みなさんは、スウェーデン発の音楽ストリーミングサービス「Spotify」を利用したことはありますか?
今や音楽はサブスクで聴くのが当たり前の時代。2006年に設立されたスポティファイ・テクノロジーズ社は、音楽の聴き方に大きな変化を及ぼし、2015年から6年連続プラス成長を続ける音楽産業に大きく寄与しています。
ツボを押さえたレコメンドAIなどデータ活用企業としても知られる同社。本記事では「DIBB」「スクワッド」など同社の急成長を支える仕組み・考え方の一端をご紹介します!
DIBBとは、スポティファイ・テクノロジーズ社(以下、スポティファイ)内で使われている意思決定や議論のフレームワークのこと。
以下の4つのステップの頭文字を取って生み出された言葉です。
Data:施策の検討につながる「データ」を収集する
Insight:データから得た「インサイト(洞察)」をまとめる
Belief:インサイトをもとに「仮説」を立てる
Bet:具体的な目標に向けて「リソースを投入」する
例えばスポティファイではモバイル開発に踏み出すにあたって、以下のようにDIBBのステップを活用したといいます。
Data:デスクトップ・モバイルそれぞれの音楽リスナーの経年変化/社内のモバイル開発者数・デスクトップ開発者数
Insight:モバイルユーザーがデスクトップユーザーを凌駕しつつある/社内のモバイル開発者は少ない
Belief:長期的な生き残りのためには、モバイルファーストになることは不可欠だ
Bet:モバイル開発の採用・育成を強化する/モバイルアプリに開発インフラに投資する
DIBBで注目いただきたいのが、最後がBet(賭け)であるということです。つまり、これは絶対に成功すると決まったものではありません。あらかじめ定めたKPIのデータを収集し、再度インサイトを得て……とサイクルを回すことが前提となっています。
2014~2017年の拡大期にSpotifyに在籍していたJonathan Rasmusson氏は著書『ユニコーン企業のひみつ ―Spotifyで学んだソフトウェアづくりと働き方』(オライリージャパン、2021)中で従来の大企業とスタートアップやユニコーン企業(※)の違いに“未知と向き合うかどうか”を挙げています。
※…狭義には創業10年以内、評価額10億ドル以上、未上場のテクノロジー企業。Jonathan氏は『ユニコーン企業のひみつ』内で“評価額10億ドル以上でありながらスタートアップのように運営されている企業”とより広く定義している。
DIBBフレームワークは「カンパニーベット」と呼ばれるスポティファイの目標とその優先順位を決めるための仕組みの一環です。
カンパニーベットは四半期ごとに優先づけされ、2ページ程度の資料にまとめられます。その1ページに記述されるのがDIBB。もう1ページにはどの企業がスポンサーとなり、誰がロードマネージャーやステークホルダーになるのか、成功の指標は何かなどの詳細が記されます。
ロードマネージャーとはカンパニーベットをマネジメントする専任の役割です。
そもそもカンパニーベットはスクワッド、トライブ、チャプター、ギルドといったグループでまとめられるスポティファイ内のチームをまとめ、全社で取り組むべきミッションを提示するために策定されます。それぞれのグループの簡単な定義の違いは以下の通り。
スクワッド:プロダクトオーナー、デザイナー、データサイエンティストなどで構成されたプロダクト開発の最小単位
トライブ:いくつかの関連するスクワッドのまとまり
チャプター:同じ専門性を持つメンバーで構成されたトライブ内の横のまとまり
ギルド:トライブ・スクワッドを横断して構成される有志の集団
スポティファイの組織作りの基盤となるのがスクワッドです。あるプロダクトの開発から運用まで自律して責任を持ついわば“小さなベンチャー企業”を社内で駆動させることで、企業規模が拡大しても小回りの利くスタートアップの利点を維持できます。
しかし、スクワッド単位でできることには当然限界があります。そこで、トライブ、チャプター、カンパニーベットといった大きな枠組みや仕組みが機能することになるというわけです。
ギルドはゆるいつながりですが、それゆえに自由闊達な学びやコミュニケーションの機会が得られます。
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