可能性の発掘とフラットな組織づくりがCEOの役目

とは言っても適材はなかなか見つかるものではありません。

外部から専門人材を招き入れて成功している例もありますが、多くの企業は社内から人材を抜擢して第一歩を踏み出そうと考えているはずです。そんな折の人選ポイントは「ヘンな人を探せ」だと伝えています。

「ヘンな人」と言っては失礼ですが、大きい企業だと必ずそういう人がいるはずです。いわゆる「異端児」です。非常に優秀ながら保守本流ではなく、あちこちを渡り歩いてなかなか出世コースに乗っていないというようなタイプです。今は、そういう人材を中核に呼び戻すケースも見受けるようになりました。そんな異才から、ポンと剛腕のCDOが出てくるんです。

上でもご紹介したSOMPOホールディングスの楢﨑浩一氏などは、まさにそうした異才の人です。もともと三菱商事から派遣されてシリコンバレーに駐在しているうちに、自分でもデジタルの仕事がしたくなって会社を立ち上げたものの、何度も失敗してどうしようかと考えていた。そこをSOMPOホールディングス CEOの櫻田謙悟氏が、その失敗経験を買ってスカウトしたのです。そして今、同社のCDO兼常務としての活躍で内外から注目されています。

もう一つ意識したいのは、せっかくそういう異才を社内外から連れてきても、既存の大企業のカルチャーが障壁になってしまうケースです。率直に言って、従来のヒエラルキーがそのまま残っている組織ではかなり難しいと思います。組織形態をできるだけフラットにする必要があります。今はコミュニケーションツールもいいものがありますが、それが生かせる風通しのよい組織がなければ使えません。それでは進化したツールがあっても変革のスピードを上げられません。

例えば、DXのための社内提案をするにも、「一度上に上げて」などのフローが挟まることで、1カ月くらいあっという間に過ぎてしまいます。一方で今関わりのあるイスラエルのスタートアップなどでは、何か問い掛けをしてもチャットなどのツールですぐに返信があり、時差すら感じさせません。そのスピード感には私も面食らいます。

そういうアジャイルに動ける組織づくりとともに必要なのは、社内外の境界線を緩やかにして、外部の人や情報と行き来できるカルチャーづくりです。就業形態も正社員にこだわらず、優秀な人なら都合のいい時間だけでいい、社外で仕事をしてもいいなどの柔軟さが必要です。それは報酬体系にも関わってきます。年功序列だけではなく、能力や役割に応じて評価するなど、複数の評価軸を持ったフレキシブルなものにしていかないと、今後日本人も外国人も優秀な人材が来てくれません。

企業改革を目指すということは、単にCDOを任命したら終わりではありません。CDO起用はスタートに過ぎません。DXを進めるということは、組織づくりや雇用形態、賃金体系に至るまで、あらゆる既存の考え方や仕組みを大きく変えるアクションです。経営者はこれらに取り組む覚悟が必要です。

CDO Club Japanは日本に“あるべきCDO像”を示す

われわれCDO Club Japanは、創立以来日本におけるCDOの認知度アップと地位向上に注力してきました。これからも人材の発掘と育成、そして啓蒙を第一のミッションと考えていく姿勢に変化はありません。DX やイノベーションへの取り組みは、CDOなしには実現し得ないからです。そのためには、私たちも組織の中で「異才」を放ち、誰にも思いつかないことを考える人材を発掘して手厚く育て、その能力を広く共有できる仕組みを提供し、できるだけ多くのCDOのロールモデルを提示できたらと思います。

最近ではベテランだけでなく、40代の若いCDO も登場しています。こうした新しいCDO人材の意識をより高め、活躍できる舞台を用意することも、われわれの重要な役割だと認識しています。

(取材・TEXT:データのじかん編集部+JBPRESS+田口/安田  PHOTO:Inoue Syuhei  企画・編集:野島光太郎)

この記事を読んだあなたにおすすめのタグ

この記事を読んだあなたにおすすめのタグ

「社会」ランキング

人気のカテゴリ